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2008年10月27日(月)
ピタリ☆やっぱり君(3)











19:00 HEY!わたくしらの音楽ステー
    ションフェアー
    秋の夜長お風呂で歌いたい
    歌特集
    ゲスト:JOJO広重
    yoshida ami
    裸で君の隣りにいると
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20:00 月曜トレンディードラマ 肉離れ
    第11話
    「湿布だけでもいいですか?」
    出演;さだまさし
    中島みゆき
    高田渡
    浅川マキ 他
−−−−−−−−−−−−−−−−
20:55 GNNニュースライン・天気
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21:00 ゴールデン映画シネマ劇場
    「王様、キャバクラへ行く」
    (1998年アメリカ)
    人類滅亡の危機をうけて
    歌舞伎町へと乗り込んだ
    男たちの最後の決断!!!!
    監督:ナンジャラ・ヤッパリーニ
    出演:八張草太朗
    アルフレッド・D
    ドーリー・F
    Dr.ジャンダン
    Mr.ポンチョス 他
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22:54 ふたばの小部屋
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23:00 ニュース午後弐十参時発
    大ヒット商品に何が!?『ぴたり☆
    やっぱり君』販売元に強制調査
    のメス!!商品回収へ
    スポーツ・天気
    あしたの怨ない
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00:24 ミッドナイト5分間ドラマ 空焚き
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00:30 だいじな健康
    猫をあたまにのせるネコたま
    健康法の秘密
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00:45 「王様、メイド喫茶へ行く」
    公開間近SP
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01:00 朝まで迷惑メール批評会
    月に一度の恒例企画!!今夜も他
    人の意見に聞く耳持たず!!!選り
    すぐりのスパムメールの内容を
    巡り言いっ放しの過激討論会!!!
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05:25 アナログ放送終了のお知らせ

















2008年10月20日(月)










ちょうど穴があったので
穴があいていたので
なかにはいってみることにしたのだった
ちょうどそうしたいこともあったのだ

穴にふき込む涼しい空気が
まっ赤な耳には心地がよくって
覗かれないほどの深さもあって
足を伸ばして眠ることも出来たのだった
あたまを下げた格好になればさ

おばあさんの足、子どもの足
はじめは擦れてうるさかった
あたまのうえの足音でさえ
馴れれば可笑しくもなるのだった
あたまの尖った部分を削ってくれた
ざらつく手足も、棘々な胸も
だんだん丸くもなってきた

ちょうど穴があったので
なかにはいってみることにしたのだった
ちょうどそうした理由など
思い出しもしなくなるまで
穴のなかにもたれかかった
それが私、と言えるまで

そのうち気付くと可笑しいのだ
穴の壁にはそこらじゅう
顔、顔、からだ、涼しげな
穴とはぽっかり空っぽな
先客達で出来ていたと

耳をまっ赤に腫らした誰か、また
ふらふら近くを歩いてきたなら
どこか地面の下あたり
土の盛り上がったあたりから
陽気なジャズが聴こえてくるかもしれません














2008年10月13日(月)
目が覚めるまで







景色が
終わる
会話も途切れ
薄らぎ
模様になって
波音になって
目が覚めてから目を
開けるまでに
言葉がいくつか流れ
砕けて
眠っていた事が
あきらかになるうち
私という
頼りない一点が
私じゅうに
散らばって
線になって
枝になって
形に
物語に
それから
私にしか読めない
手紙になって

目を開けた
その後は
時計を見上げ
一日を
想い
けれど
この目覚めが
まだ
私には足りていないのだと
気付き
カーテンが揺れる
撓んだ
その途端にでも
隙間から
思い出させられそうなことが
まだ
あって
今朝もまた
目が
覚めたことを
後悔したくなるような
諦めて苦笑いを
試したくなるような
そのことを

まだ
思い出してはいない
まだ忘れている
思い出すまで
あと何秒?













