「あ」 「ンだよ千石…さっさとしないと授業おくれんぞー?」 聞こえた「声」に足が止まる。 思わず後ろを振り返るが、いるはずもない。 隣で欠席調べを抱えた学級委員が、誰もいないというのに突然声をあげて振り返った千石を不思議そうに見た。 なにが原因か、きっかけかは知らないけれど 「……亜久津帰る気だ……」 どこにいても、 お互いが一定の距離にいるならば。 「俺、気分悪くて帰るから!伝言よろしくッ!」 「あッコラまて千石!」 学級委員が、走り出す千石の後ろ姿に手を伸ばしたが、その手は千石に触れずに空を切る。 そして彼は「しょうがない」、と溜め息をついた。 ある日突然。 お互いが一定の距離にいれば、相手の心が聞こえるように、なった。 「ああもうクソッなんでこんな階段だらけなのかなこの学校ッ!」 千石はそう言いながら階段をかけおりる。 千石はもうあと少しで昇降口、そう思った途端に亜久津が走り出したのが判った。 前は思いが伝われば良いと思っていたけれど、 今は思えば思う程、相手に心が伝わってしまうから困る。 伝われば伝わる程、逃げられる。 お互いに伝わってくるのは 鮮明な意識も曖昧な気持ちもごちゃまぜ。 嫌だとか嬉しいとか、見える景色だとか、見えるもの感じるもの全てだとか。 同じ人間になったような、感覚だ。 それが他人の事で、それを共有している、というのにはどうにも慣れない。 今、千石に伝わってくるのは 会いたくない、追いかけてくるな、うざいなどの感情と、亜久津の見ている景色。 亜久津にも千石と同じように、 会いたい、逃げないで、待ってなどの感情と、彼の見ている景色。 その限り無い違和感に千石は面白味を見い出そうとしているが、亜久津がうんざりしているのがわかる。 「亜久津ッ!」 声と同時に千石が曲り角をまがったのがわかった。 そして目に入った自分の後ろ姿が見えるというのが、亜久津は気持ち悪く感じた。 駄目だ、逃げても無駄だ。 亜久津の諦めの声が聞こえて、千石はほっとしてそのまま歩調を緩めた。その先で亜久津は立ち止まり、振り返った。 「…ったく…気持ち悪ィ……」 「しょうがないじゃん、原因なんかわかんないんだし」 気が狂いそうだ、という声に、千石は困ったような表情を浮かべた。 「一緒に帰ろ?」 「下心丸見え」 「しょうがないじゃない、あっくんと心と心でつうじあってるから〜v」 「あっくん言うな!」 -- 途中ってかごめん全然書けなかった(私信) そもそも更新ここばっかですいません…。 途中までしか書けない病(どんな病だよ)なんです今…
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