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2006年01月13日(金) |
「バッハ 無伴奏チェロ組曲第1番-第3番(リコーダー編) フランス・ブリュッヘン」バッハあれこれ。 |
◆バッハの無伴奏チェロ組曲ってのがあるんです。
「バッハあれこれ」って書いちゃったけど、きりがないので、今日はできるだけ、チェロ組曲に話を絞ります。
バッハは音楽の父と云われています。
普通、バッハと云ったらヨハン・セバスチャン・バッハ(J.S.Bach)のことを言いますが、良く年表を見ると17世紀の人です。
日本なら江戸時代です。その前に音楽がなかった訳ではありません。
今でも記録(今とは様式が違うけれども楽譜の一種)が残っていて、演奏できる最古の音楽は「グレゴリオ聖歌」です。
これは、バッハよりも1,000年も前に書かれています。但しあまり面白くありません。
現在につながる、ドレミファソラシド(長調)とラシドレミファソラ(短調)で書いた音楽で、殆ど全てが傑作なのが、バッハです。
この時代の音楽はうるさいことを言うとクラシック(古典派)ではなくて、「バロック」と言います。まあ、それはいいです。
バッハは、ピアノ(クラヴィアという、ピアノの前身)には「平均率クラヴィーア曲集」、
バイオリンには、独奏(伴奏無し)のための「ソナタとパルティータ」、
そして、チェロには、6曲の「無伴奏チェロ組曲」を書きました。
この3つの楽器のいずれかのプロになろうとする人は、誠にご苦労様で、これらのバッハ作品を絶対に避けて通れません。
羨ましいというか、お気の毒様というか。
聴いている分には良いんですけどね。弾く側は大変ですよ。
ピアニストに話を聞くと、「バッハは嫌だ」って云うんですよ。
ショパンとかシューマンとか、超絶技巧のリストのほうが、テクニックは要るんだけど、そういう問題じゃないんだ、と。
バッハの方が余程難しい、誤魔化しようがない。演奏者の音楽的素養がはだかになってしまう、という怖さがあるのだそうです。
◆ブリュッヘンというのは、リコーダーの伝説的名手なんです。
ブリュッヘンという人は、今は、古楽器といって、現代の楽器ではなくて、バッハなどの時代の楽器、オリジナル楽器、
又はそのコピー(再現したもの)を使ったオーケストラを創設して、指揮者になっています。
ですが、元来は天才的リコーダー奏者でした。
バッハの音楽の面白いところは、どんな楽器で演奏してもやはりバッハだ、ということです。
つまり、音楽の「核」みたいなものです。どんな楽器で演奏してもそれなりに良いということは、
「音色」という要素が、バッハの場合は音楽の価値にあまり関係ない、ということですね。
ブリュッヘンについては、あとで、CD紹介します。
◆まずはチェロの名盤を。
この原稿を書くにあたって、迷ったのです。
やはり、まずチェロにより原曲を聴いてもらったほうが良いかな?と思ったのですが・・。
チェロを聞いてから、リコーダーを聴くと面白いことは面白いのですが、
一度に同じ曲で二つ買って聴いてみてください、とは書きにくいので・・・。
しかし、別に一度に買わなくても良いわけだから、チェロの方から行きます。
チェロの神様は、とっくの昔に亡くなったカザルスって人なんですけど、
神様すぎるので、皆さんも名前を聞いたことがあるとおもうのですが、
ヨーヨーマっていう、これはもう紛れもなく天才ですね。この人の演奏が良いでしょう。
初めにこういう上手い演奏を聴かないとダメです。
ヨー・ヨー・マ(友友 馬って書くのですな)は、1955年10月7日、パリ生まれの中国人。
両親とも中国人。
4歳でチェロを習い始めて(バイオリンが有名ですけど、子供用のサイズの楽器がチェロにもあるのです)、
6歳にとき、初めてリサイタルを開いたっていうから、もう、無茶苦茶ですな。
雲の上どころじゃないですね。成層圏を突き抜けてます。
弦楽器はですね。初めて2年目なんて、凡人だったら、まだ基礎技術の習得中、という段階です。
アメリカに移住して、ジュリアード音楽院というアメリカで一番難しい芸術大学を出て
(入学直後に、先生に「もう、教えることは何も無い」と言われたとか。)、
更にハーバードで哲学か何かを勉強して、卒業したのが、16歳です。嫌になってしまいますなあ。
他にも、チェロのソリストではロシアのミーシャ・マイスキーが滅茶苦茶上手い。
あとは日本大好きのロストロポービチとか、昔のシュタルケルとか、いるんですよ。名人は。
いるのですが、実は、チェロのソリストは、それほど「需要」がないんです。
何故かというと、チェロ協奏曲が、殆どないからです。
ドボルザーク、シューマン、サン・サーンス、ハイドン、ショスタコービッチ。まだありますけど。
その中で、90%はドボルザークなんですよ。演奏回数は。統計を調べた訳じゃないのですが。感覚的にそうなんです。
余談ですが、協奏曲ではないけれど、なんと、あの「ピアノの詩人」、ショパンが「チェロ・ソナタ」ってのを書いております。
個人的な感想では、「ショパン先生、やっぱりピアノだけにしといたほうが良かったですね。」ということです。
という次第ですので、チェロのソリストでは食えないのです。
