妄言読書日記
ブログ版
※ネタバレしています
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2006年10月24日(火) |
『墓場鬼太郎1 貸本漫画復刻版』(漫) |
【水木しげる 角川文庫】
アニメの(カラーの時代ですよ!)鬼太郎大好きだった身としては、なかなかに強烈な墓場の鬼太郎。 絶対に人間の依頼なんて受けそうも無いよ!? かなりおどろおどろしいですしね。 何がどうなって今の鬼太郎があるのか。
幽霊の設定が面白かったです。 幽霊という種族なんです。
2006年10月23日(月) |
『死人機士団 上 魔界都市ブルース』(小) |
【菊地秀行 祥伝社文庫】
あーなんか久しぶりに菊地読むなぁ。 ラブ菊地な割には、あんまりマメに新刊チェックしたり、ノベルス買ったりはしないし、文庫になってもしばらく寝かせておくという、微妙な読者です。 でもラブです。
前にも書いたような気がしますが、菊地秀行の小説を読むと、あーやっぱり小説って素晴らしい!と思います。 せつらとかメフィストって小説じゃなきゃ不可能なキャラクターだと思う。 「風が賛歌を歌い上げそうな美貌」(メフィスト)とか、「月の精とも見まごう」(せつらとメフィスト)とか、まあ、そんな描写が隙あらばと出てくる出てくる。 うっとり、というか、想像力の限界に挑むかのごとき、言葉の奔流。
だからどんな美貌なんだよ!と、終いには頭を抱えます。
美貌描写に限らず、奇奇怪怪なとんでも現象やら、とんでも生物が出てきて、とんでもなく壮大なストーリーが展開するあたりも、とても大好き。 とんでもなく壮大って言ったって、世界が滅亡するとかそういうことじゃない。なんというか、もっと、悠久な(?)スケール。
今回、なんでか不死身になっちゃったせつらなのですが、元々不死身のようなもののような気がするんですけれど、なぜか、不死身になった方が弱体化しているような印象で不思議。
メフィストとせつらの変な噂も新宿を駆け巡っていて、大うけです。笑っちゃう。 否定する気なしのメフィストが。それでいいのか、ドクター!
あんまり内容と関係ないけど、菊地氏に『彼岸島』をノベライズしてもらったらいいんじゃないだろうか、とぼんやりと思ってみました。 「ええいままよ」とかいうセリフをナチュラルに書けるのは菊地氏しかいない。そして、私は菊地先生のセルフツッコミもけっこう好きです。 きっとツッコミ入りまくりだね。 その前にあの吸血鬼を吸血鬼フリークの菊地先生に読ませたら凄惨なことになったりするかもしれないけれど。
2006年10月08日(日) |
『それゆけ、ジーヴス』(小) |
【P・G・ウッドハウス 訳:森村たまき 国書刊行会】
ジーヴスシリーズ三冊目でございます。 当初、三冊で終了予定だったそうですが、公表につき引き続き刊行してくださるそうで(すでに5冊目まで出てるんですが)、つくづくと好きなものには投資せよと思います。 そりゃあ、私が一冊二冊買ったからって・・・と大抵の人は思うかもしれませんけれど、地道にみんなでがんばりましょうよ。 と誰にむけて言っているのかという感じになってきましたので、本編の感想へ。
一冊目と同じ短編集となっております。
「ジーヴス登場」 ジーヴスが初めてウースター家にやってきた模様が書かれております。 そして最初にしたことは、バーティ君の婚約を破棄させることだったと。 素敵なお話しですね。 バーティが原稿盗む羽目になってその後も、隠し場所についてあたふたする下りは相変わらず気の毒で可笑しい。
「コーキーの芸術家家業」 なかなかひねりのきいた話しでした。
「ジーヴスと招かれざる客」 ピンクのネクタイは可愛いと思うんだけれど。
「ジーヴスとケチンボ公爵」 今回は服装ではなくて、髭についてもめてました。 髭かー。顔がどんなのかわからないからなんともですが、バーティのキャラには確かに合わない。 それにしてもこの件に関して「執事ふぜいが僕の唇の上に請求権を行使しようというとき」云々で、別のことを思いましたが、いつものしょうもない妄想です。
