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JIROの独断的日記
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2008年03月20日(木) 「イラク戦争『正しかった』と米大統領、開戦5年で演説」←イラク戦争の違法性について。何十回目かの説明。

◆記事:イラク戦争「正しかった」と米大統領、開戦5年で演説(3月20日11時28分配信 読売新聞)

【ワシントン=黒瀬悦成】ブッシュ米大統領は19日、米軍によるイラク戦争開戦から5年を迎えるのに合わせ、

国防総省で「テロとの戦い」に関する演説を行った。

大統領は、イラク戦争とサダム・フセイン元大統領の放逐は「正しい決断だった」とした上で、

昨年実施したイラクへの米軍部隊の増派戦略により、「テロとの戦いでの戦略的勝利への展望を開いた」と強調した。

大統領は、「イラクでの戦闘は、予想以上に厳しく、戦費もかかっている」と認めつつも、

増派戦略によって「アラブ人が米軍と一緒にアル・カーイダ追放に動き出した」と述べ、

国際テロ組織アル・カーイダに反発するスンニ派部族との連携が、治安回復に効果を上げていると指摘した。

民主党などが主張している駐留米軍の早期撤退論については、

「性急に撤収させれば、その空白を突いてテロリストや過激主義者が拠点を築き、殺戮(さつりく)を繰り広げる」とし、

駐留米軍の展開規模をただちに縮小させない方針を改めて示した。

また、イラクで国際テロ組織アル・カーイダに巻き返しを許せば、

「イラク国内の石油資源を元手に大量破壊兵器を入手し、米国や他の自由主義諸国に攻撃を仕掛けようとする恐れがある」と主張。

その場合は「イランも勢いづき、新たに核兵器開発を進め、中東での覇権を狙うかもしれない」との見方を明らかにした。


◆解説:「イラク戦争は客観的に正しくない」ことの何十回目かの説明。

私が、最初にこの問題を解説したのは、イラク戦争開戦前日、2003年3月19日のことである。

当時は日本で「ブログ」などという存在は知られておらず、私もウェブ日記エンピツにのみ記事を載せていた。

くだんの記事は、2003年03月19日(水)アメリカの行動は明らかに国際法違反である。その法的根拠。である。

イラク戦争が正しくない理由は、その時に書いたことと同じだが、毎年、新しい読者もおられるし、

私は嫌と云うほど繰り返し書いたから、資料を見るまでもなく覚えているが、

やはり、大事なことは繰り返し書かねばならない(マスコミは決してやらない)。


◆イラクが大量破壊兵器を保有していたか否かは、イラク戦争の正当性と関係が無い。

イラク戦争を始めるとき、ジョージ・ブッシュアメリカ合衆国大統領が主張した、正当性の根拠は、

「イラクは大量破壊兵器を保有しており、これがアル・カイーダなど、テロリストの手に渡れば、アメリカは明日にでも攻撃を受けるかも知れない」

ということだった。だから、そうなる前に、イラクを攻撃する、といったのである。

これは、国際法(国連憲章)に違反している。アメリカは国連の加盟国(しかも常任理事国)なのだから、国連憲章を遵守する義務がある。

これが、国際連合憲章である。

国連憲章は、戦争放棄を謳った日本国憲法によく似ている。原則として武力の行使を禁止しているのである。

それは、第1条(目的)第1項第2条(原則)によって明らかである。
第1条〔目的〕国際連合の目的は、次の通りである。

1 国際の平和及び安全を維持すること。そのために、平和に対する脅威の防止及び除去と侵略行為その他の平和の破壊の鎮圧とのため

有効な集団的措置をとること並びに平和を破壊するに至る虞のある国際的の紛争又は事態の調整又は解決を平和的手段によって且つ正義及び国際法の原則に従って実現すること。

第2条はさらに具体的である。
第2条〔原則〕この機構及びその加盟国は、第1条に掲げる目的を達成するに当っては、次の原則に従って行動しなければならない。

1 この機構は、そのすべての加盟国の主権平等の原則に基礎をおいている。

2 すべての加盟国は、加盟国の地位から生ずる権利及び利益を加盟国のすべてに保障するために、この憲章に従って負っている義務を誠実に履行しなければならない。

すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決しなければならない。

すべての加盟国は、その国際関係において、武力よる威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。

5 すべての加盟国は、国際連合がこの憲章に従ってとるいかなる行動についても国際連合にあらゆる援助を与え、且つ、国際連合の防止行動又は強制行動の対象となっているいかなる国に対しても援助の供与を慎まなければならない。

