「火ィ、貸してよ」 「ぁあ?」 千石は亜久津に背を向けたまま、「寄越せ」と手を差し出したが、亜久津は眉を顰めた。 「テメェ…何につかうんだよ」 「何って、火をつけるのに」 「だから何に」 「…………何でもいいじゃん、ね、火ィ貸してよ」 舌打ちとほぼ同時に放られたライターは綺麗に弧を描いて千石の手のひらへと滑り落ちた。 カチリ、シュボッ 風に揺らめく青と赤の炎。 「あのさぁ、あっくん、」 千石はライターの炎をつけたまま、亜久津のほうを振り返った。 そして髪の毛すれすれまで、炎を近づけた。 「焼身自殺、って目の前でやられたらすげー記憶にのこると思わない?」 その瞬間の亜久津のしかめっ面をみて、千石は満足そうに笑った。 「自殺なんかしないよ、あの世で公務員になんてなりたくないもん」 -- げいのないねこた…だめねこた……。
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