妄言読書日記
ブログ版
※ネタバレしています
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2004年07月27日(火) 『三国志断簡空名の哥』『銀魂1〜2』(満)

【桑原裕子 ホーム社アイズコミックス】

久しぶりに三国志本を。
朝香三国志のイラストを描いていた桑原さんの三国志。
朝香をコミック化したわけではありません。
「名軍師たちの物語」とう帯についつい惹かれ。

郭嘉、陸遜、姜維の短編。
まー・・・・・話のつくりはうまくないです。
どうせなら三国志かじってない人にはわからなくてもいい、というくらいの気持ちで。
いやわからなくても面白くなるように描いてくれればいいのに、どっちつかずでした。

キャラデザインが真三国無双シリーズっぽい人々多数。
それは仕方ないのかなぁ。
私は魯粛の話が読みたかった。もしくは諸葛兄。もしくは徐庶。

+++++++++
【空知英秋 集英社ジャンプコミックス】

売れ筋は一通り目を通しておきたい性分。
『デスノート』はジャンプじゃなきゃできないよなーと思いましたが、これはこれで違う意味で非常にジャンプ的ですね。
向こう三回分くらいしかシナリオ考えていませんという感じが。
いつでも打ち切り来いコノヤローみたいな、潔さを感じます。
面白いかと言われればかなり微妙なのですが、漫画を通じて見える作家の「だって担当が・・・」という意見が透けて見える感じが哀愁です。
なんかこう、ジャンプはやっぱりジャンプなんだなぁと言う感じです。

「新撰組ブームにのっかれ!」と言われたという告発はナイスです。
言われなくともみんなそうだとわかっていますけど、あえて言ったところにキラリと光るものが・・・見えたり見えなかったり。

作者は非常に北海道出身のような気配を感じるのですがどうでしょうか。
あ、空知って空知地方?

とりあえず定春が可愛いのでよしとしますか。
あ、でも銀さんは天パではない。あれはくせっ毛程度だ。


2004年07月26日(月) 『NO.6 1・2』(小)

【あさのあつこ 講談社】

こんな問いは愚かなのですが、いったい対象年齢はいくつなのでしょう・・・
前に読んだ『都会のトム&ソーヤ』と同じシリーズ(ミステリーランドみたいなやつのこと)なのですが、いやぁ・・・ティーンズ向けって幅が広いなぁ。
『バッテリー』はぎりぎり児童書、だと思うんですが、これはアウト、って感じです。

だって、紫苑の設定がいやらし過ぎですよ。
なんですか、その蛇のような痣って。18禁です。子どもは読んではいけません(そんなことはない)
その上、性格は天然。
なんだかとても、私は困ってしまいます。
まあ、年齢が16歳なのでいいのかなぁという感じもいたしますが。

長くなるのかわかりませんが、ネズミはこのまま行くと切ないことになりそうで不安ですよ。
紫苑にはまり過ぎないよう・・・無理ですか。もうすでに無理っぽい。
あさの先生は希望を与えたい、と言っていたのでここはぜひに、ハッピーエンドで、みんな円満にラストを迎えてほしい。
いやしかし、ネズミと紫苑がこの先、デキたとしても私は驚かない。
もうすでに半分くらいのところまできてると思うし。

そんな中、沙布はどうなるのか。気になるようなならないような。
「あなたの精子がほしい」とのたまう児童書ヒロイン(ではないかもしれない)にはビビリましたよ。
恐るべし、あさのあつこ。

『BANANAFISH』が元だとか参考だとかなんだかそんな風の噂を耳にいたしました。
でもラストはアレではないと。ほっとしますね。あれはとても悲しい。
じゃあ、紫苑とネズミは、英二とアッシュ?
アッシュと英二を足して二で割ってみた、という感じもしないでもない。
紫苑もネズミもIQ高い子だからなー。ネズミのIQはわからないですけど、高いんでしょうね。

物語はまだ全然動いていないぞ、という気がするので、今後の二人に注目です。


2004年07月24日(土) 『百器徒然袋 風』『バッテリー3〜5』(小)

【京極夏彦 講談社ノベルス】

出ました出ました。私、これ大好きです。
榎さんはもちろん、京極堂までがなんだか弾け気味なところが愉快です。
本島君は、前回よりさらに可哀想な感じがいや増しておりました。気の毒。