「伯母さんとものぐさ詩人」 自分の家を追い出されちゃったバーティが、ホテルで一人―ジーヴスは置いてきたので― 「やっと生まれてはじめて僕は、世の中には面倒を見てくれる人物なしで何とかやっていかなければならない人たちが、ごまんといるにちがいないと気づいて茫然としたのだった。」 そう思うくだりがあるのですが、格差社会において中の下あたりに位置する私から見ると、このお坊ちゃんめ!と思わずにはいられません。 でもお坊ちゃんだからこそ憎めないのがバーティなんですけれど。
「旧友ビッフィーのおかしな事件」 珍しく、本当に珍しくバーティの服装についてもめていない二人。 毎回、バーティにもわけのわからぬままに事態が収束して、それを「一体どういうことなんだい?」とジーヴスに訊ねる、場面ががなんだか素直でかわいくて好きです。
「刑の代替はこれを認めない」 初っ端から被告人席なバーティ。 軽く裁判でちょっと変なところでときめきました。 バーティは猫とオノリア嬢的女性には無条件で愛されるらしいです。 やっぱり服装でもめていないレアな二人。
「フレディーの仲直り大作戦」 子どもは一切ダメなジーヴス。 でもなんやかやと解決するのですが。 それいしても、ウッドハウス氏が書くのは毎度毎度クソガキばかり。
「ビンゴ救援部隊」 比類なき〜以来のビンゴですが、やっぱり結婚しちゃったから大人しいです。 よしきた〜で中心となっていた、ダリア叔母さん一家も登場。 今までにないくらいに、儲けるジーヴスでした。 バーティも「大体どうして僕が君に金を渡すのか、僕にはわからないんだ」と言っているくらい。 本当に可愛いなぁ、バーティは!
「バーティ考えを改める」 非常に非常にレアな、ジーヴス視点の話でございます。 どれだけ若主人がこきおろされているかと冷や冷やしましたが、全くそんなことはなくて安心いたしました。 馬鹿にしてるんだと思ってたのですが、バーティの親戚やら友人一同にくらべればはるかに好意的です。 バーティが家庭を持ちたいな〜と思うのを、阻止する話なのですが、なんともこうやっていつも、立たなくていい窮地に立つ羽目になっているんだな、バーティというのがよくよくわかって愉快な一編。 ジーヴスが若主人に好意を持っていて本当によかった。これで心底馬鹿にされてたら可哀相過ぎる。
【監督:アレクサンドル・ソクーロフ ロシア・イタリア・フランス・スイス合作】
ロシア人監督による、人間・昭和天皇を題材にした映画でございます。 日本では公開不可能と言われていた・・・の? わからなくもないけれど、題材としての人間である昭和天皇であって、問題提起映画ではないので、これが上映できないなんてことになったら、それこそ問題、だと思うのですが。 まあ、こうして実際に上映しているのでこの国の良心もまだ捨てたもんでもないな、ということでしょうか。
この映画は極めて退屈だと思うので、観る場合はよくよく睡眠はとってから観たらよいかと思います。 実に単調。 セリフもほとんどありません。パンフレットに全シナリオが採録されてるくらいですから。 (こんなパンフ初めてだよ)
けれども非常に意味のある映画なのは確かです。 イッセー尾形を久しぶりに観たけれど、驚くべき俳優です。 どうしてイッセー尾形になったのかわかりませんが、この人以外にやれた人はいないんじゃないかと思うくらいです。
外国人監督だからできた映画なのだけれども、これを日本人がやれないことを歯がゆく思います。
色彩はほとんどないのですが、それがかえって美しく、人間でありながら人間ではない存在を、滑稽で哀しく表現していました。 パンフにちらりと触れらてたけれど、マッカーサーがやっぱ、マッカーサーに観えなかったな。 でも二回の会見のシーンは印象的です。
『エルミタージュ幻想』の監督なんですよね。 どうしてそう思ったのか忘れましたが、観たいなぁと思っていた映画だったので、こちらも機会があったら観てみようか。
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