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JIROの独断的日記
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2006年11月22日(水) 11月22日は「ボレロ」記念日

◆1928(昭和3)年(78年前)の今日、モーリス・ラベルの「ボレロ」が初演されました。

78年前というと、クラシック音楽の歴史の中では、割と最近のことです。

西洋音楽は大雑把に言って2000年の歴史があります。

その中で、グレゴリオ聖歌が現在でも演奏できる一番古いものらしいのです。

78年前まで、「ボレロ」の形式を思いつく人がいなかったのですね。

「ボレロ」はクラシックをあまり聴かない方でも好きな方がいらっしゃいます。

非常に単純化して言えば、最初から最後までスネアドラムが2小節から成るリズムを繰り返す中で、2種類のメロディーが交互に出てくる。

それを繰り返すだけです。

ただし、曲のはじめはピアニッシモ(非常に弱く)で始まり、一曲全体が大きなクレッシェンド(段々大きく)になり、最後は大興奮となります。

何度聴いても良いです。

これ、ラベルが書くまで、誰も思いつかなかったのが不思議な気がしますが、コロンブスの卵ですね。

◆今回、初めて音をアップします。

今まで、ボレロのことを何度書いたか分かりませんが、音楽を言葉で「説明」するほど空しいことはないです。

今回は、一部ですが、聴いていただきます。まず、メロディーAです。曲の冒頭、小太鼓のソロの後でフルートから始まります。ハ長調です。

エンピツをお読みの方、例によって恐縮ですが、ココログからお聴き下さい。
これは、簡単そうなんですが、フルートの最低音の「ド」が出てきます。これを朗々と鳴らすのは結構難しいのだそうです。

この後、同じメロディーをクラリネットがふきます。

そして、メロディーBがファゴットという木管の最低音域を担当する楽器で演奏されますが、ファゴットにとっては最高音域(殆ど)です。

ココログ

この二つのメロディーが、色々な管楽器で交互に演奏されるわけです。

皆、プロの方はどうか分かりませんが、大なり小なり緊張します。

しかし、例えば私はトランペットですが、真ん中の丁度吹きやすい音域なので、まだ良いです。


◆ボレロのトロンボーン

私は、一番最初にボレロについて書いたときから、トロンボーンソロの難しさについて述べています。

手前味噌で恐縮ですが、Google日本語版で、「ボレロ トロンボーン」を検索してみてください。

約26,500件の1番目に私の日記が表示されます。他のことはともかく、これだけは、ちょっと嬉しいのです。

それはさておき、

ボレロの演奏時間は、15分から16分ぐらいが普通ですが、トロンボーンの何が大変かというと、

「曲が始まってから8分間ぐらい全く音を出さず」、

「いきなりソロで」(ソロは皆同じですが)、

「最高音域のBフラット」から吹くのです!ちょっと間違えると一音低い音か、高い音が出てしまいます。

これです。

ココログ

怖いですよ。これは。

レコードなら取り直せるけど、コンサートでステージで吹くのは怖いよ。

ここまで最高音域から吹くとなると、どんな名人でも100%ということはないです。

私は、ボレロをプログラムに含むコンサートに行くときは、自分は聴く側なのに、いつも極度の緊張状態に陥ります。

そして、いざ、本番。トロンボーン・ソロが迫ると、文字通り冷汗をかくのです。決して誇張ではありません。

上手く行ったときは、これまた自分が吹いた訳じゃないのに、涙がこぼれそうになります。

トロンボーン奏者のこれまでの研鑽を考えてしまうのです。

練習なら吹けるのです。中学生の上手い子だって、休憩時間に遊びでなら吹ける子がいます。

しかし、プロはお金をお客から取って本番で上手く吹かなければならない。

そのプレッシャーがあっても上手く吹けるまで、練習を重ねてきたのです。

だから、泣けるのです(無論、他の楽器だって、プロは皆、そう言う世界です)。


◆クライマックス、興奮の極

ボレロは前述の通り2種類のメロディーだけからできていますが、終わりに近づくと、突如3度上のホ長調に転調します。

さすがは「オーケストラの魔術師」ラベルですね。上手いですね。
その手前から、スネアドラムは二台となります。

最後数小節は打楽器がまた、加わります。バスドラム(大太鼓)、ゴング(銅鑼(どら)です)がこれでもか、とばかりに音楽を盛り上げます。

ココログ

いやー、たまらんですね。コンサートで聴いていると、聴衆も興奮に身をよじります。

演奏家は勿論興奮はしてくるでしょうが、興奮しながらも冷静でないと、演奏が乱れます。

素人オーケストラがボレロを演ると、最後に興奮しすぎて楽器のコントロールがいい加減になってミストーンが増えたり、

或はテンポが乱れたりして、自滅することがあります。

プロのすごいところはどんなにお客が興奮するような演奏でも、演奏者は理性を保っているところです。

それが「常識」ですが、例外的名演があります。

以前もお薦めしました。アバド ロンドン交響楽団です。

クライマックスで、オーケストラの誰かが興奮を抑えきれなくなり、絶叫するのです。

普通、録音し直すところですが、アバドが「自然に出た声だからこれでいい」と言ったとか。希代の名演です。

ボレロのCDは無数にありますが、お薦めは、やっぱりこれでしょう。

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