妄言読書日記
ブログ版
※ネタバレしています
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2006年06月28日(水) 『裏切りの日日』(小)

【逢坂剛 集英社文庫】

なーんか久しぶりに男くさーい本読んだなぁ。
骨太だけど作者は女性とか、ハードボイルドだけどわりとストイックとか、そいうのばかり読んでいたので、うわっという感じです。
女の身からすると、だからなんだよ、という気持ちも起こる、桂田さん。
浅見くんはね、青臭くていまいち役立たずでよいんじゃない?

ビル占拠事件で、警官が突入してみたら犯人は消えていた、という推理小説らしい趣向ですが、仕掛けはオーソドックスだなぁと。
まあ、80年の作品ですから、なんか古い・・・というのも仕方ないのでしょう。
京丸亜矢子とか、いったいどこのポルノ小説の女だという感じで苦笑する。

そうはいっても、百舌シリーズが読みたかったので、とりあえず『百舌の叫ぶ夜』は読みますよ。


2006年06月26日(月) 『どんどん変に・・・ エドワード・ゴーリーインタビュー集成』(他)

【編:カレン・ウィルキン 訳:小山太一・宮本朋子 河出書房新社】

最近、ゴーリー絵本が翻訳されなくなった気がするのですが、私が知らないだけでしょうか。
そうは言っても、既刊を全て読んでいるわけではないのですけれど。

色々な折りにされたインタビューが載っているので、全部通して読むとけっこう話しが重複してます。
その繰り返し具合も、まったり読むには丁度良いように思いますが。
まあ、ゴーリーが好きな人以外は読んでも退屈かもしれません。

インタビュー嫌いというわりに、親切丁寧に回答しているように思います。
何がどう面白かったといわれると困るのですが、全てにおいてあやふやな感じが好きでした。
インタビュアーの知識の問題だとは思うのですが、もうちっと日本文学とか文化についても聞いて欲しかったよ。
英米仏の文学は正直聞いてもふぅんくらいにしか思えない。知らないから。
ぼちぼちその辺も読んでいければいいですが。

面白い一冊でした。


2006年06月25日(日) 『雪が降る』(小)

【藤原伊織 講談社文庫】

この間の『ひまわりの祝祭』が面白かったので続いて短編集へ。
面白かったです。
これはなかなか拾いもんなのかしら。

「台風」

こういう冒頭でどうして、こんなセンチメンタルというのかロマンティックというか、夢見がちな過去話に流れていくのか。
うら寂れた商店街の古びたビリヤード屋にくる、青年と、店の少年と、店のバイトの女の子。
冒頭の陰鬱な予感をうまくかわして、切ないような甘いラスト。

「雪が降る」

サラリーマン好きにはたまらない感じの話しで。
ええ、別に私サラリーマン好きじゃないんですけども、好きになってもいいかもしれない。
いい年になったおっさんの、男の友情ってどうしてこうむずむずするんでしょうねぇ!
途中、私は山田ユギの漫画を読んでいるのかと思いましたよ。
ネクタイ借りたり、ネクタイ締めてあげたり。
高橋は北海道から戻ってきたら、志村と住んだらいいんじゃないですか。
浜野さんと結婚しなくていいから。

「銀の塩」

『テロリストのパラソル』の島村さん登場。
ちょっぴり五條瑛な印象がするのは、ショヘルの存在のせいでしょうか。
きらきら純粋な話しでした。

「トマト」

こういう不思議テイストな話しも書くのねぇ。
解説で黒川博行が言っていたように「あなたが一番むごたらしい顔をしてたからなの」というセリフが、イオリンだなぁと。
むごたらしい顔、なんてさらっと書いて悲惨な感じがしないのが凄い。

「紅の樹」

解散した組の組長の息子と、その組を預かることになった組の若頭のキャラ及び関係性に、にやにやが止まりません。
なぜ、こうなのか、藤原伊織のキャラは!

「ダリアの夏」

本当に藤原小説の子どもとおっさんの関係はかわいい。
それは、やっぱり、黒川氏が言っていたように子どもを書くのが上手だからなんでしょうか。

大変満足な一冊でございました。


2006年06月22日(木) 『DEATH NOTE 前編』(映)

【監督:金子修介 日本】

待ってましたよ、デスノート。
というわけで、見てきましたが、感想は

保留だ!