このシリーズを読むと、京極堂はサドなのか、と思います。
まあ、みんながみんな厄介ごとばかり持ち込むから、ちょっとばかりいじめてやりたくもなるのでしょうが。
そういえば、今回関くん不在。本島君とポジションが同じだからでしょうか。

今回はひたすら榎さんが可愛いです。
にゃんこにゃんこ言っているのも可愛いですけど、「面霊気」のラストもよい。
なーんだ、ちゃんとみんなのこと心配してるんじゃないか。
本島君宛ての手紙がほほえましいです。
榎さんいいなぁ。素敵です。
榎さんの、父上も出てきました。
おお、こんな感じなのか。
おもしろい親子ですよね。

来年の映画化が不安な京極堂シリーズですけれど、映画は映画で楽しめればいいなと思います。
なにもウブメから律儀に映画化しなくてもいいのに、と思いつつ。
一番映像化が難しいものから始めなくてもいいだろうにねぇ。

+++++++++++++
【あさのあつこ 教育画報】

なんだかいろいろありましたが、3年生組がいいキャラです。
海音寺先輩はもちろん、門脇、瑞垣。
海音寺先輩はかっこいいですねー。
だけどこの3年組の会話は会話だけ聞くと、君ら思春期だからって欲求不満すぎるぜ、と言いたくなりますね。
内容は野球のことなんですけど。
もう少し爽やかになりなさいな、と言ったら、この子らは怒るんでしょうね。

対して一年組は可愛いです。
うーん、いいですねぇ。

青波に嫌いって言われて落ち込む、永倉君の気持ちはよくわかる気がしました。
青波に言われたら落ち込むよ。巧に言われてもなんとも思わないけど。
そうかそうかー嫌いなのかー、って感じで。

これが児童書であることがよく驚かれますが、巧たちを書く以上、あさのさんも子ども相手だからと、手を緩めるようなことはできないのでしょうね。
だから、児童書のわりにどきっとする言葉を使うのは、それが本気なんだと、子どもを相手に書いているわけではない、そういう覚悟の表れなんだろうなぁと読んでいて感じます。
そう考えると、児童作家って不遇ですよね。最初から児童書だと侮られて読まれないんですから。

次の巻で終わりらしいですが、この子らがどんな試合をするのかとても楽しみです。


2004年07月20日(火) 『弁護士兄弟は恋が苦手』(小)

【デビー・マッコマー 訳:新井ひろみ ハーレクイン】

弁護士で兄弟!!
本屋で見つけた時は衝撃が走りました。美味しい。美味しすぎる。
だがしかし、ハーレクインって・・・と悩む私に、友二人がプレゼントしてくれました。
本日はプレゼントしてくれた友人のために書きます。
今日をおいてハーレクインの感想などを書く日はおそらく来ないので、とても貴重だと思いますよ。

初ハーレクインで、どんなのなのかいまいちわからなかったのですが、優しくてハンサムで御曹司の弁護士兄弟、という分かりやすく記号的なキャラクターは苦笑ものです。
なんかもう少しキャラに厚みとか・・・と求めちゃ駄目なのかな。
兄編と弟編の二話仕立です。

「恋人はどちら?」
兄弟と幼馴染のヒロインは、14歳の頃は弟・エバンに夢中、だけど大人になってから二人の経営する弁護士事務所に勤め始めてからは兄・ダミアンに運命を感じちゃうという、惚れっぽくないか?という子です。
兄弟二人に求愛されるという流れかなと思っていたら、もう少し入り組んでおりました。
振られてブロークンハートな弟を慰めようと、昔弟に惚れてたヒロイン・ジェシカとの仲を取り持とうとする兄。
そんな昔のこと言われても困るジェシカは本当は兄が好きで、兄もジェシカに惚れちゃって・・・・という。
じゃあ付き合えよ、と思うのですが、兄はいまだにジェシカが弟を好きだと思い込んでるんですね。かたくなに。堅物なのです、お兄様は。
渦中の弟はいまだ、ふられた彼女のことを思い煩ってジェシカどころじゃない。ここはちょっと意外な展開ですね。

ひたすら話を聞かない堅物お兄様がかなりイライラでした。
何回も違うって言ってんだろうが!!聞けよ!!
ジェシカもラストは切れましたけど。そうだ、それが正しい。もっと罵っとけ、と思ったり。

