妄言読書日記
ブログ版
※ネタバレしています
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2007年01月29日(月) |
『赤い羊は肉を喰う』(小) |
【五條瑛 幻冬舎】
確か『スリー・アゲーツ』で野口女史が言っていた、「内田の彼」こと内田偲くんが主人公。 偲のお勤め先は、リサーチ会社。 会社と言っても、社員三人。 舞台は下町・八丁堀と、五條にしてはちょっと意外な気もする場所です。
最近の五條の話しは、大衆心理操作が絡む話しが続いているような気がします。 『エデン』とか『瓦礫の矜持』とか。 あれ、瓦礫は違うかな。 まあとにかく、興味がそちらに向いているのかもしれません。
さて本書。 帯がまた仰々しくて、違うんじゃないかなぁと思いましたが面白かったです。 「人を思い通りに操ろうとする悪魔の企みが深く静かに街を侵蝕していく。異変に気づき立ち上がったのは金も力も組織力もないたった一人の若者だった・・・」 偲が、えらい正義の味方みたいになってて、読み終えた今となってはある意味笑える。
ちょっとネタバレになりますが・・・
立ち上がってはみたものの完敗、だったわけだし。 その辺が五條らしい幕切れ。 そういえば、割と悪の企みは成し遂げられちゃったりするよなぁ。五條小説。 ロメスの時は阻止してたけど、あれも最終的にどっちが悪だかという感じでしたし。 そういえば、今は亡きカリスマのためにという点は、ロメスと共通するかな。
社長がいまいち有能な部分を見せてくれなくて、いささか残念です。 五條の実は有能な駄目オヤジが結構好きなので〜。 偲を取り巻く八丁堀の人々が、みんないいひとで好きでした。 笙君可愛かったし、太郎とか高さんとか、姉さんとかとか。
あとは鉱物ファンには嬉しい、極東ジャーナル組もちょろっと登場。 特に、野口女史のクールさには参ります。素敵だ、野口さん! 葉山は相変わらずです。かわいいな。 ・・・あー鉱物シリーズはまだですか。つーかいつか読むことが出来ますか?
2007年01月27日(土) |
『皇国の守護者1 反逆の戦場』(小) |
【佐藤大輔 中央公論新社】
同名漫画の原作小説です。
設定が細かいので、小説で読んだら大変かなと思ったのですが、この手の小説においてはこれぐらいが標準かなぁというくらいの描写でさっくり読めました。 読む方もこれくらい細かく設定されていないと、安心できないですし。
思っていたよりも、簡潔な文章でした。 どうしても漫画と比較してしまうのではないかと思ったのですが、小説単独で楽しめたのが最も意外だったかもしれません。 端的に述べると好きな文章でした。
漫画と比べてみると、それぞれに小説の美点、漫画の美点がよく現れていて、本当に相性がよかったのだなぁと感心してしまいます。 ですのでどちらがより好きかは、本当に個人の好み次第。
私は、そうだなぁ。小説のほうが好きかもしれない。 多分これは皇国がどうのじゃなくって、最終的な好みの部分だろうと思う。
漫画と決定的に違う点としてよくあげられる、西田少尉の扱いですが、小説での扱い方もこれはこれで、新城さんの性格を現す一つの方法として非常に正しいと思うし、漫画はもちろんストーリーを盛り上げる方法として、やっぱり正しいと思う。
最近、小説を読むとどうにも技術的な面が気になってしまうのでこんな感想ですが、内容としては、漫画ではあまり書かれてなかった新城さんが拾われるシーンが詳しくて嬉しい。 あとはしみじみと、この人のネーミングセンスの素晴らしさに感動する。 龍が坂東なんてかっこよすぎる。 名前だけでこんなに感動したのは初めてです。
どういうわけか私は、新城さんの「嫌だ嫌だ。凄く嫌だ」が好きです。 あと漫画では描かれてないちょっとした点がよいなぁと。 大協約を子どもの頃に読み物として読みふけってた新城さんとかかわいいと思うんだなぁ。
2007年01月23日(火) |
『今日からマのつく自由業!』(小) |
【喬林知 角川ビーンズ文庫】
いまさら説明するまでもないような気がする、大人気シリーズです。 なんでNHK(アニメ放映のこと)なのか、NHKの採用基準がよくわかりません。
魔王は自由業なのかなぁと思いつつ、なんだかこういうノリがあまりに久しぶりすぎて、チューニングが半分くらいまで読まないと合いませんでした。 典型的な異世界に放り出されちゃったよファンタジーですが、唯一最大の相違は、勇者として呼ばれたのではなく、魔王だったのです、という点ですか。 その辺は作者があとがきで言っている通り。
全編ギャグテイストなので、なんだかついつい、陽子(十二国記)はあんなに苦労したのに・・・とか比べても仕方がないことを考えてしまいました。
ギャグで魔王なわりに、主人公の性格が真っ当なので、邪悪な心根を持つ私は少し物足りません。 周囲の人間(じゃないけど)もみんな真っ当なので、もっとはっちゃけてもいいんだけどなぁと思ったり。 まあ今後どうなるかはわかりませんが。
そうだなぁ、私があと10歳ほど若ければ楽しく読んだかもしれませんけれど、もういい歳なので15歳の主人公に共感も肩入れもできませんよ。 じゃあ微笑ましく見守ろうと言う気持ちになるかと言えば、これまた微妙。 多分、ユーリも20年くらい経ったら男前になるかもしれませんけれど〜。 嫌いなわけではないんだよ。
