公園のベンチに座っている亜久津を見かけて、越前は立ち止まった。 「…なにしてんの」 「……テメェに関係あんのか?」 「別に、ないけど」 顔は見えない、後ろ姿だけ。だがお互いに相手が誰だかはわかっている。越前はそれがなんだか変な感覚だ、と思った。 亜久津は煙草の煙に日をつけた。煙が空へと登っていく。 「…………お前、俺の視界からさっさと失せろ、邪魔だ」 「…何そんな怒ってンの、アンタ」 「うるさい」 「………いつものあの人はどうしたの?」 「誰だ」 「…ラッキー千石」 「……知らねぇよ……」 「…じゃあアンタ今一人なんだ?」 四問目の質問に、痺れを切らしたように亜久津は振り返って越前を睨んだ。 「………お前なんなんだ、さっきから」 「……理由が欲しいの?」 「は?」 越前が距離を縮めて亜久津の傍に来たので、位置的に、亜久津が越前を見上げる形になった。 「………あんたの事気に入ったんだよね、俺」 「…………俺はお前なんざツラも見たくねぇ」 視線がかち合い、亜久津は越前をさらに睨み付けると、そう言って前を向いた。越前は軽い溜め息をついた。 「…ふーん……別に、いいけどね…俺は、」 「越前君」 越前の言葉を遮って、横から千石の声が聞こえた。千石は走ってきたのか、息を切らしている。 「………何ですか」 「俺のモンに手ェ出さないでくんない?遊び相手なら他の子あげるから、さ」 「…テメェ、何言ってんだコラ、千石…」 「亜久津も、………越前君に近付かないでよ」 「…嫌ですよ、オレ。指図されんの嫌いですし」 「……亜久津みたいな事言わないで…帰って」 「………しょうがないっスね、帰ればいいんでしょ、千石さん」 「ばいばい、越前君、さて……亜久津」 「…………50分」 亜久津は真正面にある公園の時計を見て言った。 「へ?」 「あと一分遅かったらテメェ一人で映画観賞だったな、……行くぞ」 「……うん、遅くなってごめんね」 「反省してねぇくせに」 「だって亜久津は許してくれるでしょ?」 「…………ばーか」 -- いや、ちょっとデートの約束を。 しかしリョーマさんってリョーマと書くべきなのか、それとも越前と書くべきなのかで迷う。
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