OH GREAT RABI RABI

沈める寺
2002年03月29日(金)





沈める寺





涸れてゆく
みずうみの淵にかかとをのせて
わたしは水底を見おろした。

(とりはしんじてくれんよう、)

腕に抱えた幾十もの塔。
そのひとつを摘み
しずかに、水に沈める。

ほそい円錐が
粉砂のうえ、水草のすきまに
着床するのを見届けて
ふたつめの塔を投水する。

(みずのなかはみえんよう
つかるとしんでしまうよう)

沈んでゆく円錐は
水底の円錐にゆらりと被さる、
わたしは次の塔を手にする。

(みっつ、よっつ、
いつつ、)

(だあれもみとらん、)

この土地には
喉を射られた鳥が棲むという。
彼が飛ぶと音が死ぬ、
最後の輝きのように
尾が艶やかにたなびく。

(むっつ、
ななつ、)

(うそゆうたらいかんよう、)

(とりが、)

しんきろう という
そこなしの塔。
尖端を重ねて
何処までも高く出来る、

(やっつ、

ここのつ、)

(みみ つまった)

(ちやう それは、)

腕のなかの塔が無くなれば
また集めにゆく、
塔はいつか水面を突きぬける、
わたしは塔を重ねつづける、
そのてっぺんに、鳥を

(おとはもうすぐしぬよ。)

つかまえるまで、

わたしは塔を重ねつづけた。














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