6 この機構は、国際連合加盟国でない国が、国際の平和及び安全の維持に必要な限り、これらの原則に従って行動することを確保しなければならない。

7 この憲章のいかなる規定も、本質上いずれかの国の国内管轄権内にある事項に干渉する権限を国際連合に与えるものではなく、また、その事項をこの憲章に基く解決に付託することを加盟国に要求するものでもない。但し、この原則は、第7条に基く強制措置の適用を妨げるものではない。

もはや、解説が不要なほど明らかだが、国連憲章は、その第2条において、武力の行使は原則としてしてはならない、とはっきりと謳っているのである。


◆国連憲章が武力行使を認めている例外は2つだけ。

第2条は「原則」となっている。ということは「例外」がある、つまり武力行使が許される場合があることを意味している。

それは、2つとも、第7章 平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動に書かれている。

1つ目の例外。国際社会の平和に対する脅威となる行動をとる国に対して、

まずは、平和的手段(経済制裁など)によって制裁を加える。それでもなお、いうことを聞かない場合、

国連安全保障理事会の決議により、軍事的措置を実行する(多国籍軍を送る)、というケースである。
それが、第42条〔軍事的措置〕である。

第42条〔軍事的措置〕

安全保障理事会は、第41条に定める措置では不十分であろうと認め、又は不十分なことが判明したと認めるときは、国際の平和及び安全の維持又は回復に必要な空軍、海軍又は陸軍の行動をとることができる。この行動は、国際連合加盟国の空軍、海軍又は陸軍による示威、封鎖その他の行動を含むことができる。



2つ目の例外。個別的自衛権、又は集団的自衛権を行使する(日本は憲法で禁止されている)場合、である。

つまり、自国が他国に侵略された場合、又は攻撃を受けた場合、自国民の、又は集団的自衛権の行使を認めている国では同盟国の主権を守るために、

「安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間」、自衛権を発動する、つまり武力で応酬することは構わない。ということである。

それが、第51条〔自衛権〕である。
第51条〔自衛権〕

この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持又は回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。

この2つの例外を除いて、国連加盟国は武力を行使してはならないのである。


◆2003年3月20日、アメリカが武力を発動する理由は上記2つのいずれにも該当していなかった。

ブッシュの開戦理由は国連憲章が武力行使を例外的に許容する、いずれのケースにも該当しない。

イラクは、IAEA(国際原子力機関)の査察を受け入れていた。そして、アメリカがイラク戦争を始める2週間ほど前に、

「イラクが大量破壊兵器を保有しているか否かを判断するのには更に数ヶ月が必要だ」との中間報告を発表したばかりだった。

しかし、実は、それも、イラク戦争の正当性とは無関係である。

仮に、2003年3月20日の時点で、イラクが大量破壊兵器を保有していることが証明されたとしても、国連憲章に従えば、

アメリカが、勝手に、イラクに対して武力攻撃を仕掛けることは、出来ない。平和的脅威に対して軍事的措置を取るか否かは、

国連安全保障理事会が正規の手続きにのっとって決定する事柄である。米国は、国連安全保障理事会の開催すら求めなかった。


武力行使を例外的に許容する2つ目のケース、「自衛権」に関してはどうかといえば、いうまでもない。

アメリカは2003年3月20日、イラクの攻撃を受けてもいなかったし、領土を侵略されてもいなかった。

したがって、自衛権の行使をすることは、論理的に不可能である。

「将来、イラクが大量破壊兵器を作って、それがテロリストの手に渡り、アメリカが攻撃されるかも知れない」

というのは、完全に想像上、仮定上の話であり、現実に攻撃を受けていたのではない。

もし、これを「自衛権」と認めたら、どの国もありとあらゆる妄想的理由にもとづく、「先制攻撃」が可能になってしまう。


◆結論:イラク戦争は正しいか否かを議論すること自体、馬鹿げている。

イラク戦争が始まり、自衛隊をイラクへ派遣する法律をわが国は作ってしまったが、国会での与野党の議論では、

「イラク戦争の大義は何か」

という言葉が頻繁に使われ、イラク戦争は正しいのか、正しくないかを「議論」していたが、だからバカだというのである。

「大義」などというあいまいな言葉を使うから小泉がのらりくらりと逃げる。
「イラク戦争の国際法における正当性を証明せよ」

と言えば、絶対に答えられなかったはずだ。「大量破壊兵器」は繰り返すが、理由にならない。

結論。

「イラク戦争は正しいか、正しくないか。これを日本が支持したのは正しかったか、間違っていたか。」というような議論の余地は無い。

本稿で述べたとおり、イラク戦争は国際法上(国連憲章は国際法の一種だ)、明らかに、違法である。

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