母のタイムスリップ日記
DiaryINDEX|past|will
午後 母のところに出向いた。 母は ホールで入所者二人並んで座っていた。 二人手を握っているように見えたが 錯覚だった。 でも 手を握っているかのような雰囲気が漂っていた。 母より6歳年下の女性である。
耳を澄ますとその方 美空ひばりの「川の流れのように」を口ずさんでいた。母と一緒に唄う歌は かなり古いものが多いので ずいぶん新しい歌をご存知なのだなと驚いた。 発病は 母の方がずっと早いと思うが 母は早い時期に新しい歌は唄えなくなっていた。 そのかわり 絵を描いたり 縫い物をしたり 編み物をしたりは出来ていた。人に拠って 記憶の留まりかたが違うのだなぁ〜と感じた。
唄っている方は 優しい顔をしておいでだった。 そして目には涙が光っており手の甲で涙を拭いておられた。 歌詞から思いを想像なさっただろうことが伝わってきた。 母も歌いながら涙する事があったから。
この方は 母よりも記憶の喪失感を強く感じている。 母もそういう時期があったので思いが伝わってくる。 時折「駄目になってしまった」と吐露なさる時があるのだ。 今の母は そういう思いを言葉にすることは出来ない。
どうしてあげる事も出来ないけれど 共に時間をすごして安堵して戴くくらいなら出来るのだろうか?
以前ご主人が 「全く困ったものです。気が強くて…」と話されてたけれど今 そういった言葉は消えて とてもいとおしく思っておいでの様子なのである。
認知症と言う病のなせる行動に振り回されているころは 双方が辛い思いをする。
今日の母は 良く笑った。声を立てて 良く笑った。 口をあんぐりあけると 食べかすがいっぱい見えた。 ホールに職員が戻る気配を感じたので ゆっくりと母を居室に誘導し歯磨きそしてトイレ誘導。 昨日 2度排泄があったということは報告を受けたが 今日も追加があった。
居室で母と暫く遊んだ。 ついでに伸びた爪を切った。 切る前に「痛い」と言うけれど 切った後で「痛くない」と…。 冗談が帰ってくるような日だった。
入所者が 順繰りに入浴していたので 一番最後に母を入浴させようと思った。 先週の土曜日の入浴のときは 大騒ぎだった。 今日は 果たしてどうなるか? 私の気持ちひとつなんだろうけれど…。
おやつも済み 入所者の入浴も一段落した所で職員にお願いした。 荷物を持って 脱衣室に移動。 騒ぐ事もなく るんるん気分の母。 浴室用の椅子に座ってもらい 両足を大きな洗面器に入れた。 それから ゆっくりとシャワーを浴びて 体を洗った。 不安そうなのだけれど「おかちゃん」で留まってくれていた。 その後洗髪。 今日は 成功。 危ない時は ほっぺたをくっつけて「堪忍ね」と謝った。 母は仕方ないように頷いて我慢してくれた。
先週入浴できたので 感覚が残っているだろうと思った。 湯船に入る時は少してこずった。 前回 強行突破風にしたので 今回は焦りながらもゆっくりと説明をして…母の動きにあわせチャンスを狙った。 騒がずに 無事に湯船に入った時は これでもう終わったも同然と安堵した。
が 油断大敵火がぼうぼう…。 お湯を抜いて浴槽から出る段になって 母 怖がって動かなくなった。 ひざを曲げてもらおうとしても「痛い」とひざを曲げない。 痛いのではなくて 怖いのだが…言えないのだろう。 前回は お湯のあるうちに浮力を使ってひざを曲げてもらったのだ。 体をオイルの強い石鹸で洗ったので 体もすべる。 そこで 手ぬぐいの登場。 手ぬぐいを肩にかけて 滑らないように工夫して抱き上げた。 足が着いて 体を起こし 腰もしっかりしているのを確認してから母の手を手すりに誘導。 ここで初めて湯船に自力で立てた。
それからは 順調だった。 体を拭いて脱衣室に移動した。 母は 再度体を拭いている私の腕をそうっと撫でてくれた。 今日は 合格かな?
服を着て ホールに出たら夕食が始まっていた。 ちょっとのんびりしすぎたかな? でも 浴室もお掃除して片付けたから 勘弁してもらおうっと♪
居室で頭を乾かして 食卓に着いた。 ここで そうっと施設を後にした。
|