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JIROの独断的日記
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2002年12月23日(月) マイナス思考を正す、「認知療法」

世の中には、羨ましいほど楽天的な人がいる一方で、どうしても、考え方がマイナス方向に向いてしまう人がいる。それは、専門用語で「自動的否定思考」という。マイナス思考をしてしまう、心の癖がついてしまっているのである。

生まれつきの性格だから、どうしようもないと考えるのは間違いである。それを正す方法がある。「認知療法」という。うつ病の治療で、薬物療法や、電気ショック療法を施しても治らなかった人が、、医師の指導のもとで認知療法を始めたら、2ヶ月で劇的に改善した、というケースもあるほどだ。

認知療法は元来、うつ病の精神療法の一つとして米国で考案されたものだが、普通の人でも、どうも、いつもマイナス思考に陥ってしまい、自分でも困っているという人は、試してみる価値がある。

自動的否定思考に陥ってしまう人には事実の認知の仕方に問題がある。これを「認知の歪み」という。

「認知の歪み」には次に述べるような、いくつかのパターンがあり、認知療法ではまずこれらのパターンを覚えることから始まる。覚えられなければ、メモにしてもっていて、折に触れてちらっと眺めるだけでもずいぶん違う。

1.「全か無か」思考:物事を全か無か、白か黒か、という二分法で見てしまい、中間の部分、グレーの部分を考えに入れようとしない思考パターン。ちょっとでも失敗すると、「全てがお仕舞いだ」という風に考えてしまう。 完全主義がこの思考パターンを導きやすい。実際の日常は、いいところ6割、まずいところが3割、どちらともいえないところが1割という具合にあやふやな、ファジーな部分で成り立っている。

2.一般化のしすぎ: 一つか二つの事実を見て「すべてこうなんだ」と思い込む傾向。一度か二度起きたことが、この先永遠に起きるような気がしてしまうこと。

3.選択的抽出:うつ状態にあると自分の関心がある、特に悪いことばかりに目がいってしまいがちである。過去を振り返っても失敗したことばかり選んで思い出してしまい、身の回りで起きていることもトラブルばかりが目に入る。自分が悪いところだけをみている、ということを自覚できなくなってしまう。

4.マイナス思考:良いことが見えなくなるのみならず、何でもないことや、いいことまで悪い方、悪い方に捉えてしまう。

5.レッテル貼り:「一般化のしすぎ」や「選択的抽出」が極端になった状態。ちょっとした失敗体験をもとに、それが自分の本質であるかのように自分にレッテルを貼ること。「自分がダメな奴だ」というのが典型的なパターン。実際には成功した経験もあるのだが、それらは捨象されてしまう。

6.独断的推論(心の読みすぎ):僅かな根拠から、相手の心を勝手に推測し、事実とは違う、あるいは全く事実無根の結論を下してしまうこと。うつ状態でいると、誰かが自分の後ろでひそひそ話をしているだけで、「自分の悪口を言っているに違いない」と一方的に傷つき、結局全てが嫌になってしまう。この背景には「他者評価絶対主義」がある場合が多い。つまり、「他者の評価こそが自分の価値の全てを決めている」という極端に歪んだ認知。これに対して「普通の」態度は、他人の評価を受け入れつつ、自分で自らの良い点も認めていく、という、他者の評価と自己評価のいずれをも尊重する態度である。

7.拡大解釈と過小評価:自分の持つ様々な資質の中でも、悪いところばかりをことさら大きく重大なこととして捉え、逆に、自分の長所は小さく見積もってしまう。

8.感情的決め付け:「自分がこう感じているのだから、現実もそうであるに違いない。」と誤って思い込むこと。うつ状態にあると、冷静に考えればたいした事態ではなくても、「こんなに大変な思いをしているのだから、実際に大変な場面に直面しているのだ」と思い込み、打ちひしがれ、「取り返しのつかないこと」と思い込んでしまう。確かにうつ状態だと、ほんの些細な失敗でも、「一巻の終わり」「絶体絶命」のように感じてしまうが、客観的には大した事が起きているわけではない。

9.「〜すべき、せねばならない」思考:何をするにおいても、「こうすべきだ」「常にこうあらねばならない」という厳しい基準を設定してしまう思考パターン。「常に明るく振舞っていなければならない」などというのが典型的な例。結局自分を追い詰め、窮地に立ってしまう。 こういう厳しい基準を常に自らに課していては、大抵のことは失敗に思えてしまい、自己嫌悪に陥ってしまう。

10.自己関連付け:身の回りで起きる良くない出来事を何でもかんでも自分の責任だと思ってしまうこと。

勿論全ての項目に当てはまるという人は少ないだろうが、いくつかの項目に関しては自分も該当するのではないだろうか。認知療法では、このような歪んだ自動思考をより客観的な冷静な考え方に変えていく「訓練」をするのである。で、その手法の一つが

「書く」ことである。例えばある朝、会社に出社し、上司に挨拶したのに、機嫌の悪そうな声しか返ってこなかった。そこで、普段なら平気な人でもうつ状態のときは、「自分は上司に嫌われているのではないか」「何か重大な失敗をしたのではないか」と思い込んでしまう。

そういう時に、「認知の歪み」を自覚してを修正するのである。「自分は上司に嫌われているのではないか」という思考パターンは上に挙げた項目の6、「独断的推論(心の読みすぎ)」に当たるのではないか、と。何故なら、事実はわからないからだ。「その上司はたまたまその日の朝に奥さんと言い争いをして機嫌が悪かっただけかもしれない。」と考えることも可能である。あるいは、落ち込んでしまった人は3.「選択的抽出」に陥っているかもしれない。その上司はかつて自分の仕事を評価してくれたことがあったのに、うつ状態だと、悪いことばかり、つまり叱られたことばかりが思い出されてしまう。

認知療法ではこのように自分が習慣的に陥ってしまった否定的な自動思考を(全てでなくてよいのですが)日記風に書き出し、それは冷静な立場からは別の見方が出来ないかということをその横に書き出していくという作業を行う。最初は面倒だけれども、幸いパソコンを利用すれば、そのような対照表は簡単に作ることが出来る。表を作る気力がないのであれば、気持ちが落ち込んだときに、「認知の歪みのパターン」を書いたメモを時々見て、「ああ、いまの自分は、このパターンにあてはまっているな」と自覚するだけでも、効果がある。


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