2008年10月06日(月)
第一人称(5)或いは、僕のブログ






 かたかたかた。ブログを書く。自由に。文章であると言えば少しは立派にも聞こえそうだけれど、実態は只の書きこぼしに過ぎないので。ので、もしもあなたが春風のようなココロうつろいやすい性格の持ち主で、このブログを迂闊にも、開いてしまった途端に読む事が面倒になったら、どうぞ右上の「×」をクリックしてもらってかまわない。その程度の物ですよん。とは世間によくある謙遜で言ってはみたものの、一応は誰かに見てもらうに値する事をしっかり期待もしてしまうものだから、いちど書き終わっても未練がましく手直し見直し放置また手直しを重ねたりなどする。ただのブログじゃん、とあなどることなかれ。たやすく書き換えが出来てしまうような出来では、あーすればよかった、こーもしたかったーとあとでたっぷり後悔することになるのだ。つまり性分。
 だからいまもこうして、パソコンのメモ帳と真っ向勝負、対峙しつつ音楽をきいたり頬杖ついたり鼻の下をこすったりして、なにかしっくりくるようなものがアタマに浮かんでくるのを待っているわけですけれど。ちなみにいま、朝の5時をまわったところです。横浜は深夜からシトシトとした雨が降り続いています。日付も記しておくなら8月の28日。そろそろ秋ですね。宿題終わった?と、つらつらキーボードを叩きながら、自室にて、ぽつん。さて今日はどんなことを書いてみようかと思い耽りつつ、まんじりと朝を待ったりしています。たまにならば、こんな風にだーらだらとブログを書いている自分をそのまま書いてみるのもいいのでは、と試みてはみたのですが。
 さりとて、なにもすべてこんなふうに正直あからさまに書くことは、やはりないだろうとも思うわけで。所詮は画面に文字を書いているだけのことなので、書いている僕自身の姿は、読んでくださっている方には分かりはしないはずなのだし。「いま電車の中で書いています」ともはたまた、「アメリカはシカゴの闇深い地下室へギャングに閉じ込められて、遺稿のつもりで万感の想いを込めていまこれを書いています。」と書き始めてもいいかもしれないわけです。そのほうが、きっと書いているのも面白いことでしょう。試してみようか。

