妄言読書日記
ブログ版
※ネタバレしています
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2004年10月23日(土) |
『NO.6 3』(小) |
【あさのあつこ 講談社】
出ました出ました。 (バッテリーは来年発売らしいですね) 紫苑とネズミの話が少なかったような3巻。 それでもネズミはすっかり、紫苑にはまってしまっているようです。 んー・・・しかしこれ、児童書?
中身自体はそれほど進展は無く、次から動き出すという雰囲気。 まあ、紫苑がネズミにキスをしたというのも驚きますけど、この人たちなら(そして書いているのがあさのあつこなら)あるのかなぁという感じです。 仲が良くなればよくなるほど、死ぬんじゃないかという気がひしひしとするネズミ。 イヌカシとか、力河なんてのも死にそう・・・
由布がどうなってしまったのか、来年の桜の散るころまで待つことにします。
【横山秀夫 文春文庫】
次々映画化ドラマ化される、今をときめく作家です。 どれも見てないけど。「顔」は微妙に見た記憶が・・・
「動機」 刑事小説短編集だと思ったら、これしか刑事物がなかったという誤算。『陰の季節』を先に読めばよかったですね。 高村薫の『愁訴の花』を思い出す渋めの話。 警務課と刑事課の確執が面白い。 警察手帳と言うのは大事なのですねぇ。 非の打ち所のない、申し分無しの刑事物。さすが。
「逆転の夏」 ミステリーです。 依頼殺人と交換殺人のミックスネタでしょうか。 盛り上げ方が巧みです。 なるほど、というからくり。
「ネタ元」 女性記者の話。 “新聞拡張戦争”という話は面白い。そうやって、新聞社はしのぎを削っているんだなぁ。 基本的に女性を書くのはあまり上手くない感じがします。 渋い路線がいいなぁ。
「密室の人」 居眠りによって失脚する裁判官という話は面白かったのですが、ラストの方でありきたりな恋愛話になってくるのがつまらないです。 というか、あの嫁の人物造詣がたまらなく嫌いです。 清楚で粛々として、上品で若くて美しい女性。だけど胸のうちに熱いもの秘めてます、という。 夢、見るな! と。よくいるよね、官能系の小説に。 横山氏は、恋愛と女は書かないほうがいいんじゃないかと。 ネタは面白いのになー。
2004年10月17日(日) |
『ST 警視庁科学特捜班』(小) |
【今野敏 講談社文庫】
刑事物、ではない感じがしますが、たまに毛色の違うものを。 安積班を書いた今野氏の、全く視点の違う刑事小説です。
科学特捜班、というのは今野氏の創作したチーム。 それぞれの分野でのプロフェッショナルを集めたチームが、現場の捜査に携わるという話。 なんかありがちですけど。 ありがちついでに、キャラもそれぞれ個性的に仕上がっております。 私としては、全員綺麗どころなのが気に入りませんけど。 美形は一人でよいです。 第一作目だからなのか、キャラ紹介っぽい内容なのが残念。 事件も別に驚くようなこともないし、読者にはまるわかりな展開です。 まるわかりなだけに、非常にじれったく、STって優秀なの?という気持ちがついてまわりました。 内容はそれなりに凝っているのだから、もう少しネタの披露の仕方を工夫したら、青山くんのプロファイリングも冴えたことでしょう。
キャラ小説なのかなーという感じです。 私は板ばさみのキャップと、徐々に柔軟になっていく菊川刑事が好きでした。 菊川刑事は今後もSTと捜査してくれるんでしょうか。
どっちかと言うと、安積班の方が今のところ好きです。
2004年10月12日(火) |
『夢に囁く天使の声』(小) |
【たけうちりうと 小学館パレット文庫】
シリーズの最後の巻・・・なんでしょうか。 粗筋に「祁内の物語、感動の最終章」って書いてるんですが。 どうやら、この祁内という青年(見た目が。800年生きてるらしい)が、人生に悩める人の元に現れて、導いてくれるというシリーズなのかな、と思います。
今回の主人公は安積(あさか)刑事。はい、刑事です。 県警の所轄刑事。 冴えない32歳で、なんちゃって刑事とか呼ばれてる人です。 そこそこに無能、らしいですが、そこそこ有能よりは使えると思う。本当にそれは思う。 飄々としていて、最近読んだ刑事物の刑事の中では一番好きでした。
