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2007年11月22日(木) |
79年前、1928(昭和3)年11月22日。モーリス・ラベルの「ボレロ」が初演されたのです。 |
◆これほど、聴衆を熱狂させる曲は大変珍しいと思います。
私も好きですねえ。ボレロ、毎年書いている。何度書いたことであろうか。
特に、クラシックのトロンボーン奏者にとってボレロのソロは、常に意識される。
今は、所属オケの首席じゃなくても(ボレロの管楽器ソロは、皆、首席奏者が吹くのです)、
いつかは絶対に見事なソロを吹いて、聴衆から万雷の拍手を浴びる自らの姿を夢見るのではないだろうか。
以前にも書いたことがあるけれど、Googleで、「ボレロ トロンボーン」と検索してみて下さい。
92,000件ヒットしますが、「JIROの独断的日記」が最初に来ます(←これ、ちょっと自慢 (^^ゞ)。
◆同じ事を繰り返すと人間は段々興奮してくるのです。
ボレロに限らず、ベートーベンの七番の終楽章なども同じことである。
同じ音型を繰り返しながら次第にクレッシェンドする。
阿波踊りも同じ事。もっと短い音型だが、例の「チャンカ・チャンカ・チャンカ・チャンカ・」を際限なく繰り返すから、踊っている人たちは、
次第に興奮してくる。ラベルはこの人間の性質を実に巧みに利用している。
ラベル作曲のボレロは、
「タン・タタタ・タン・タタタ・タン・タン/タン・タタタ・タン・タタタ・タタタタタタ」(/は小節の区切れ目)
というリズムを、171回(ちょっとうろ覚え)繰り返す、打楽器(スネアドラム=小太鼓)奏者が、全体のテンポを支配している。
これ、大変ですよ。後でお聴かせするけれど、お行儀悪いけど、菜箸と段ボールか何かを用意してですね。再生される音楽に合わせて、
最初から最後まで、ぴったりとプロの打楽器奏者に合わせることが出来たら、あなたは打楽器の天才かも知れない。
プロの打楽器奏者(他の楽器奏者にもあるだろうが、特に打楽器奏者)には、「絶対テンポ感」が備わっている。
故・岩城宏之さんは打楽器奏者出身だが、時計を使わずに正確に60秒を測ることが出来る、と書いていた。
それぐらい、当たり前なのである。無論、指揮者も、である。
◆リズムだけではなく、メロディーも反復されるところが、ラベルのラベルたる所以である。
ラベルは、「ボレロ」で打楽器奏者に同じリズムを170回繰り返し叩かせたが、旋律も2種類しかない。
メロディーAは最初に、フルートで奏される。これです。
ダウンロード Boleroflute.mp3 (1016.0K)
ハ長調で特に難しいというわけではないけれど、しょっぱなのソロでしょ?それでフルートの最低音域なんですよ。これ。
一番低い「ド」の音が何度か出てきますが、これを朗々と響かせることができるか。プロは出来ますけどね。
最初のソロですから、ここで、「スカッ」と音がかすれたりしたら、
「はい。今日のボレロはこれで台無し」
ということになります。これは理屈じゃないの。ここでトチッたら、その日のボレロは終わりなのです。
次、メロディーBです。ファゴットという最低音域を担当する木管楽器が、この楽器の最高音域で吹きます。どうぞ。
ダウンロード Bolerofagotte.mp3 (844.2K)
メロディーAに比べると何かエキゾチックですね。この対比がたまりません。
なお、メロディーBをファゴットが吹いているときに、最初にソロを吹いたフルートが、小太鼓と一緒になって、
「タン・タタタ・タン・タタタ・タン・タン/タン・タタタ・タン・タタタ・タタタタタタ」
を吹いています。同じ音だけど、ただ吹けば良いと言うものじゃない。小太鼓をよーく聴いて、場合によっては、小太鼓が
ファーストバイオリンとセカンドバイオリンの間に座ることもある(指揮者が決まる)ので、そういうときは、フルート奏者は、
スネアドラム奏者のスティック(バチ)の動きをじっと見て、耳と目で合わせるのです。
◆さあ、行け!トロンボーン!
私はですね。最近コンサートに行っていませんが、「ボレロ」をプログラムに含むコンサートを聴くときは、
極度の緊張状態に陥ります。理由はただ一つ。トロンボーン・ソロが上手く行きますように、ということです。
本番が始まると、決して大袈裟ではなく、タラタラと汗をかきます。実際に演奏するトロンボーン奏者の方が、
余程落ちついて見えます。私は大変滑稽です。まあ、そのソロをきいておくんなさい。
ダウンロード BoleroTrombone.mp3 (843.0K)
これは、スタジオ録音だからね(後でお聴かせするのとは違うオケです)、上手くいくに決まっているけど、
生で聴いたら(吹く方はもっと)たまんないぜ。
曲が始まって7分ぐらい全く音を出さないで(口慣らしができない)、ソロで、一番高いハイB(べー。シのフラット)って。
今ぐらいのトロンボーンソロを聴くと、あたしゃ、その時点で「ブラボー!」と叫びたくなるよ。ホント。涙が出るぐらい感激する。
あと、ラベルは「オーケストラの魔術師」といわれたぐらいの、オーケストレーションの天才です。
ホルンとピッコロとチェレスタという楽器を組み合わせて、本当にオルガンのような音を出すのに成功しています。
かなり専門的だけど、興味のある方はウィキペディアに、詳細な説明が載っています。
勿論、こういう理屈が分からなくても一向に構わない。
聴いて、血湧き肉躍る。それがボレロです。
毎年お薦めしている、アバド指揮=ロンドン交響楽団の熱演。
最後にオーケストラのメンバーが興奮を抑えきれなくなって、叫ぶ奴。
もう、こうなったら、お聴かせしちゃいましょう。
ダウンロード Bolero.mp3 (13643.8K)
うーむ。何度聴いてもたまらん。これぞクラシックの名曲。永遠の芸術。
済みません。あまりにも曲想が違うので、ベートーベン交響曲第二番第四楽章は、明日必ず。
それから今夜(11月23日(金))NHKの「歌謡チャリティーコンサート」という番組に、
森麻季さんが出ますからね。お見逃しなく。
それでは、失礼をば。
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