ところで30になるまで仕事一筋なのは生真面目すぎませんか。
結婚しなかった特別な理由でもあるのかと淡い期待を持っていたのですが、別になかったですね。
一番つまらない理由は、幼馴染だった頃からジェシカが好きで一筋に10年以上も思ってた。
一番愉快なのは、エバンを愛してた(言うと思った…)
だってさー、過保護すぎなんですよ。弟の失恋くらいほっとけよー。
絶対、前半の愛情はエバン>>>ジェシカくらいの比率ですよ!!ええ、そうですとも。でなきゃ、人の話をあんなに聞き流さない。
堅物兄さんに天真爛漫な弟。定番ですな!!!
裁判で弟が勝ったときの兄さんの弟へ向ける視線は、ジェシカへ向けるときのものよりも愛情に溢れていた。絶対に。

p150でようやくジェシカと兄さんの誤解が解けるシーンなのですが、

ジェシカの足首をつかんで、彼女の体を引っ張りながらダミアンは言った。

足首引っ張ったらあかんだろ!!ジェシカを引き摺ったのか?
気が逸り過ぎです、兄さん。
ようやく思いが通じたとはいえ、バイオレンスな行為は紳士な兄さんには似合わないよ。
ここは手首の間違いなのでしょうねぇ。笑いました。

「愛さえあれば」
弟編。
坊ちゃんのエバンと家柄の違いという壁の前に婚約を破棄した、ヒロイン・メアリー・ジョーの話。
まあ、またより戻すんですけど。
こっちの方が話としては面白いかなぁ。イライラは少ない。
だけどヒロインとしてはなんだかなぁ・・・です。
エバンも狭量というか、弁護士のくせに取る策がみみっちいし、いつも同じだし。
だから負けるんだ。
ああ、そうそう。弁護士だということを忘れるほど仕事してません。この兄弟は。
ヒロインのほうがよほど働いている。
もっと仕事しろよ!これだから御曹司は・・・
法人専門だそうですけどね。事件の一つも起こってほしかった。
好きな相手の依頼くらいもっと根つめて解決してやってほしい。そうだ、結局金で解決したじゃないか!!これだから御曹司は・・・・(二度目)

なんとなく「冬のソナタ」を思い出しました。
姑が反対しといて後になって、「結婚してやって」と言い出すくだりとか。
まあ、入院するのはヒロインのほうなのですが。
事故で事態を展開させようとする辺りも冬ソナ。
一話目も冬ソナっぽいと思ったけど。

だいたい兄に引き続き弟も人の話を聞かない。
これだから、全てに恵まれた男は嫌なんだよ!一度の挫折を乗り越えられないくせに何抜かすか、と思います。
なんだろう、もう何が何でも粗を探したくなってきた。特に弟。
今後順風満帆な人生が待っているのかと思うと、御伽噺じゃあるまいし、と文句の一つも出てきますね。
ああ、ハーレクインだったっけ。これ。どうも恋愛モノ読むの初めてなのでどう読むのがいいのかわかりません。

結婚してもやっぱり弟の世話焼きに余念がない兄さん。
この二人の会話がほとんどないのが、最大の心残り。
一話目のラストからエピローグにかけてが好きだな。仲良さそうにしてるから
兄さんは弟を愛してやまないんですよ。自分にはないカリスマ性とか天真爛漫さとか屈託のない性格とかが、兄には眩しい(妄想)
堅物な自分は判事になったけれど、今後は弟の政治活動も支えて行こうと、そう第二の人生を決意しているに違いない。

最終的に弁護士兄弟じゃなくなるのが最大の不満だったかもしれない・・・
弁護士じゃないじゃん!!
法廷シーンがちょっとくらいあってもバチは当たらないのになぁ。


2004年07月08日(木) 『レディ・ジョーカー 下』(小)

【高村薫 毎日新聞社】

すっかり寝不足です。
でも眠いのに眠れません。
女王はやはり偉大だった・・・
相変わらず合田さんに夢中すぎて、今回ばかりは公平にこの本の良し悪しは述べられません。
え、いつも偏ってる?そんなことはないと…

読み終わって、ああ記憶をすっかり無くしてしまいたいなぁ。そうしたらもう一度何も知らないままこの本を読んで楽しめるのになぁと思いました。
再読したって面白いことに変わりはありませんけれど、初めて読んだときの興奮とか衝撃は徐々に失われていきますから。
面白かった。それにつきます。
どこが、とか、どう面白いというのは、今の私が説明すると合田さんのことしか話さないのでやめときます。

