スカーレットの心のつぶやき
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2006年10月21日(土) ある男と女の話

一人の男と女が居た。

彼らは恋人同士だった。

男はそれまで恋愛経験が豊かで

出会いや別れを女よりは数多く経験していた。

でも、男は別れた女たちとトラブルを起こしたこともなく

数年後に偶然出会うことがあったとしても

懐かしさで相手を思う、そんな男だった。

一方、女はうぶで恋愛経験も少なく

この男と出会って初めて恋をしたと思った。

二人は一ヶ月に二回位の割合で会った。

出会った頃の二人は

喫茶店で話しをするだけで幸せな気分になれた。

でも、回を重ねるうちに

男も女もお互いを求めるようになっていった。

プラトニックラブでは物足らなくなったのだ。

そして、ひと月に二回の逢瀬によって

二人の恋愛の濃さは増していった。

出会って半年くらい経った時、

女は男と別れたいと思うようになった。

嫌いになったわけではない。

でも、これ以上付き合ってもお互いに苦しくなるだけだ。

会っている間だけの関係で済ませばそれはそれで良い。

しかし、男がそれ以上のものを女に求めるようになったとき

自分自身に男が思うほどの強い気持ちがないとことに気づいたのだ。

女は男に別れを告げた。

男は別れたくないと言った。

お互いの心は少しずつ違うレールを走るようになっていた。

男は別れが来ることに気づいてはいたけれど

女を愛する気持ちを消せなかった。

付き合いはじめて3年、

男の気持ちは付き合いはじめた頃と同じ、

否、それ以上のものになっていった。

女は次第に男がわずらわしくなっていった。

しかし、その反面自分に自信を覚えるようになっていった。

それまで恋愛経験もなく、自分は持てない女だと思い込んでいたが

案外そうでもなく、

私って素敵な女なのだという気持ちが大きくなっていった。

そういう気持ちになって以来、

女は自分の中の優越感を満たすために

男と別れるのは損だと思うようになった。

そして、女は自分が会いたくなった時だけ

男に連絡を取り会うという関係を続けて行った。

ある日、男が自分の生まれ故郷へ一緒に行ってほしいと言った。

女は男が生まれた場所へ行きたいと思いはしなかったが

連休に行く所もこれと言ってないし

暇つぶしに良いかなと思い「良いわ」と答えた。

そんな約束をしてから二ヶ月が経った。

その間、男からの連絡が途絶えた。

女は「今日はきっと連絡してくるに違いない」と思いながら

それでも少しどうしたのかな?と思う気持ちで待っていた。

女は自分から男に連絡をする気にはなれない。

でも、男と電話で話すのは別に嫌ではない。

だから、男からの連絡を待っていたのだ。

男はその二ヶ月の間、色々なことを考えていた。

自分は女にとってどんな存在なのか?

薄々は気づいていたがそれを認めたくなかった。

しかし、いずれは女とは別れないといけない。

このままでは自分が駄目になってしまう。

今が別れる潮時かもしれない。

そんなことを思いながら

女から借りていた本が家にあるのに気づき返そうと思った。

宅急便で送ろうと思い女に電話をかけた。

自分の生まれ故郷へ女と行こうという気持ちは消えかかっていた。

女は男からの電話がかかると珍しくすぐに電話を取った。

男から本を送るという話を聞いたが

それには答えず、次のように言った。

「あなたが前に言っていたあなたの故郷へ行っても良いよ」

「今の私にはお金がないからあなたが出してくれたら行っても良いよ」

そう言って女は電話を切った。

男は女のその言葉に唖然としてしばらくの間動けなかった。

・・・・・・?

これはどういうことか男にもはっきり分かった。

結局、女は男の気持ちを大事にするのではなく

男を金蔓にしていただけなのだ。

そういえば会った時にかかる費用は皆男が払っていた。

女ははじめの頃こそ済まなさそうな顔をしていたが

段々と平気になり最近は当然という顔をし始めていた。

女は財布を持たずに会いに来て男にお金を貸してほしいと言った。

男は女のためなら少々のお金は惜しくなかった。

返して欲しいとも思っていなかった。

しかし、この電話の後、それまでの女の気持ちが手に取るように分かり、

腹は立たないが、自分自身がとても馬鹿に思えた。

自分は一体何をしていたのだろう?

女は自分のことを都合の良い男としてしか考えていなかったのだ。

そう考えたら今までのことが全て辻褄が合う。

ハハハ・・・・男は笑いがこみ上げてくるのを止められなかった。

もう女とはこれで終わりにしよう。

男はそう思うとなぜか気持ちが楽になった。

男は携帯に登録していた女の電話番号とアドレスを削除した。

外へ出てみると秋晴れの青い空は雲ひとつなかった。


スカーレット