スカーレットの心のつぶやき
つぶやき 目次|過去|未来
夫への償いをしなくてはいけないと思いながら
それでもまだ私は夫に対して
素直に心を開くことが出来なかった。
夫の涙を見た時に
あのHが流した涙を思い出した。
博多空港でHに私の気持を話した時に見せた
あのHの涙の意味を・・・
そして今回の夫の涙の意味を・・・
素直に心を開くことの出来ない意味を・・・
Hや夫やRへの私の心を
誰にも説明できなかったししようとも思わなかった。
ただ、あの頃の私には生きる目的がなかったのだ。
確かに夫はとても良い人で
私のことを愛していてくれたと思う。
でも、私はそだけでは満足しなかった。
私だけを思っていてくれる証拠が欲しかったのかもしれない。
なんと幼い私。
年齢は30歳を越えていたけれど
私の精神年齢は幼児のままだったのだ。
自殺をしてそれでも命を失うことのなかった私は
生き運が強いというのだろうか?
生きていかなければいけないと
神様が教えてくれたのだろうか?
もう二度と死ねないと思った。
でも、生きる意味を見つけることは出来なかった。
そんな私に大きな転機がやってきた。
私はICUからHCU、
そして個室、大部屋と3ヶ月かけて回復していった。
その間私は母と共に生きていた。
母は私の入院している部屋にいつも居てくれた。
家には戻らずずっと私の側に居てくれた。
母はどんなにか辛かっただろうと思う。
あの頃の母にはわが子の命が助かったことだけが
唯一、救いだったのかもしれない。
そんな母との心の絆はそれまでに比べて
とても大きなものになっていった。
退院して実家に戻って体を休めていた私は、
あの夏、忘れもしないあの夏、
近くの温泉センターで
大衆演劇をいうものに初めて出会った。
女形をしても美しいし
男役をしたら他に比べようもないくらい
男らしいあの京乃助座長と出会ったのだ。
言葉では上手く言えないけれど
あの大衆演劇の世界は素晴らしいものだった。
あの京乃助座長に回り逢ったことで
私は生きる意味を見つけたと言っても
大げさではないと思える。
あの座長に魅せられ、
私の心は傾いて行ったのだ。
なんということか!
こんな世界があったのか!
全てが目新しく刺激的だった。
私は夢中になった。
生きていて良かったと思った。
毎日芝居を見に行った。
何もかも忘れて大衆演劇の世界に没頭していった。
私には夫は見えなかった。
私の目に見えるのは
RでもなくHでもなく夫でもなく
あの素晴らしい座長だったのだ。
こうして私の体に命の炎が再び燃え上がった。
スカーレット
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