妄言読書日記
ブログ版
※ネタバレしています
目次|前のページ|次のページ
2005年02月26日(土) |
『悪徳警官はくたばらない』(小) |
【デイヴィッド・ローゼンフェルト 訳:白石朗 文春文庫】
『弁護士は奇策で勝負する』の二作目。 待ってました。 今回も、表紙のタラが可愛いです。 そして犬が一匹増えました。ウィーリーがそんなに犬好きだとは知りませんでした。
今回はローリーが犯人として捕まるという話。そうきたかーと。 ネタはなかなか面白いのですが、アンディがあまり動き回らないので、公判が始まるまではまったりです。 後半を少しすぎたくらいから、すらすらと読めます。 アンディのタラ溺愛ぶりが、更に書かれていて犬好きならば身に覚えのある感じがするかと。
最後は無罪を勝ち取るわけですが、やっぱり陪審員制度での判決ってしっくりこないです。 物語としては、ドラマチックですが、現実問題としてこういう弁護の仕方で無罪を勝ち取れるというのはちょっと怖いものがあります。 だって、具体的な証拠は何一つなかったですから。
作者と同じく、アンディとウィーリーは犬救済施設を作ることに。 どこまでも犬好きな作者です。
アンディがあまり奇策を使わなくて物足りない感じがします・・・。もっと法廷シーンが前半にあってもよかったのに。
2005年02月22日(火) |
『バカ日本地図 全国のバカが考えた脳内列島MAP』(他) |
【一刀 技術評論社】
久しぶりにバカ系の本を。 こういう系統の本で、面白い本というのは案外みつけるのが難しいものです。 ネタ本はたくさんありますが、やはり面白いのはやってる側がいかに真剣なのかという部分にかかっていると思います。 『この方法で生きのびろ』シリーズの秀逸さはそこにあるかと(あと緊張感のない挿絵。あれも天然の真剣さを感じる)
『ナンシー関の記憶スケッチアカデミー』(02.6.17参照)のようなものですが、違うとすれば、さまざまなうろ覚え、更に勝手なイメージをそのまま地図に反映させ地図を作り上げるという点。 消えていく県の多さに、ここの県民はなぜ黙っているのだろう、と不思議に思うこと多々ですが、ショックすぎて発言できなかったのかもしれないし、いまさら主張して傷口を広げることを避けたのかもしれません。 また、載っていたとしても最終的に、どうでもいいという理由で、消える鳥取・島根のことを思うと、最初から載らないほうがいいのかもしれません。
笑いながら読みつつ、地元の話題になると苦笑いしつつ、時々同様のことを思っている自分に冷や汗かきつつ・・・。 ためしに私も日本地図を書いてみたら、まんまと福岡の場所に福井と書きました。あれ、福井が二つある・・・とか思いました。 自分の住んでいるところから遠ざかるほどに、わからなくなりその地方の人に申し訳なくて仕方ありません。
この地図を見て思うのは、情報化社会なんて嘘だな、と。 みんな自分の住んでる所にしか結局のところ関心がないんです。 みんなが知っている東京だって、地方の人間の手にかかれば惨憺たる土地になります。表紙見返しにある、超東京地図なんて、私から見ると何が違うかわかりません。
この地図はこの地図である側面から見ると、非常に正しいような気がしてきます。 ただ、なんだか参加者に偏りがあるような気がしますけど。
ネタと思われるものを排除する姿勢が良いです。 意見の反映のさせかたにセンスを感じます。四国の印象が薄いからって、雲がかかったり、佐賀が海底都市になったり、軽井沢が浮いていたり。
合間の「バカ日本史外伝」は回を追うごとに遊びすぎている感じがします。 悪ノリ。
バカ日本地図を見たい人はここ→「借力」http://www.chakuriki.net/
サイトの書籍化にはどうも賛同しかねますが、今後も増えていくのなら、書籍化ならではの何かを追加するように考慮して欲しいもの。 本書は書籍ならではの編集で、地図の変遷が見易いのが良。
【村上たかし 集英社ヤングジャンプコミックス】
感動の最終巻。 涙、涙でしたよ。