そんなわけなので、合田さんの話をさせてください。内容の話がなくてすいません。え、いつもですか。そんなことは・・・・

あ、そうそう。帯の話ですが。
「犯罪の愉楽に発狂する男たちの臓腑」
なかなか凄いです。でも発狂してるのは半田だけだと思います。そしてなぜか合田さん…。人よりキレるのが一分早いから(そういう問題ではない)
「合田刑事は地獄を見た 救済はあるのか」
おそらく地獄を見たのは加納さん。合田さんは、あれ、一種の心中やから。

社長の護衛をしている合田さんは、社長秘書っぽく、いつもよりストイックさ3割り増しくらいな様子にくらくらです。秘書プレイ(※捜査です)
そしてがっちり、社長の心をつかみました。
ビール美味しそう!!!
いいないいな。端正な近衛兵連れて歩く社長。
しかし偽名が田中はなかろう。もっと凝れよ。捜査本部。
合田さんの瞬間記憶能力はいつも凄いなあと思うのですが、刑事はみんなできる、というわけではないですよね・・・?それなりにできるとは思いますけど、脳内で記憶映像6分割してなおかつ、別の時刻の映像と照合してましたよ。コンピューター?

おうちに帰ると、シャツにアイロンかけている義兄・加納さん。
それを見て、

人の衣類にアイロンをかけているこの男は何を考えているのか、自分にとって何者なのかと、そのときもまた、合田はちょっと考えざるを得なかった。

加納さんの行動に一応違和感は感じていた模様。ただ、そこはちょっとじゃなくて、もっとよく考えてやってくれ。加納さんのためにも。
そして覚ってやれ
合田さんはこうして真相に思い至るのを無意識にも先送りしてたのですね。
気の毒な義兄。
そりゃあ
「君は、俺を聖人だと思っていたのか」
とでも言いたくなる。夜な夜なあなたへの妄執で苦しんでいるのに(勝手な妄想…とも言えない)
合田さんは天然で自分本位ですな。
加納さんが珍しく弱音吐いているときも、かーなーり思考は自己中心的でした。もうちょっと労わってあげて。
そして義兄の言うこと聞いてあげて。
この辺の会話は関西弁でしてほしかった。LJはほとんど標準語でしたね。
合田さんの大阪言葉好きなのになぁ。加納さんも好きだと言っていたぞ。

さて、LJで一番感情移入したのは半田でした。
危険人物だとか思わないでください。引かないでー
半田がうらやましかったんだ
四六時中合田さんに思われたい(誰か止めてあげてください)
合田さん、半田のことを考えるか加納さんのことを考えるか、あとはぼうっとしてるかのどれかしかなかった本作。ちょっと大丈夫か?と思うところ多々でしたが、大丈夫じゃなかったですね・・・
どうして転職先が第一次産業ばかり候補なのか。人と関わりたくないのか。
漁師やら農家は似合わないよ。
刑事しかできない男・合田雄一郎。でも、彼に関わる者はみな犯罪に走る。
犯罪を誘発してるよ。
天性の男殺しと言える。

半田はもっていなくて自分にはあるものを必死に探す合田さんに涙が出ます。
か、可哀想な人がココに・・・
しかも結論がヴァイオリンだという。
もっと、もっとあるから!!
えっと・・・か、顔・・・・?色気はいらんほどあるよ!!溺愛の義兄とか!!

ええとあと、いろいろあり過ぎてどうしよう。
あ、歯医者の秦野は組長の秦野とはなんの関係もないんでしょうか。
いつもの女王のネーミングへの無頓着さゆえの偶然の重なりでしょうか。
女王はなぜ名前がそんなにかぶりまくるんでしょう。

ああ、さて。
いつも感慨深いラストシーンなのですが、今回ばかりはその直前の合田さんの行動に度肝抜かれて、物井の印象深い目などを脳内で消化できないまま終わってしまいました。ああぁ・・・・ごめんなさい。
病院でよーやく、加納さんの18年越しの思いが「友人以上の感情」であると気がついた合田さん。
すっかり死ぬ気満々だった合田さんに、そりゃあ加納さんも怒るよ。でも加納さんも、もう少しわかりやすく気持ち言葉にしておけばよいのに。合田さんは鈍いんだから(半分くらいわかっててわざとなんだろうけれど。小悪魔め)
頭の中は義兄でいっぱい。半田はどうした、と思わなくもないですが。
そこで義兄にあてた手紙が、

