妄言読書日記
ブログ版
※ネタバレしています
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2006年09月25日(月) |
『とりぱん 2』(漫) |
【とりのなん子 講談社モーニング】
なんだかやたら好きなので、珍しく漫画なのに二巻の感想も書く。 (最近は一巻と最終巻くらいしか書いてないから) 私は北海道在住だが、これを読んでいると、どうも、東北の方がよっぽど北海道よりも自然味あふれているような気がする。 それとも住んでいるところによりけりなのか。 まあ、うちもバードテーブル置いていた時はいろいろ来ていたけれども。
にしても、「シベリア大寒気団」のイメージ絵に笑うよりもまず、それだ!と納得してしまう悲しき北国人。 今年も大挙して押し寄せてくるんだろうか。
ああ、動物と戯れたいなぁ。
2006年09月24日(日) |
『黒の李氷・夜話 1〜3』(漫) |
【白井恵理子 集英社】
三国志4コマで有名な白井恵理子の、中国ファンタジー漫画・全3巻。 めでたく復刊、ということだそうで。 私は4コマ以外の白井恵理子を全く知らないので、最初本屋で見たとき、同一人物だと思わなかったくらいです。
読んでの感想は、これはまた凄いなぁと。 発想が。 そして、こういう大らかというか大雑把ともいえる時空の概念は中国ファンタジーならでは、という気がします。 だから中国史って魅力的、なのかも。
李氷が見かけによらず、ホント一途な奴です。 いやはや面白かったです。
2006年09月23日(土) |
『NO.6 5』(小) |
【あさのあつこ 講談社YA!ENTERTAINMENT】
待ってましたの五巻でございますが、読んでいる間は感じなかったのですけれど、読み終わってよくよく考え直してみると、あんまり話し進んでない…。 うーん。児童書だから文字数が少ないのか? そういうことか? 内容に密度が無い、とは思わなかったのですけれども。
相変わらず、あさのあつこの真っ直ぐに容赦ない言葉が好きだなぁと思います。 「言葉を免罪符にするな。尊べ」 とか。 言葉を尊べなんて、素敵過ぎる。 多分、実際に言われたらとても、胸キュンだと思う。 え、おかしい?ときめくところがおかしい?
男の死に関しての、紫苑とネズミの考えの違いには結論が出ないけれど、私はどちらの考え方もきっと正しいのだと思います。 本物の思いを奪ってはいけないと言うネズミも、安らかな最後を与えてもいいという紫苑も。 死に方に正しいも正しくないもない。 ただ二人ともそれぞれに考え結論を出したということが重要なのだろうと。
さて、次はいつになるのでしょうね。 あとがきがなくて少々寂しいことです。 紫苑は一体なんなんでしょうか。
2006年09月19日(火) |
『そして五人がいなくなる 夢水清志郎事件ノート』(小) |
【はやみねかおる 講談社文庫】
青い鳥文庫でのシリーズが講談社文庫化したもの。 いわゆるジュブナイルミステリというやつですね。 本格と謳っているけれど、大人の本格ミステリファンも納得、というほど本格でもないとは思いますが。 でも、子どもの頃に明智小五郎と怪人二十面相の知恵比べを楽しんだ大人は、なんだか懐かしい気持ちで読めることでしょう。 本作の名探偵・夢水さんも、なんだか懐かしい感じの名探偵です。 御手洗潔を思い出す。
私は名探偵と呼ばれる人々を愛してますが、それでもやっぱり、「あー一度こいつをぎゃふんと言わせてやりたい」という気持ちになんでかなります。 気分は二十面相君。 教授もまさにそんな気分にさせました。 嫌いじゃないけど、鼻持ちならない奴!です。 今後、少々痛い目に合うような展開が一度でいいからあったらよいと思うのですが。
以下少々ネタバレを含みます。
三つ子はすぐにわかったのですが、そこで油断してましたね。 二段構えでくるとは。 消失トリックそのものよりも、小村さんの正体が一番のメイントリックという気がします。
ところで今回の事件って、一体犯罪と言えるのだろうか。 細かいことですが子ども達はどこで小村さんと知り合ったんでしょうね? まあ、小説として目指すものはわかるので深くは追求しませんけれど。 「誰もが幸せになれる」解決というのが今後もテーマとして継続するとなると、大変だろうなぁと思います。
三つ子ちゃん達が可愛かったです。
2006年09月16日(土) |
『よしきた、ジーヴス』(小) |
【P・G・ウッドハウス 訳:森村たまき 国書刊行会】
シリーズ二冊目は長編です。 二組のカップルと叔母さん夫妻のお金問題、ついでにフランス人シェフの進退問題が同時進行。 読み終わってみれば最初にジーヴスが言ってた通りの方法で事は済むのですが、例によって例のごとくバーティのアレな服装センス―今回は白いメスジャケット―に関しての意見の相違によって仲違いする、執事と若主人。 バーティも意固地だけれど、ジーヴスも許してあげてよ!って気分になってきちゃいます。
“英文学史上もっとも滑稽な数十ページ”と呼ばれる、表彰式シーンですが、きっと英語で読んだらもっとリズムも良くて可笑しいんだろうなぁと思いました。 このシーンに限らず全編に渡ってそう思うのですが。 こういう時はほんと、英語がねぇ・・・と思います。
それにしても、バーティはもう少しみんなに大事にされてもいいような気がしてしまうのは私の贔屓目でしょうか。 今回のラストで、「鍵はジーヴスに渡しましたよ」というところで思わず笑いましたが、笑った後に可哀相!あんまりにも可哀相!って言わずにはおられません。 風呂でアヒルちゃんで遊ぶ姿(しかも10分も!)は可愛いと思うんですけどね〜。
すりむけた部分には後でジーヴスに薬でも塗ってもらったらいいよ。バーティ。
2006年09月13日(水) |
『ハチミツとクローバー10』(漫) |
【羽海野チカ 集英社クイーンズコミック】
さて、最終巻です。 良かったです良かったです。
全体を通して前半は森田さん一人勝ちのような超越したキャラでしたが、終盤ははぐちゃん一人勝ち。 はぐちゃんの強さは同時に儚さのようなものも感じて、とにかく切なくなります。 修ちゃんに関しては私もあゆと同じ心境。 でも、9巻あたりから、そういう選択肢もあるのかなぁという気はしていましたが。
きらきらしたものをありがとう、という気分。 羽海野先生お疲れ様でした。
2006年09月12日(火) |
『虚空の逆マトリクス』(小) |
【森博嗣 講談社文庫】
短編集です。 そういや、今回はタイトルが収録されている短編から取られてないんですね。 そうなると一体なんでこのタイトルなのかよくわからない…。 この手の森センスはよくわからない。
「トロイの木馬」 前に似たような短編書いてなかったっけ?