ももちゃんとぱじ、そして町の人たちみんなが本当に好きでした。 ももちゃんの気持ちになってぱじを心配したり、ぱじの気持ちになってももちゃんを可愛く思ったり、二人のまわりの人のように二人を見守って助けてあげたくなったり。 いい漫画です。
お疲れさまでした。
2005年02月20日(日) |
『笑わない人魚』『エンジェル・ハート14』(漫) |
【今市子 あおば出版】
短編集です。 わりと新しめだと思います。 今市子らしいというか、らしすぎて面白みに欠ける部分のある短編集だったような・・・。 いや、市子さんらしいの好きですし、この本に収録されているものも好きですが、なんだろうね(聞くなよ)
「真夏の城」が好きでした。 『楽園まであともうちょっと』の二人だなーと思っていたら、こちらが先でしたか。 あともうちょっと、が長いような気がする二人です。 新刊はいつですか。 取ってつけたようですが、表題作も好きでしたよ。
+++++++++ 【北条司 新潮社】
衝撃のミキちゃんが登場して、まさかと思っていたらやっぱり海坊主と同居。 いいのか、海坊主。 いくらパラレルだといわれても、シティハンターを読んだ者にとっては、ショッキング過ぎる。
エンジェルハートは、シティハンターと違って、アクションよりも人情的なものが重視されているようですが、北条司も歳を取ったのかな・・・などと時折思っちゃったりして寂しい。 リョウちゃんも年取ったなーと。 まさか、ジョイさんとやらとこの先どうにかなるんですか。リョウちゃん。 うーん、それなら冴子とくっつく方が納得しやすいような。
2005年02月17日(木) |
『オーデュポンの祈り』(小) |
【伊坂幸太郎 新潮文庫】
伊坂幸太郎は初めて読みますが、かなりイイ。 この小説、非常に好きです。 Yoshiとか野ブタとか読んでないで、これを読めばよかった。 出版業界に失望しかけていたけれど、ちゃんとした作家がいるじゃないか。
久しぶりに読書を純粋に楽しめました。 この一冊で数日は前向きに生きられそうです。
裏のあらすじを読むと、なんだかよくわからないファンタジックな話、あるいは村上春樹みたいな小説なのかな、と思っていたのですが、そういうわけでもない。 全体的にとても優しい話だったという印象があります。易しいじゃないよ。 人が何人か死ぬけれど、それを大仰に扱うわけでもなく、当たり前の光景として書いているのに厳粛さを感じる。
以下、ネタバレを含みます。 どうせならこの小説は、裏のあらすじを読んで、一体どういう小説なのだろうと首をひねりつつ読み進めるのが一番楽しいと思いますよ。
主人公の伊藤と一緒に、島を回りながら島のちょっと変わった人々と出会っていくうちに、この島にとても愛着がわいてきます。 人が死ぬ、悪い人間もいる、ひどい犯罪も起こるけれど、大切なものが失われていないように感じます。
しゃべるカカシの優午は、伊藤と何度か話しただけで、殺されてしまいますが、随所で伊藤が優午の話した言葉を思い出すたびに、哀惜をおぼえます。 優午が作られたエピソードの挿入も絶妙のタイミングだと思います。
最後に伊藤は、優午が死んだのは未来を知っていることが重荷になったからだという結論にたどり着き、ちょっぴりそれが寂しい気持ちになったのですが、伊坂幸太郎はそれをも見越しているのか、最後に優午とお雅のやり取りで終わらせます。 その二人のやり取りが粋なんだなぁ。 とても優しいと思う。
この島に欠けているものが、わかる場面にはなるほど!と思うと同時に、思わず微笑むような感動がありました。
いい小説でした。
2005年02月15日(火) |
『夕凪の街桜の国』(漫)『退魔針 宝彩宮公式ファンブック』(他) |
【こうの史代 双葉社】
とやかく言わずにとりあえず読んでもらいたい本。
あとがきで原爆のことを「怖いという事だけ知っていればいい昔話で、何よりも踏み込んではいけない領域であるとずっと思ってきた」とありましたが、そういう気持ちは私にもある。 そう思っていた作者が、こうして漫画にできたことはとても凄いことだと思う。