意外とちゃんと刑事物っぽい感じでありました。 祁内はキャリアの警部補として安積刑事の相棒になるのですが、非常に自然に手助けします。 不思議な力、というようなものは発揮しません。 せいぜい、ちょっと不思議くらいです。結局何者なのかは分かりませんが・・・。
パレット文庫なので、ボーイズラブなのかな、と思ったのですが、そういう気配はなくもない、くらいのレベルです。 それより安積刑事と、娘の関係。そして奥さんとの電話とか、義父との電話なんてのがじんときて好きです。 全体的に暖かい空気があって、切ない事件ながら爽やかな印象。
たけうちりうとと、今市子(イラスト)コンビの話は『こゆるぎ探偵シリーズ』を読んだことがあるので知っていましたが、やっぱり好きだなと思います。
2004年10月08日(金) |
『RIKO 女神の永遠』(小) |
【柴田よしき 角川文庫】
いやはや、強烈なのがきました。 人気作家ですから、前々からチェックはしていたのです。でも粗筋だけで、もうお腹いっぱいというヘヴィーさに、私はこの本を読むことはないだろうと思っていましたが、刑事小説がマイブームになってしまったので、避けては通れまいと読みましたよ。
ヒロイン緑子(リコ)は、警視庁の刑事時代に、上司と不倫の上刃傷沙汰に巻き込まれ、その上同僚との二股疑惑がもちあがり、新宿署へ。そこでは年下の恋人ができ、そして婦警の麻里とも恋人関係に。
と言う風にしか書けないが、こう書くととんでもなく奔放と言うか無節操な女であります。 読むとそういうわけではない・・・・少なくとも最初からそういう人だったわけではないし、性に対して不道徳でも不謹慎でもないと思う。 というのがわかっていても、強烈です。
そしてそんな緑子が担当したのが、ビデオ店から押収された少年が輪姦される数本のビデオテープとそれにまつわる殺人事件。 正直もういいです と粗筋読むだけで辟易してしまいます。 この小説、読めない人はまるで読めないと思います。
それでもこの小説は面白かったんですよねぇ。 解説には 「魅力あるキャラクターと斬新な作品世界とを創造することに対する、迸るような情熱がある。新人処女作のみが孕み得る、恐らくは一度きりの貴重な熱気だと思う」 とありますが、まさにそういう熱意がある小説。 けっこう表現に稚拙さは感じるところ多々なのですが、補って余りある力があります。 その力が過剰なので、読めない人は読めないし、読んでも不快感を覚える人もいることでしょうが。 私もできればこういうのは一作だけにして欲しい。 面白いんだけど、きついので。 女の人なら無条件で理解でき、男の人には永遠にわからないかもしれない(というより分かってもらいたくはない)。 そういうヒロインが新しい。 共感し難いけれど、否定はできないなぁと思います。
そしてミステリーとしても読ませます。
次回作で一児の母になった緑子がどんな風になっているのか気になります。
2004年10月04日(月) |
『PLUTO1』(漫) |
【浦沢直樹 原作:手塚治 小学館ビッグコミックス】
浦沢氏の話題の新作です。 なんとも期待に胸膨らむ組み合わせ。 でもアトム知らないんだなぁ・・・。豪華版を購入した方がよかったか、とちょっぴり後悔ですが、高いんだもの。大きいし。
一巻からすでにちょっぴり涙を誘います。 ノース2号の巻は、きましたねぇ。 頑固な爺さんを描くのが上手いですよ、浦沢氏。 爺さんを手術したもぐりの日本人外科医は、天馬か?と思ってしまいました。 天馬はモグリじゃないですけど。わかってますよ、あの有名な医者だってことくらいは。
原作を読んでいないので比べようもないのですが、アトムが浦沢氏の手によるとこうなるのか、という感慨。 原作も読んでみようと思います。
2004年10月03日(日) |
『てとろどときしん 大阪府警・捜査一課事件報告書』(小) |
【黒川博行 講談社文庫】