「赤いドレスのメアリィ」 こういうのも書くんだなぁという印象。
「不良探偵」 こういうのも(同文)
「話好きのタクシードライバー」 普通に普通の短編小説のオチで、森博嗣がそれをやるとなんか新鮮。
「ゲームの国(リリおばさんの事件簿1)」 ミステリとしてはうーん?な出来栄えですが、森博嗣的キャラですね。リリおばさん。 2とか3とか続くのかな。
「探偵の孤影」 この手のネタも使うのか、と。
「いつ入れ替わった?」 犀川先生と萌絵ちゃんは可愛いなぁと。 久しぶりに喜多先生も出てきましたし。 いややっぱり、犀川先生かわいいなー。 本当に地道に一歩ずつ前進してる二人が微笑ましい。
【監督:西川美和 日本】
『蛇イチゴ』は観ていないのですが、やっぱりオリジナル脚本の映画はいいよなぁと思いました。
粗筋からは兄弟の葛藤がどろどろと描かれるのかと思っていたのですが、非常に寡黙な映画でした。 まったくと言っていいほどモノローグはないし、セリフも最小限。 その分、観ている側は一つ一つのシーンや役者の表情から本当の所を探ろうと、食い入るように観てしまう。 役者がみんな上手いからこそ、成功できる映画という気がしました。
オダギリジョーはもちろん上手いのですけれども、香川照之がおそろしく上手い。 何だこの人、こんなに上手いのか!と。 今まであまり注目して観てみたことがなかったので(『嗤う伊衛門』の時くらいか)本当に驚くばかり。 特にやっぱりラストの笑顔ではないでしょうか。 あのシーンは、観ている人にいろんな解釈を残さないといけないわけですから、弟を許した、とも許していない、とも思わせてはいけない。 あとは、やっぱり洗濯物をたたんでいるシーンのやり取りは恐いですね。
法廷シーンが思いのほか長くて、面白かったです。 映画の『羅生門』みたい。 あと個人的には『逆転裁判3』の4話を思い出しましたが。
なかなか密度の高い映画でした。
2006年09月02日(土) |
『比類なきジーヴス』(小) |
【著:P・G・ウッドハウス 訳:藤村たまき 国書刊行会】
ダメっこ若旦那と、有能執事のラブコメディー。
あ、違った違った。 久しぶりに大文字にしたと思ったらこんな発言だものな。 気を取り直して、若旦那バーティと、それを取り巻くおかしな人々が巻き起こす騒動、そしてそれをまるく治める執事のジーヴス、という話しです。 こう書きますと、ジーヴスが忠義者のように思えますが、そこはそれ、イギリス小説ですので(まあ私のイメージですが)、事態を治めるのはご主人様のためでは全くなく、しっかりと自分の利益を確保する執事ジーヴス。 なにしろジーヴス、確実にご主人様ことバーティのことを、バカだと思ってる。 思ってるだろうけれど、直接的にはそういう態度は見せないのですが。 唯一、バーティが立ち聞きしてしまったシーンで、 「とにかくまったく知的ではない。精神的にはあの方は取るに足らない、まったく取るに足らないお方ですから」 と言っていたくらいのものです。
そうは言うのですが、バーティはそこまでおバカキャラではなく、まあ、少々ぐうたらではあるのですが、どうしようもない、とまでは行かない。 バーティの一人称で進む小説なわけですから、本当におバカだったら全く話しが進まないわけです。 どうしようもないのは、むしろ周りの人々であり、いつもおかしな騒動を持ち込んでくるのも周囲の人々。
ちょっぴりのび太とドラえもんっぽい、バーティとジーヴス。 なにしろ 「僕はジーヴスなしじゃ一日だってやっていけないよ」 とか言ってしまうのですから。
連作小説形式ですので、つながっていますが毎回毎回、ビンゴが誰かに恋をした、とか、伯母さんが乗り込んできた、とかいう話しなので、だいたい同じなのですがやっぱり可笑しい。 ジーヴスとバーティの趣味の悪い服に関してのやり取りも毎回可笑しい。 なぜ今まで翻訳されてなかったの?(全くされてなかったわけではないのですが)と思うくらい、親しみやすい本だと思います。
「大団円」のラスト、バーティが可哀相でもあるのですが、なんだか微笑ましかったです。 微笑ましかったと言うか、可愛いな。最後のやり取り。 やっぱり執事はよいですねぇ。しみじみ。
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