+++++++++++ 【菊地秀行 斉藤岬 幻冬舎コミックス】
なんとなく目にとまったので。 中身はイラスト集と、お二人へのインタビュー。 書き下ろし漫画&小説でした。
このシリーズは、元々漫画化するために書かれた話だったというのを知って、得心。 一番うまくいっている、菊地作品の漫画化だと思う。そんなにいろいろ読んだわけではないけれど。
紅虫が人気キャラだと知って驚き。 いや、いいキャラだとは思いますが。 そんな紅虫が主人公の小説は、やっぱり大摩先生と戦って欲しいなぁ。 やられキャラポジションがいいのです。
このシリーズ、また機会があったら、再開しそうな雰囲気です。
【畠中恵 新潮社文庫】
これは何シリーズとかいう通称があるのでしょうか。 ほんのりと人気上昇中らしい、若旦那と妖怪たち第一作です。 『巷説百物語』(本当は妖怪でないけど)と『百鬼夜行抄』(ああ見えて思い切り舞台が現代だけど)の間、みたいな感じでしょうか。この二作より毒気も怖さもなく、江戸の町で殺人事件が続発してもどことなくのほほんとしておりますが。
表紙や挿絵の可愛らしくユーモラスな妖怪たちが象徴するように、廻船問屋の若旦那の周りにいる妖怪たちは可愛かったり抜けていたりです。 もう少し、妖らしい毒気が欲しい感じもいたします。
どうもこういう話だと、『百鬼夜行抄』が秀逸なだけに、比べたくなります。 あちらは漫画ですが。
読んで損はない面白さは保障しますが、もう一歩なにかが欲しいような。 妖怪ならではなエピソードが、出だしだけなのが残念なのです。 仁吉(白沢=中国の霊獣らしい)、佐助(犬神)は凄い妖怪なんだから、もう少し活躍して欲しかったなぁ。 最後とか・・・もうちょっとがんばれ、二人。
一太郎の兄とか、栄吉のお菓子作りの腕前とかが気になるので、続編が、早く文庫化してくれるのを待っています。 若旦那は、この先も体が丈夫になることはないのでしょうか。
2005年02月10日(木) |
『野ブタ。をプロデュース』(小) |
【白岩玄 河出書房新社】
借りなきゃ読むこともなかっただろうなぁという本。 なんでって、タイトルからして嫌いなんだもの。
そんなわけで、マイナスイメージからスタートしたわけですが、読み終わる頃にはプラスマイナスゼロくらいにはなりました。 Yoshiの後だとたいていの人には寛大になれるように思います。
主人公・桐谷くんは、上手にキャラをかぶってクラスの人気者を貫いているわけですが、まずこのキャラかぶりというのが、あまりに普通なんじゃないのかと。 こういう自分を完璧に演出して、クラスのみんなを欺いていますというネタはすでに、『彼氏彼女の事情』で強烈なのが出ているので、それくらいの猫かぶりはみんなしていることで、たいしたことじゃないと思ってしまいます。
この小説のなにがしっくりこないかといえば、文学を目指したのか娯楽を目指したのかよくわからないところです。 楽しませたいのか、訴えたいのかどっちなんだよ、白岩くん。 どっちつかずなんですねぇ。
まったく駄目な小説ではないですが、作者自身が桐谷くんなんです。 着ぐるみ着たまま小説書いてる感じ。 もっと、人の嫌なところまで掘り下げられるようになったらよいです。娯楽でも文学でも、どちらを目指すにしろそれは必要だと思うなぁ。 人物同士の対決を徹底的に避けている感じがして、物足りないです。 野ブタくん、マリ子、森川、と桐谷はもっとつっこんで書けばよかったのに。ラストの辺りは特に。 それをしないなら、桐谷をもっと開き直らせたらよいと思うし、そうじゃないと、ラストの再デビューというシーンがどうも受け入れがたい。 おいおい、結局転校したのかよ! 必ずしも桐谷を改心させる必要もないと思うけれど、あまりにもご都合主義な終わり方ではないですか。
で、選評に「野ブタ。」を読んで笑いなさい、ってあるんですけれど、これしきでは笑えない。 でも一箇所だけ噴出したところがあるから、そこは正直に言っておきます。
ええええ!?一回謝っただろおまえ!