という気分。
なにしろ、前編ですから・・・・。後編まで見ないと、ねぇ。
やはり完結していない物語にあれこれ言うのは気が引けるというか、いいようがないと言うか。
エンドロール後に、後編は11月と出た所で、劇場のそこかしこから「長い・・・」というつぶやきが聞こえてきました。

でもこれだけの感想だとなんの参考にもなりませんから、もう少し詳しくあたりさわりない感じで書いておきます。

原作を読まずに観に行く人はあまりいないとは思うのですが、原作ファン以外が見ても全力で楽しむことは出来ないと思います。
また、かといって原作ファンだからといって、うむ完璧だ!とは思わないと思います。
なんともまあ、どっちつかずで、可もなく不可もないできばえ。
配役は、まあまあ、よろしいのではないでしょうか。
月にしろ、Lにしろ、原作の気持ち悪いキャラがよく出てたと。
特にLの松山ケンイチは、Lの仕種をいろいろ研究してきたのかなぁと思いましたし。指きれいですね。

ただし、藤原竜也にしろ松山ケンイチにしろ、キャラらしさはあるけど、それが演技としての自然さをそこなっている・・・という気はしましたが。
なんか、いかにも作り物なんですよねー。

で、いかにも作り物の見た目な、津川雅彦の警察庁長官に大うけしながらも、こちらは作り物っぽさはないんですよねぇ。貫禄。
でも、その白マフラー白手袋はいったいなんなの!おもしろすぎた。

そして、作り物と言えばリュークですが、いや、CGの技術ってすごいね・・・というより他ない。

オリジナルキャラの詩織はどうなるのかな、と思っていたけれど、ちゃんと映画のストーリーの中で機能していて上手かったですね。
南空ナオミさんが、強くてどうしようと思ったよ。

後編は楽しみというほど積極的な気持ちはないけど、お待ちしてます。
できれば、Lに勝って欲しいんですけどー・・・。


2006年06月13日(火) 『皇国の守護者 1〜3』(漫)

【漫画:伊藤悠 原作:佐藤大輔 集英社ウルトラジャンプ】

これまた凄い漫画だな〜(原作小説ですが)
もちろんいい意味で!

ジャンルで言えばファンタジーでしょうか。
ただ近代(第一次あたりかなあ)をモデルにしてるっぽいので、ファンタジーな雰囲気はほとんどないです。
というか、もう初っ端から戦争してるから。
最初からずっと、クライマックスか!というような展開が続いて、仰け反りつつ引き込まれますね。

サーベルタイガーや竜、道術師(超能力者のようなもん)なんてものがいながらも、あくまでも架空の戦争ではなく、リアルな人と人の、戦術戦略にのっとった戦いが続きます。

それにしても本当に、よくもまあ、最初からこんな情け容赦ない展開を惜しげもなく披露するものだ。
新城さんと千早には一日も長く生きていてもらいたいものです。
千早(サーベルタイガー)かわいいよ。


2006年06月12日(月) 『空を飛ぶ恋 ケータイがつなぐ28の物語』(小)

【新潮社編 新潮社文庫】

小道具としての携帯電話にあまり魅力を感じないし、こんなタイトルなので、高村薫が入っていなければ読むこともなかっただろうなぁと思う一冊。
28人の作家による、携帯電話を扱ったショートショート集。
アンソロジーは、未知の作家さんとの出会いがあるから好きです。

短編にも満たないショートショートなので、若干歯ごたえがない読後感。
字も大きく写真をふんだんに使っているので読みやすいですが、別に読みやすさは求めてないんだけどなー。

28人、28作品全て感想述べるのは面倒なので、しません。

高村薫がこんなライトな文章書けるのかとびっくりしました。失礼!
でもかわいかったです。
あとは重松清、町田康がおもしろかった。
次点、平野啓一郎。

力量も現れるけれど、それよりも作者の趣味センスが如実に出るような気がしますね。この長さは。
なかなか面白い試みでした。


2006年06月08日(木) 『山椒大夫・高瀬舟』(小)

【森鴎外 新潮文庫】

え、今更。そんな感じがなきにしもあらずの、森鴎外名作を本当に今更ながら初めて読みました。
高校生の時に『舞姫』を読んで以来です。
舞姫がねぇ、嫌いだったんですよね。私。
でも、あの話が好きだという女の人はあんまりいないんじゃないかなぁと言う気がするんですが、そう思っているのは私だけかもしれません。
解説で、「鴎外には一種の嫌味がある」と書いてあって、あぁ、私が無知ゆえになんか読んでてムカッと来るわけじゃなかったんだなぁと、とても得心いたしました。
なんだその上から言う感じは!と思うんですが、一冊読んでみると、それって鷗外の青い部分なのかもしれないと、以前ほどのムカッと感はなくなりましたね。

短編集なので一つ一つ。

「杯」
これこそなんだか青い話だなと思っちゃいます。
「わたくしはわたくしの杯で戴きます」
ってあまりに直截的に、鷗外の心境のように読めてしまう。

「普請中」
だからなんですか、と言いたい。

「カズイスチカ」
面白かったのですが何が面白かったのかは説明できない。

「妄想」
本当にとりとめなくて、一体どこに落ち着くのかなぁと分けもわからず読んでいたら最後に
「これはそんな時ふと書き棄てた反故である。」
と締められて、反故かよ!とついつっこんでしまった。