会いたい。貴兄の声が聞きたい。クリスマスイブは空いているか。

空いてる!なんぼでも空いてるぞ!!!(そりゃあんたの話だろ)
イブがどうなったんだかが気になりまくりでな・・・。物井翁のあたりは上の空でした。
けれど城井社長が亡くなったのは悲しかった。根来さんも悲しい。

あんなことしでかしておいて、ちゃっかり昇進して警部になった合田さん。
周りの人は合田さんに甘いのか?
仕方ないか。
国際捜査課でどのような仕事をしているのか、一度死に掛けて生まれ変わった彼がどうなってるのか。義兄とはどうなったのか。
気になって読み終わったのに眠れないのでした。

そうそう、それでもやっぱり七係にいて、七係と捜査してる合田さんが好きです。
相棒はお蘭がしっくりくるなぁ。結婚おめでとう。わざわざ見舞いに来てくれるとは。この二人の病室での会話が想像できない。可笑しい。
ペコさんはきてくれなかったんでしょうか。
七係シリーズは単行本にならないのでしょうか。

今年の冬に映画化ですけど、どうなるんでしょうね。主に義兄(そればかりだな)
LJも文庫化を待っていたのですが、映画化して、石原軍団が表紙の文庫になっても嫌だなぁと思って、このたび古本屋で購入したのです。
劇場版LJの公式サイトは→http://www.ladyjoker.jp/enter.html
合田さんは20代…。泣けるぜ


2004年07月05日(月) 『レディ・ジョーカー上』(小)

【高村薫 毎日新潮社】

合田さんが好きだ!

『照柿』に引き続き、お前はそれしか言わないのか、というかんじでありますが、上巻なので内容については置いておこうかと。
高村小説の前半って非常に業界話が濃厚で、展開としては遅い。
雰囲気としては『黄金を抱いて翔べ』と合田シリーズのおいしいとこが合わさった感じ。面白くないわけない。
社長誘拐事件、しかし人質は社長ではない、というあたりなるほどなぁと。
下巻もいろいろ犯人側の周到さに感心しつつ、合田さんの疲労困憊ぶりにやきもきするんでしょう。

で、その合田さん。
出番自体は半分もないのですが、もうあなたに夢中★(星飛ばしたよ)
『照柿』でぼろぼろやった合田さんはやはり左遷(転属願い出したの本人ですけど)され、大森署へ。
登場にびっくりしまくりで、思わず本を閉じました。

合田雄一郎、チャリンコで登場(古畑か!?)
しかもカゴに大根(買い物帰り!!?)
ヴァイオリン付

私の処理能力は大根までが限界です。それ以上は想像力の範囲を超えます。
ジーパン姿もかなりぐっときますが、その後のヴァイオリンの一語に許容量オーバーです。私も半田と同じ心境です。
その上、花が咲くように笑います。またあなたったら・・・!!!
いや、実はこの本でヴァイオリン弾くというのは知ってたのですが、まさか大根と一緒に持って登場するとは思わなかったわけですよ。
その合わせ技はないよ。女王よ。
合田さんの健康的なさまを見たいと照柿の時に申しましたが、彼が健康だと私のダメージが大きいです。
なんですか、照れ笑いとかしちゃってからに。素敵すぎで鼻血出るよ。
パソコン駄目だしカラオケ歌えないしって、いまさらかわいこぶったって駄目なんだから!!!
とどめは教会でのヴァイオリン演奏
そりゃ、半田もやられるっちゅーねん。ときめくっつーの。
合田さんの存在は犯罪的なのでありました。
夜に公園でヴァイオリンの練習なんかしてたら、通りすがりの天才指揮者に惚れられるぞ(それ別の小説だから)

考えることがないからと、義兄・加納さんの顔を思い浮かべる合田さんに、再婚しろ、と思いました。
再婚したら寂しいとかのたまいましたが、撤回します。現状の方がよほど寂しいよ、合田雄一郎!!