素の方がおもしろいよ、桐谷くん。
にしても、会話文の中に(笑)が出てくるたびに、白岩くんの首を絞めたくなるので、それやめてくれませんか?
2005年02月09日(水) |
『薬指の標本』(小) |
【小川洋子 新潮文庫】
『博士の愛した数式』が有名な、小川洋子ですが、初読みです。 博士の〜から入らない辺りがへそ曲がり、と取られそうです。
「薬指の標本」 フランスで映画化決定と、帯に書いてあります。 確かにフランス映画っぽいかも。日本じゃ無理かな。 ただ、この危ういバランスの小説はうまくやらないと、意味のわからない映画になってしまいそう。 私は、この人の小説はやわらかくてあたたかい感じだというイメージを持っていたのですが、実際に読んだら全然逆でびっくり。 上品で残酷、冷たい話でした。 冷たいっていうのは、純粋に温度の話です。人間の性質の冷たいじゃなくて。 冷たいけど無機質な感じではないんですよね。冬の木の肌みたいな感じですか。 そういう抽象的なことを言ってもわかりにくいでしょうけれど。 「私」と弟子丸氏の恋のようなものは、フェティシズムに溢れ、小物使いがエロティックです。 ついでに、嗜虐被虐趣味も入っているかと。 弟子丸氏のような冷たいんだか優しいんだか、突き放されているのかかわいがられているのかわからないような人が好きな人には、たまらないものがあるのでしょうけれど、私には弟子丸氏が怖すぎます・・・。 だからといって「私」の気持ちがまったくわからない、というわけではないのですけれど。
「六角形の部屋」 薬指〜より印象が薄く、感想を述べにくいタイプの話。 最後に「私」がユズルさんとミドリさんのところで、眠りに落ちる場面が、不思議と一番あたたかい印象。 たとえ、この後この二人がいなくなるんだろうな、ということがわかっていても。
【ポー 訳:富士川義之 集英社文庫】
なんとなく急に読みたくなったんです。 有名どころ以外読んだことなかったですし。
「リジーア」 いまとなってはアイディアとしては目新しさのない話ばかりですが、そういう展開としての手法よりも、描き方が重要なのかな、と。 思いつつ、この饒舌さは読みにくいものがありました。 翻訳の問題もありそうですけど。
「アッシャー館の崩壊」 映像で見たら怖かろうな、と思う。 種村氏の鑑賞を読んで、ようやく館は元から崩壊していたということに気づく。 ああ、そういうことか。
「ウィリアム・ウィルソン」 これこそ、非常にありきたりな二重人格ものでして・・・ 恐怖感はあまり・・・
「群集の人」 面白かったですね。 まあ、どこがどうとは言いにくいけど。
「メエルシュトレエムの底へ」 大渦って見たことないなぁ。 鳴門のとはまた違うんでしょうけど。 (ってそれだけか!)
「赤死病の仮面」 確か「赤き死の仮面」という訳もあったような。そっちのほうがかっこいいなあ。 これと「黒猫」はいつ読んでも怖くていいですね。好きです。
「黒猫」 私の記憶では前半がすっぽり抜け落ちていました。 それか何か別のものと混同していたようで、妻の大事にしていた猫を一緒に壁に埋めちゃった、だと思ってました。
「盗まれた手紙」 オチを知っている身としては、ずっとデュパンの演説が続くのが長くてね・・・。 いいから早く言えよ!みたいな。 今でいうところの推理小説ですが、ポーは推理ものとして書いていたわけではないだろうから、その過程、デュパンの思想・叡智を読むべきなんでしょうけれど。 だけどこの人のせいで、最近まで探偵とはやたら演説するものだ、と固定されたのではないか、という気がしてしまいます。
これにモルグ街が入っていれば完璧なんだけどなぁと思いました。
2005年02月02日(水) |
『暗いところで待ち合わせ』(小) |
【乙一 幻冬舎】
とても久しぶりの乙一小説。 意外なことに、まだ二冊目です。 読者の中では一番と評判の本書ですが、こんな怖い表紙でなければもっと読まれるだろうに。どうしてこんなに、ホラーな表紙なのだろう。 この表紙と、あらすじが相俟って、非常に怖そうな本に見えてしまいます。
