どこまで逃げられるかなんて考えたことは無い。 「どこ行くんだよ」 「どっかとおく。」 「……金は」 「あるよ」 「…あっそ…」 ガタンゴトン、と電車は走って行く。 乗客の気持ちを知らず、乗客の行く先も知らず、決められた線路を決められた時間に走る。 ここは酷く静かだ。 人が居ないというだけではない。 ここは確かに街の中なのに、どこかの駅に止まってしまうまで、まるで別世界だ。 千石は亜久津の肩に頭をのせ、ぼんやりと前をみながら言った。向の窓の外の景色は早くも無く遅くも無く過ぎ去って行く。 亜久津は眠っているかのように目を閉じて黙っている。 だが不思議とこの沈黙は心地良い。 お互い、深い干渉をせずに少しの接点だけでつながっているようだ、と千石は思った。 「………どこ行きたい……?」 「…別に…ねぇよ」 「……じゃあとりあえず終点まで行こう」 「…あぁ、」 基本的に亜久津の返事は曖昧で、答では無い。 時々、まるで相手に次の言葉を催促するような喋り方をする。 それがなんだか甘えられているような錯角を生み出し、亜久津の意図する所では無いが、その感覚が千石は好きだった。 終点は、寂れた街だった。 都会の外れ、とても静かだ。 「…日、暮れかけれんじゃねぇか」 「どっか泊まる所探そうか」 君の手を引いて歩く。 「…泊まんの?」 「帰る頃には電車無くなるよ」 「…………適当に安い所な」 「ビジネスホテル?」 「あーわかんねぇ」 「ラブホ?」 「死ね」 「なにさー…しょうがない、このキヨたんが全部奢ってあげるから安心しなさい」 「何様だ」 まるで逃避行みたいに。 「清純様v」 「ばっかじゃねぇの」 「…その言い方可愛い……」 「ッ!死ね!」 知らない街を2人で手を繋いで。 「………………………ここでいいや」 「…高いんじゃねぇ?」 「だいじょぶ、金ならある」 「ケッ…金持ちが」 「亜久津だってそうじゃない」 「そうでもねぇよ」 「そうだよ」 「………まぁいいけど……」 「すいませーん、一泊したいんですけどー」 少しだけ、逃げるように。 「ふぃー予約制じゃなくてよかったーv」 「全くだな」 「…あ、お風呂はねー温泉あるってサ」 「あっそ」 「一緒に入ろうねvあっくん」 「は?テメェ一人で入って来い」 「やだよ、つまんない。それにねー夜は貸しきりみたいなもんだって、今日団体客とか丁度帰ったところで俺等となんか一家族しか居ないんだって」 「……お前さぁ」 「何」 「…疲れねぇの?」 「……疲れないよ」 「…疲れたから俺はもう寝る…」 「何言ってんの!夜はこれから!!」 「一人で言ってろ…」 「……寝ないでって、亜久津」 -- 電車にのって行ける所まで行く旅をしたい。一人でもいい、誰かとでもいい。 むしろ旅に出たい。 つうかいつもいつも中途半端なもんですいませんねー…私の思いつくままに書くので。基本は一発勝負だ!(ドン★/遊戯王…?)
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