上手く関西弁を書き言葉で表すことに定評のある黒川氏の本、初読みです。 関西弁のニュアンスが耳によみがえるようなテンポのよさが、読んでいて気持ちよいです。 刑事の出てくる小説も本当に色々ですねぇ。ここの刑事はしんどい時も飄々としてます。 本書は刑事小説よりはミステリー寄りですがね。
「てとろどときしん」 黒マメコンビが可愛い一話目。 お仕事を離れて単独捜査というのは推理小説的です。 驚きの展開、というのはないので黒マメの漫才めいた会話が一番楽しい。
「指輪が言った」 叙述トリックですかねぇ。 だまされたと言えばだまされたかなぁ。 実は事件としてはさっぱりひねってないじゃん!と読み終わってからツッコミました。
「飛び降りた男」 デコちゃんが可愛いけど、刑事さんそんなんでいいのか、と思わなくもない一編。 話は指輪が〜の後だったので疑心暗鬼になっておりましたので、わかりました。
「帰り道は遠かった」 再び黒マメコンビ。 どの話も締めがあんまり好きじゃないのですが、これは好きでした。 黒マメ苦労損と言う感じで。 話の中身もなかなか面白かったです。
「爪の垢、赤い」 犯人のひっかけ方がありがちでしたけど、謎部分は面白かったです。 でもやっぱり黒マメの全然関係ない漫才会話が一番面白いんだなぁ。主客転倒のような・・・
「ドリーム・ボート」 真相は藪の中、というのを目指したそうですが、ならばもう少し別の可能性も残しておいてほしいところ。 ちゃんと書き切っていないのかと思ってしまいます。
黒マメコンビは長編でも活躍しているそうなので、ちょっと読んでみようかなと思います。 にしても、グリコ森永事件で呼ばれた作家、なんですね。黒川氏。ちょっと可笑しかったです。一番のオチだったかも。
2004年10月02日(土) |
『トゥー・ブラザーズ』(映) |
【監督:ジャン・ジャック・アノー フランス・イギリス共同】
動物映画は観ないのですが、ジャン・ジャック・アノー監督が好きなので観てきました。 トラがとにかく可愛い。 私はネコ科の猛獣がとても好きですが、この映画のトラはどれもこれも本当に可愛いし、いい表情をしています。 お前に食われるならしょうがないや。
冒頭の子トラがジャングルの中で戯れているシーンを見るだけでも価値あり。 私はもう少し人間サイドからのシーンがあるのかと思っていたのですが、本当にほぼ全てのシーンにトラがいる。
ストーリーは感動ものを描いたと言うよりは、翻弄される二頭のトラに人間の姿が投影されている、という印象を受けます。 それがもっとも現れているのは、知事がクマルの檻に話しかけるシーンと、闘技場で二頭が遊び始めるシーン、そしてラストの母トラの耳に空いた孔、のように思います。
まあそんなのは瑣末なことで、トラの演技を見るだけで満足の映画でありました。
2004年10月01日(金) |
『六番目の小夜子』(小) |
【恩田陸 新潮文庫】
今をときめく作家さんのデビュー作。 恩田陸は一冊だけ読んだことがあります。 不思議な感じのミステリーで、面白いと思うし読みやすいですが、なぜか何冊も読もうとは思えない人です。
面白かったですよ。 キャラクターが高校生としてはリアルさに欠けるけど、大人になってから回想するとたいていこういう高校生ができあがるから、それはそれでこの物語にあってはいたと思う。 まあ、主人公4人が4人ともできすぎな感じはしますがね・・・ 小夜子という少女が魅力的なので、他の三人はそこまでできた子にしなくてもいいんじゃないかな、と。秋くんは、しょうがないかな。
学校祭での「六番目のサヨコ」を演じるシーンが、とても上手い。 前に読んだ本もそうだったけれど、一瞬の恐怖感を盛り上げるのがうまく、それが後を引かないのもよいですね。
私はどうも裏を読みすぎみたいで、語り口がなんとなく引っかかったので、この物語全体が「サヨコ」という劇なのかと最後まで思ってました。 結局、桜・・・・? 卒業式シーンで終わってもよかったんじゃないかなーと思いました。小夜子の怒りが印象的だから。
良作でした。 (『魔性の子』をちょっと思い出しました)
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