読んでみれば、盲目のミチルと、社会のどこにも見の置き場を見つけられないアキヒロの気持ち、徐々に歩み寄るさまが丹念に書かれています。 見た目の印象と違って、血なまぐさくも陰惨でもありません。 むしろ穏やかとすらいえる印象。
以下、ネタバレの話しになります。ご注意。
私は純粋に、殺人犯であるアキヒロとミチルの交流話なんだと思っていたから、実はアキヒロは殺していませんでしたということがわかって、なんだか肩透かしを食ったような気分です。 なぜかといえば、話の半ば辺りでアキヒロが
これから、生きかたを変えることはできるだろうか。他人と接することから逃げずに暮らす、そんな人間になれるだろうか。警察に追われてこの家の中に隠れ潜む自分に、もしもそれが可能なら、どんなにいいだろう。
と思う場面があります。 ミチルがアキヒロの存在に気がつき、彼の分まで食事を作るようになったころのことです。 ここで、アキヒロの取り返しのつかない罪の事を思って、せつなーくなったわけです。きっと、悲しいラストなんだーと。 そしたら、殺してないと。 肩透かしのような、ほっとしたような、なんとも微妙な気分になりました。 ハッピーエンドすきなので、まあ、これはこれでいいのですが。 実はハルミが犯人でした、というちょっとしたどんでん返しも必要だったのかどうか、少々疑問。
まだ二作品しか読んでいませんが、少数派の人に対して不思議な優しさを持った作家のように思います。 社会に溶け込めなくてもいいんだよ、ということを言うわけではなく、かといって積極的に変化を促すでもなく。 ひょっとしたら乙一自身がまだ模索中なのかも。 それがあの自虐系なあとがきやら雑文に現れているのでしょうか。
間違いなくよい作品でありました。 あとがきが相変わらずです。 ダイエットの秘訣は「死を恐れてはいけない」。わかりました!
2005年02月01日(火) |
『メキメキえんぴつ』(小) |
【大海赫 ブッキング】
やっと、やっと復刊ー!! ああ、懐かしい・・・ この本の何もかもが怖かった子ども時代を思い出します。 お化けが出てきてびっくり、とかそういう怖さ以外の怖さがあるんだと初めて知った本。 同じような本にせなけいこの絵本があります。おばけに連れて行かれちゃって帰ってこないの怖かったな。
「メキメキえんぴつ」 えんぴつが、夜中にじょりじょりと自分で芯をとがらせて待機しているのが怖い。 しかも何が怖いって、それまで知っていた児童書というのはほのぼのと終わるものばかりだったから、えんぴつに脅されたまま終わるなんて思ってもみなかった。 子ども心に、ものすごく不安になる終わり方をします。
「大きくなったら、なにになる?」 これが私の一番のトラウマ話。 これを読んだのが、おそらく小学校の3年生くらいだと思うのですが、以来むやみに草花をむしることをやめました。 いまでもやりません。 ものすごく美味しそうなチョコレートが出てくるのですが、私は決して人からもらったものは食べない、そう決心させる話でした。 とにかく絵が怖い。カンナさんが首を差し出す絵で、手がとまったような覚えがあります。 これもまた、終わり方が、普通反省したら子どもに戻してくれるところを、戻してくれません。 子どもに対して優しくない児童作家です。
「アップルパイのつくりかた」 これは別に怖くはないのですが、やっぱりなんでもない挿絵が怖い。 ゴリラがなんだか怖いし、コックのおじさんも妙に怖い。 子ども心に、耳たぶなんて誰のでもいいだろうに、と思った記憶があります。
「トーセンボー」 私は決して、約束を破らない、と決意させる話。 やはり、子どもにはあるていど怖い話が必要なのかも。 大人になってから読んでも、そう素直に思わないですし。 でもやっぱり怖いよ。これ。 コンクリートにされたまま、元に戻れないなんて。 大きな穴に落とされた人々も気になるし・・・。
「あなたのえらさはなんポッチ?」 なんポッチでもいいけど、とにかく絵が怖いんだってば! ニョキニョキと伸びる、ロクロッ首の絵が怖いし、動物たちもかわいくないし。
扉に「ぼくはこわーい本です。」書いてあるのはだてじゃありません。
|