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2011年08月31日(水)
夕飯のお買い物の帰り











下校時刻になりました、生徒の皆さんは…
放送委員の水彩声が
歩道橋をいっしょに降りてきます

そんなに心配しなくてもだいじょうぶ
ひとりで済ます暮らしもね、それなり
だもの、降りきると

白髪を結わえたおばあちゃんが
防犯パトロールの大きすぎる襷をかけて
ガードレールに倚りかかり
空を見ているのでした



















2011年08月14日(日)




馴れていく − 「顔」







きみが自慢にしているのは顔
その整った顔を撫でまわしながら僕は口に出さない
どんなにか美しい顔だちをしていても
よくよく見れば随分と面白い風に出来ているもの

煙を吐きながら目が茶色く焦げて料理長が慌てている
鼻からは快速電車が飛び出しアナウンスが始まって
線路はちゃんと首筋まで伸びてるようで
でも途中でちょん切れそこから重油が漏れだしてる
まつげの先がまだ火事だから
女子高生が消化器をもってオロオロ、けれども
おでこでは旅人が呑気に昼寝、おへそなんかだしちゃってさ
垂れた前髪の陰に知らぬ間に
どれほどの小鳥の巣が作られたものか
こぼれ落ちた卵が唇のうえで割れて艶やかです
一面の花畑だった頬が腐って落ちて粘ついて
耳の穴の換気扇が廻り続けるのは
きみの思惑が
もうすっかり
外れてしまったからなのだし

だからこう、顔を近づけてまぢまぢと
見つめ合ったりするもんじゃない
僕の顔ならもっとひどい有り様でそんな現実
忘れていたのに可笑しくなって
同時に吹き出してしまうので