逆に言うと、それでも食えているヨーヨーマなどが如何に上手いかってことです。
かれは、「バッハ:無伴奏チェロ組曲」を2回録音しています。2回目は1998年だそうですが、
私はまだ聴いていないので、できばえがわかりません。
一回目(1982年録音)で十分名演だと思います。
バッハ:無伴奏チェロ組曲(全曲): 演奏:ヨーヨー・マです。
無伴奏チェロ組曲は1番から6番までありまして、それぞれが、6曲から成り立っています。
従って、全部を聴いたら長いです。CD2枚組なんだから。
本当は、こう言うときに、iTunes Music Storeが良いのです。
1番のプレリュードと3番のブーレをまず、聴いてみてください、といえるのです。
実は、アメリカのiTunes Music Storeでは、このCDをそのようにダウンロードできるのです。
ところが、日本のiTunesは一体どういう魂胆なのか、多分クラシックに詳しい人がいないのでしょうね。
ヨーヨーマはあるのですが、どれも、ジャズのプレイヤーと共演したものなど、「お遊び」。
これから紹介するってのはひどいですよ。
ヨーヨーマなら、まず、「無伴奏チェロ組曲」か「ドボルザーク:チェロ協奏曲」から、というのが、普通の発想なのです。
しかし、残念ながら、日本の音楽配信サービスでは、ヨーヨーマはそういう扱いなので、CDを紹介するしかないのです。
◆無伴奏チェロ組曲をリコーダー(縦笛)で吹いたのがブリュッヘンです。
すっかり前置きが長くなってしまった。予想通りでした・・・。
大分前になりますが、何度か、リコーダーをバカにしてはいかん、という趣旨の文章を書きました。
リコーダー(縦笛)というのは、皆が考えているような、幼稚な楽器ではない。とか。
題名が既に怒ってますね。怖いですね。
その稿では、ミカラペトリというデンマーク生まれの美人リコーダー奏者のCDを紹介しています。
これは、嬉しいことに、「聴いてみたらとても良かった」というメールを頂きました。
それで、そのペトリさんのお師匠さんが、このブリュッヘンというおっさんです。
この人が何と、「無伴奏チェロ組曲」を移調しないでそのまま吹いてCDにしたのです。
これです。J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番-第3番(リコーダー編):フランス・ブリュッヘン。
EMIというメジャーなレーベルから出しているのですが、何せ地味な分野、というか、
日本人には「ああ、なんだ。縦笛かあ」という偏見があるんで、長いこと絶版だったのです。
それが復刻されました。Amazonには無いみたいです。
タワーレコードでは、2週間ぐらい前までクラシックCD売上げベストテンの真ん中あたりまで行きました。
リコーダーでベストテン入りってのは、珍しい。それぐらい、欲しい人が多かったのですね。
これは、1枚です。1番から3番まで。売れ行きを見て後半3曲を売るかどうか決めるつもりなのでしょう。
先に書いたペトリさんは、殆どソプラノ・リコーダーで吹いているのですが、
ブリュッヘンは、中学で習う(私の頃はそうでした)、アルト・リコーダーで演奏しています。
ソプラノはややもすると、ピコピコうるさいのですが、アルトはしっとり来ます。
ブリュッヘン先生、簡単そうに吹いてますが、難しいですよ。
リコーダーの普通の音域は2オクターブと1音しかないので、良く吹いたな、と思います。
それから、何の楽器でもそうですが、音の「跳躍」というのは、大変難しいのですが、これを見事にこなしています。
跳躍というのはですね。低い音から高い音、又は高い音から低い音、特にオクターブ以上、休み(休符)を置かずに突然変ることです。
隣り合わせの音、つまり、ドレミファ、と音を出すのは、どの楽器でも普通のことです。
しかし、跳ぶのは、嫌ですね。
ピアノですら、同じですよ。
テレビ(N響アワーとか)で有名なチャイコフスキーの協奏曲か何か、良くやりますから、見ていてご覧なさい。
かなり上手い人でも時々間違えますが、大抵今書いた、跳躍のところで間違えてます。
私の楽器、トランペットでは、過去に何度も書きましたが、不世出の名手、モーリスアンドレという人がいます。
天才です。そして、トランペット協奏曲といったら、ハイドンなんです。
この曲の第1楽章には2オクターブ近い跳躍があります。
30年ぐらい前に、モーリス・アンドレが来日して、大阪でハイドンを吹いたのをNHKで見ました。
なんと、この天才ですら、跳躍で失敗したですよ。逆に感動してしまいました。
それぐらい、「跳躍」は難しい、ということです。
それは、些末なことですが(どうも、マニアックになってしまう・・)、リコーダーの表現力、ということですね。
これを知っていただくためには、絶好の一枚ではないかと思われます。
長い文章を最後までお読みいただき、有難うございました。
2005年01月13日(木) NHKだけの問題ではない。他のテレビ局、新聞社も国家権力の介入を受けてるはずだ。
2004年01月13日(火) "Sense of proportion"(平衡感覚)ということ。
2003年01月13日(月) ディズニーランドで成人式ってのはギャグですなあ。