「百物語」
百物語してないじゃん!と思いつつ、
「傍観者というものは、やはり多少人を馬鹿にしているに極まっていはしないかと僕は思った。」
と締められて、なんだかなぁという気分です。

「興津弥右衛門の遺書」
申し訳ないんですが読めなかった。
いや最初から最後まで一応目は通したのですが、ほとんど読めてないです。
で、なんで結局切腹したのかいまいちよくわかりませんでしたし。
一文字目からいきなり漢字読めないよ!みたいな。
久しぶりに無力感を覚えちゃったよ。

「護持院原の敵討」

敵を討つ話しなんですが、本当にそれだけで、え・・・?と。
宇平は?みたいな。
解説には運命の甘受というよなことが書いてあったのですが、言われてみればなるほどという気持ちにはなる。

「山椒大夫」
安寿と厨子王の名前ばかりは有名ですが、いまいち話の筋は知らなかったので、あぁこういう話かぁとようやく腑に落ちるもろもろの事。
話としては運命受け入れすぎだろう、と思うのですが。

「二人の友」
これと高瀬舟は楽しく読みました。
え、なぜって・・・いや、まあ、わかりやすい話しですよね。うん。
(言葉を濁す)

「最後の一句」
運命の甘受という点から見れば、いちの最後の一句はあまりに鋭いようではっとする一編でした。

「高瀬舟」「高瀬舟縁起」
本当言うと、これが読みたいがために読んだ一冊でした。
久しぶりにストレートに感動した気がする。
多分、ずいぶんと素直な気持ちで書いてるからではないかと思うのですが。
安楽死問題の時に必ず出てくるこの話しですが、私はそれが罪かどうかということよりもただ、そこに行き着いてしまった兄弟が悲しい。

林太郎さんに怒られそうなことをいっぱい書いたけれど、許してもらいたいもんです。
またそのうち別の話しも読みますから。


2006年06月03日(土) 『弥勒の月』(小)

【あさのあつこ 光文社】

あさの先生、初の時代小説。
あさのあつこが、時代小説ってちょっとびっくりしましたが、読んでみたらあーという感じ。

そういえば、児童書以外を読むのも初めてでした。
けれども、書き方自体を変えているわけではなく、文体もそのままです。
キャラに妙に色気あるのも変わりません。

確かに『バッテリー』の巧なんて見てると、江戸時代の真剣での切り合いなんてものの、鋭さを彷彿とさせますので、この題材はぴたりとはまるものがあります。
が、それでも、巧と豪のやり取りの方に張り詰めた緊張感を覚えるように思います。
もちろん、遠野屋と信次郎にも緊張感はありますが、やはり『バッテリー』を読んだ身としては、あさのさん、まだ行けるんじゃない?と思ってしまう。
物足りないとは言わないけれど。

あさのあつこといえば、潔癖なまでに凛として色気のある少年少女(および青年も入るか)というイメージですが、伊佐治のような大人を書くのも上手いと思うんですよ。
まだ引き出し増えそうだなぁというのが、本作読んでの印象です。

それにしても、児童書だ一般書だ、現代だ時代物だという枠に囚われないあさのあつこは、まだまだ底力がありそうだなぁという気がいたします。


2006年06月01日(木) 『エマ 7』『リストランテ・パラディーゾ』(漫)

【森薫 エンターブレイン】

大増量の最終巻です。
エマの微笑が表紙で、本屋でなかなか見つけれらなかったです…。
見つけたときちょっとびっくりしましたが、緑がきれいな最終巻らしい表紙。
そして、最後の最後までメイド服のエマオンリーの表紙が、森先生らしく。

絶滅寸前の正統派メイドと、胸きゅんの恋愛模様、森先生の漫画は保護しなきゃいけないんじゃなかろうかと思ってしまう。
あとがきの、膝抱っこイラストでこんなにまできゅんとときめくことが、かつてあっただろうか!というくらいです。
普通なら別になんでもないのに、エマととウイリアムだというだけでこのときめきは何。

エレノアちゃんは最後まで可哀相だったけれど、この後立ち直ってくれることを願ってます。
番外編も楽しみにしてます。

森先生、パンダがだめなら、バクはどうなんだろう。

++++++++
【オノ・ナツメ 太田出版】

bassoさんだよね・・・?
PN使い分けてるんでしょうか。

高齢化社会に希望の一石を投じるかもしれない、紳士萌というジャンル。
帯も「老眼鏡紳士がおもてなし」ときてます。
ものすごいピンポイントなツボを押してくるな。
私も例に漏れず、ちょい悪よりは紳士が好き。断然好き。
でも、この漫画の紳士はイタリアが舞台だからこそ素敵なのかもしれない。
(でもちょい悪だってイタリアだ)

本作はBLじゃないので、女の子が主人公。
個人的に女の子の恋が描けるBL作家は、実力があるんだなと思う。

私もこのレストラン行きたいっす。
ソムリエのジジがかわいいです。



蒼子 |MAILHomePage

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