ちなみに横文字キャラ名は覚えられません。 シリーズも五冊くらい読まないと覚えられません。 ユーリとコンラッドしか結局区別が付かないまま読み終えました。 (この小説に限らず基本的になんでもそうなのですが)
2007年01月21日(日) |
『ウースター家の掟』『偶然の音楽』『百舌の叫ぶ夜』(小) |
【P・G・ウッドハウス 訳:藤森たまき 国書刊行会】
今回は長編。 服装ではなくて、世界一周クルージングに行きたいジーヴスと、行くのが面倒臭いご主人さまの確執で幕を開けます。 なんだか逆ではないのか?と思いつつ、相変わらずの二人です。
終盤のウシ型クリーマー及び、手帳、そしてヘルメットという小道具の錯綜具合がさすがです。 次から次へと降って沸いて来るトラブルに笑いを禁じえません。 さすがのジーヴスも、箪笥の上に上ったり、トランクを開けて呆然としてみたり、部屋の外で舌打ちしてみたりとなかなか見慣れないシーンが目白押し。
愛すべきダリアおばさんと、バーティーのやり取りにも心温まります。多分。 訳者あとがきにて、
(それゆけ〜について)途方に暮れるバーティーの許にジーヴスがいそいそと通って甲斐甲斐しく着るものを用意してくれたとき、我々は「ああ、ジーヴスはバーティーのことが本当に好きなんだ」と、涙が出るほど嬉しく思った。〜中略〜ダリア叔母さんへの思いが決して一方通行ではないことを知り、再び安堵し、じわじわと胸温まる思いにさせられるのである。〜中略〜「よかった!」と我々は感動する。バーティー・ウースターは愛されていたのだ、と。
と書いてあって、バーティーがいつもあまりに不当に扱われているような気がしていたのは何も、私だけじゃなかったんだとほっとしました。 本当に、全くその通り! 今回は珍しく、穏やかにバーティーにとって不当なことなく幕を閉じる珍しい話でした。
+++++++ 【ポール・オールスター 訳:柴田元幸 新潮文庫】
この本が読みたかったというよりは、柴田氏の訳が読みたくなったので読んでみました。 どこまで読んでも、物語の着地点が見えてこない、不思議な小説でしたが、さらりとした悲しみとか喪失感とか絶望が、全体に漂っていました。 曖昧ではないのだけれど、なんだか不確かな読み心地。
読み終わった後にちょっと孤独な気分になります。
+++++++ 【逢坂剛 集英社文庫】
読み始めたのがすでに半年近く前なので、後半になって、この小説のからくり自体が見えてきたときに、最初の方の伏線がいまいち思い出せないという、駄目読者ぶりで、申し訳ない気持ちです。 前半の、なんだかよくわからない錯綜は、こういうことなのかとわかってからはスムーズ、むしろ熱中して読んだのですが。
長く読まれる本にはさすがの風格があり、読み終わった後に、うーむとなります。 最後の、倉木、室井、若松の対峙シーンは、こんなに醜悪なシーンがあっただろうかと言うほどの、男達の身勝手な真相暴露シーンでした。 思わず感心してしまう。
ま、やっぱり女性の描写が微妙ですが。 百舌と倉木のやり取りはなかなか見所でした。
2007年01月18日(木) |
『敬愛なるベートーベン』(映) |
もう18日ですがあけましておめでとうございます。 今年もよろしくお願いします。 最近はあまり本を読めておりませんが、今年はなんとしても読書時間をひねり出していこうと思います。
【監督:アニエスカ・ホランド イギリス・ハンガリー】
映画中盤の第九演奏シーンが撮りたかっただけじゃないのか、という気合を感じましたが、その他のシーンがあまり印象的じゃなかったかもしれない。 この監督の映像があまり好きじゃないのかも。 『太陽と月に背いて』もほとんど記憶に残ってないしなー。
私はベートーベンに詳しくはないので、史実に比べてどうだとか、ベートーベンはもっとこうだといいとかは言えないのですが、わりと可愛いおっさんに仕上がっていたと思います。 アンナも可愛かったし。
でも何か物足りなかったのですよね。 ベートーベンがアンナを認めた後に、どうして身体を洗わせるシーンが必要だったのかという点が引っかかる。
ベートーベンの音楽に映像が負けてた気がしました。
2007年01月05日(金) |
『拝み屋横丁顛末記2〜3』『退魔針 紅虫魔殺行1』(漫) |
【宮本福助 一迅社】
どうして、2巻から感想を書いているのかと言うと、一巻が本屋になかったからです。 普通なら買わないのですが、どうしても買いたかったし、どうせ一話完結ものだろうからいいや、と思って2巻から。 あ、ちゃんと一巻も読みますよ。
やたらジジイ率の高い漫画だなぁというのが印象ですが、じいさんたちが元気で可愛いのでいいんではないでしょうか。 それはそれとして、正太郎くん可愛いですし。
+++++++ 【漫画:シン・ヨンカン 原作:菊地秀行 メディアファクトリー】
斉藤岬によって漫画化された『退魔針』シリーズの中の、藤原紅虫に焦点を当てた話し、のようです。 今回は韓国の漫画家さんが漫画化されてますが、斉藤岬が上手かった分、分が悪い感じ。 浅田寅ヲをもう少し下手にしたような絵柄。 今後の上達に期待していいものかどうか、という感じです。
しかし、菊地秀行みたいな、エロ要素満載な作家の作品、韓国で大丈夫なのか? 韓国で発売しているわけではないんだろうけれど・・・してないのかな?
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