 ―メモ帳の中身は此処で終わっていた。書きかけということだろう。メモ帳といっても紙を束ねたものではなく、パソコンのテキストドキュメントのことだ。僕はもういちど冒頭からざっと読み直し、最後の行に目をとめる。「試してみようか。」と書いてからそのあと、はたしてこの「僕」は、どうしたのか。別の事に興味が向いてしまったのか、眼精疲労でパソコンを畳んだのか。そもそも、何か試してはみたかったけれど続きがなにも思いつかなかったのかもしれない。などと今朝まで見知らぬ他人の所有物だった、このノートパソコンの持ち主のことを思いやってみる。
 昨今この国では、誰もが五つ六つとブログを持ち、更新作業とネタのひねり出しに日々頭を悩ませている、そんなご時世である。ゴタブンニモレズ、この「僕」という人物もなにかブログを書いているらしい。僕が僅かにでも興味を持ったのは、その事自体にではないのだが。
 話を少しだけまえに、僕が友人と飲み明かした帰り途中の朝5時まで戻すと、僕はこのノートパソコンをまだ空き缶のようだった始発電車で手にいれた。座席の上に物悲しく置き忘れられてたのだ。駅員に届けよう、などとは考えなかった。持ち主が取りに来るとは限らないし。それよりも使ってもらうべき主人にないがしろにされ、ぽつんと座席の上に寝転がっている姿が痛々しくて、人として放っておけなかったのである。認証の必要もなく起動出来たのを幸いに、だから意気揚々と自宅までお持ち帰り。そしていま、7時を回ったところ。酒のはいった後の食欲を食パンで慰めつつ、こうしてどれどれと胸を高鳴らせ中身を参照させて頂いてるというわけだった。(弁解かもしれないが僕は悪人ではない。他に誰も乗っていなかった車両とはいえ、普段の僕はそんな勇気は持ち合わせていない。早朝まで飲んでたワタミの焼酎のせいである。世間ではこの行為を窃盗もしくは遺失物横領と呼ぶ、かもしらんが。まあ弁解であるので。それはともかく)
 他人のパソコンを勝手に覗き見るという行為に嬉々としない奴などいない、少なくとも僕はそうだ。さあ鬼がでるか、自衛隊の機密書類がでるか。どこぞの結婚仲介業者の顧客名簿?はたまた悪趣味なポルノ画像?去ろうとする恋人を、あの手この手でつなぎ止めようとするメールの束が、或いはわんさと飛び出すかと期待したわけだったが。
 結果としては。心躍る覗き対象となるようなデータは、殆ど保管されていなかったので、僕は大いに肩をすかし落とした。同時に不平もたっぷり湧き上がる。なんと人間味のない、面白みの欠ける乾いた人間なのだろうか、この「僕」とやらは。何度も舌打ちした。
 或いは購入したばかりだったのかもしれないな。そう思ってみてみるとまだ新しい。まだ綺麗なもんだ。ほぼ新品のパソコンを拝領できたことは嬉しい。でもせっかく人の使っていたパソコンなのだから。なにか。こう。もっと…。と、もう一度舌打ちをしようとした矢先、先程のメモ内容をフォルダのなかで発見、というわけだった。
 内容はおそらく、「僕」というこのパソコンの前の持ち主がブログを更新するために書いた下書きである。(内容はだらだらとしていて、つまらない。)僕が興味を持ったのは、この文章のなかに嘘があったことであり、その嘘の吐き方だった。
 8月28日とは、今日のことだ。ほぼ新品のパソコンに保存されていたとすれば、去年の同じ日とは考えにくい。確かに昨夜の深夜からは、シトシトと雨が降り続いていた。居酒屋ワタミの焼酎越しに僕も同じ雨を眺めていた。(いまはもう止んだ。)ということは、この文章は今朝書かれたばかりのものにほぼ間違いない。このパソコンが置き忘れられていたのが4時55分発の始発電車。僕は5時30分に乗り込んだ。 つまり、この「僕」なる人物は、「自室にいてこのブログの下書きを書いてはいるが、文章上ならば『いま電車の中で書いている』、とすることも出来る」としながらも、本当に電車のなかで書いていた、ということになるのだ。
 …それがどうした?と言われればいささか困ってしまう塩梅ではあるが。ではあるが。僕は思う。この嘘は実に些細な嘘だ。些細で、取るに足らな過ぎ、書いたところで意味がない。得もなく見栄ですらない。第一、面白くない。こんな無意味な嘘を、否、無意味だからこそ。こんなことをブログにさらりと書こうとしていた人間とはもしかすれば、日常でも無意味に、けれども「嘘」を沢山、ある事ない事、その場その場で撒き散らし続けいると推測できはしないだろうか。そうだ。そうに違いない。嘘をつくことをなんとも思っちゃない、そんなポリグラフにも匙を投げられるような、口を開けば虚偽報告ばかりするような無意識な嘘吐きでなければ吐けないような嘘なのだ。なんて悪いヤツだろう。僕は「僕」の書いた一篇の嘘から、その裏にひそむ影を読み取った。(そんなヤツ、捉えようによっては、酔った勢いで人様の持ち物を失敬してしまった、この僕よりもタチが悪いかもしれないな。とは僕の罪悪感から出た弁解なのか)
 僕は、僕の罪悪感を打ち消すためのこの理屈をより確かなものとするため、「僕」が普段から他愛ない嘘を撒き散らしているであろう「僕」のブログを探してみることにした。探してみるとあっけない程簡単に見つかった。「☆僕のblog☆」という枕詞付きで、ブラウザのブックマーク一覧、いちばん上に登録してあったからだ。その割りに地味なタイトルで。―「ごっちゃ箱」。
 「僕」の書いた記事を2ヶ月分ほどさかのぼって読んでみると、ブログとはいっても実生活に基づいた日記やその独白、日々の感想ごとを綴るといったわけではなく、主になにやら文章作品っぽいものの発表の場として使っていたようだ。確かに作品というものは、作品であろうとするが故に嘘が溢れかえるものだ。作品という枠のなかには「実際にあった事として書かれた嘘」すら数多くあることだろう。
 この「僕」なる人物も、作品を目指して書こうとするうち、し続けているうちに、無意味な嘘まで無意識に書き綴る癖がついてしまった。という推測も成り立つのだろうか。
 しかし、どうせ嘘をつくのなら。と僕はまた思い当たるのだ。どうせ嘘をつくのなら、もっと、さも内容のありそうな、思い切ったことをやってみたらどうだろう。僕は先程の悪人呼ばわりの事はもう忘れ「僕」に意見をしてみたくなってしまった。僕はブログなんて書いたこともないが、僕がもし「僕」ならもっと面白い嘘をつく。酔っているせいもあるだろうし、期待してた他人の秘密を暴けずに不満だったことも大いにあるだろう。そしてブログの作成画面にブラウザを進めれば、ほら。更新するためのIDもパスワードの情報も残っている!ネット上の文字ブログには筆跡や声質のような肉体的なアイデンティファケーションは、ない。IDとパスワード。この情報を握っているなら、僕も「僕」なのである。もう弁解もする気はない。どうせ嘘だらけな内容のはずなのだ。書き換えたって他の誰も困らない。こんな些細でくだらない文章じゃなく。
 例えば、こんなふうに。(あ。食パンのカス、落ちた。)