『マークスの山』以来の根来さんが出てました。この人の人物評がかなり好きです。
合田さんを見て

こんな微妙な目に見つめられたら、理屈抜きに殴りつけたくなるか、魅入られるかどちらかだ。なるほど、義兄である検事は魅入られた口かな・・略

続いて加納さんの合田さんへの態度を見て

無意識に人を庇護する立場に立ちたい男の本能。あるいは生来の世話好きな性向。あるいは、人知れず積み重なってきた人間関係の歴史。あるいは、ひょっとしたらそんなこともあるのかもしれない、一人の男に対する≪ほ≫の字。

ほの字ーっ!!!!久しぶりに聞いたーっ!!!!
加納さんバレバレですよ!!!!
ありがとう、言いにくいことをずばり言ってくれて。根来さん!!
庇護欲を誘う男・合田。罪作りめ。
殴りたいと思うか惚れられるかのどちらかって、どちらにしろそういう感情を抱かせる相手は男限定なんでしょうなぁ。
女性にはもてないもんね・・・合田さん。

加納さんの愛情が公式設定で本当によかった。
あんなまめまめしく通う友人おるわけない。女でも今日日やらん。
おかんでもやらん。

で、そんな合田さん社長の警護担当に。
朝から晩まで社長のお側に。
い い な 社長
でも実際、合田さんが横に四六時中いたら息詰まるね。
人に安らぎは与えそうもないです。
合田さんの警護っぷりと加納さんの愛情の行方と、あと事件の展開が気になるのでそそくさと読み始めたいと思います。


2004年07月03日(土) 『照柿』(小)

【高村薫 講談社】

高村は本当にゴツイです。読むのに一週間近くかかりました。
おかげで今週は寝不足気味です。
文庫化を待っていたのですが、古本屋で2000円が500円だったから購入。
それと、この本をなかなか読まなかったのは、合田さんが一目惚れに苦しむ話だから。
あんまり気が進まなかったんですよね。
合田さん大好きなんですよ。

久しぶりに高村小説読みましたけれど、非凡な作家だなぁとしみじみ思います。
面白いとかうまいとか、そういうことを思う作家はたくさんおりますけれど、そう思うのは高村くらいかなぁ。
なんともうまく言えませんけれど、ラストにかけて一気に流れ出すさまはいつも深く感動します。
今回はとくに、最後の達夫と合田さんの電話がよい。
私も合田さんに「好きや」と言われたい・・・(いやそういう意味でこのシーンがよいと思ったわけじゃないんですよ。本当に印象深いシーンなんです)

合田さんと兄弟同然で育った達夫が出てきて、合田さんの子ども時代が垣間見えました。
カラス飼ってたんだ・・・。
達夫視点から見る合田さんの酒を飲むシーンが色っぽくてもう大変。
全編合田尽くしでうはうはです。達夫のところは読み飛ばしそうな勢いです。ちゃんと読みましたけど。
組長との賭博でお金ないと言ったら、じゃあ体で、と言われたときは、その賭けに私も参加したい、と思いました(命知らず)
合田雄一郎が大好きなんです

えーと、あとはなんだろう。
義兄は相変わらず合田さんを愛してやまない雰囲気です。
合田さんは男心をつかみすぎです。
ところで、ひょっとして合田さんがお付き合いした女性は元嫁以外にいないんですか。
勿 体 無 い
だけど再婚されるのは嫌ですなぁ。乙女心デス。
加納家の養子になっちゃえばいい。これも乙女心デス。

高村小説ってまったく女性の存在が記憶に残らないのですが、今回も残らなかったですね。合田さんに夢中だったからじゃないです。
合田さんが一目惚れする相手なのだからもっと印象深いかと思ったのですけれど、印象そのものは茫洋としてます。
思うに高村小説の女性って、“女性”というイメージをひとくくりにした存在として出てくるから個人としての印象がないんじゃないでしょうか。
今回の美保子も、合田さんや達夫はその時その時によっていろいろなものを投影するわけです。
高村小説の女性は抽象的。
象徴的、な感じもする。

合田さんがどこに転属したのか気になりつつ、森がなにゆえ島ばかりに転属願いを出すのかも気になりつつ。
合田さん、もう少し森刑事に気を使ってあげて・・・とほろりとした場面が今回多々。

あと、たまに健康状態良好、絶好調な合田さん見てみたいんですけど。
いつも死人一歩手前な状態で痛々しすぎるんです。
レディ・ジョーカーでも奔走してるのでしょうね。今、読んでます。

そういえば、これドラマ化してたんですね。
合田=三浦友和。んー・・・・



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