 ―ブログの作成画面には「更新が完了しました」という文字が現れていた。寝ぼけ眼でそれを見た。だけど僕には、更新をした覚えがない。「ごっちゃ箱」を確認してみると、シカゴの地下室がどうだとか居酒屋ワタミの焼酎がどうとか、知らない文章がアップされてたのだ。「第一人称(5)或いは、僕のブログ」というタイトルまで付いていた。
 僕は朝方、自室のパソコンの前でうたた寝していた。次はブログに何を書こうかと、考えあぐねながら沈没してしまったらしいが、それまでに一文字としてキーボードを叩いた記憶などない。「第一人称」というタイトルも(4)で最後にするつもりだったし。まさか寝ぼけながら書いたんだろうか。まんじりと、長い文章が浮かんでいる画面を、僕は見つめる。
雨の音がシトシトと聞こえている。
もうじき止みそうな感じ。
時計を見ると、5時をもうすぐ回るところ。
そうだ、と僕は思い当たる。
やっぱりこれは僕が書いたにしてはおかしい。
だって、長すぎるもの。僕の書く文章はいつだって短い。
 画面から縦に極端にはみだしすぎてしまうような長さになどしたことがないし、大体、文字だけで視界が埋まっているなんてキライなんだ。小説や専門書の類など苦手このうえないくらい。眠くなるし、それを我慢しようとするとアタマが痛くさえなってくる。一行ずつの文字数も横に長く使いすぎていて、こんなの読むなんて、目が右から左に動きすぎて疲れすぎるじゃないか。必要な行と文字数だけあればいいじゃないの。それが僕のブログに対する数少ない決まり事なのだ。そして決定的だったのが、僕はブログに「。」なんて付けないってこと。
 誰がこんな悪戯をしたのかは知らないが、僕の文章じゃないのならブログに載せておくわけにはいかない。至急、削除していつも通りに、短いものにさし代えるべきだ。いや、その前に。
 これ以上の悪ふざけを許さないため、いますぐ新しいパスワードを設定しておかなければならない。この文章を書いた誰かが、先に書き換えていないことを祈って。