母のタイムスリップ日記
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今朝は 割合涼しかった。 今日なら 母の体力も激しく消耗する事はないだろうと思い施設に向かった。何しろ24日に面会してそれからは行っていないのだ。 今週は こちらのスケジュールが立て込んでいて少しくたびれていて 気になりながら ちょっと動きが鈍くなっていた。
母のニコニコ笑顔に こちらの後ろめたい気持ちが多少救われた感じだ。 しかし ニコニコ笑顔は病の進行をも意味している。
ホールから居室に入った時 初めて入る部屋のような反応をした。 「あら この鶴はいいわね。この長さも…」と吊ってある千羽鶴をいとおしそうに触れていた。 こういう様子を見ていると 母の時間が途切れているのだと改めて痛感する。この感覚が 初期の頃にはつかめなかった。
「夕方まで 出かけますので昼食 夕食はいりません」と申し出て我が家に向かった。バスも折り良くノンステップバスで母の足取りも軽い。 久々の外の空気は 母にも心地よいようであった。
曇り空なので ひとつ手前でバスを降りて歩いた。 通過するバスの中に子供の姿を見つけた母は 手を振った。 お母さんとおばあちゃんが子供さんに 手を振っているよと教えてらしく手を振り返してくれた。 バスが信号停止だったのでこちらが先に進み またバスが追いつき 更に手を振ってくれた。母もとても嬉しそうに手を振り返す。 「知っている人かしら…」と母。 「知らない人だけれど ○ちゃんが可愛いから手を振ってくれたんだよきっと♪」と言うと「そうかぁ〜」だって。
時間のゆとりが在ると ゆっくりスーパーに立ち寄る気になる。 ショーケースの出来合いのお弁当やお惣菜をゆっくり見て回る。 お寿司のところで「ほら」と言ったら「うん 学校の…出かける時の…」と言う。 「お寿司」と言う単語が出ないのだ。 でも お寿司は 学校の遠足の時に持って行くものね…。 連想できるだけでもOKだよ。。。 「お寿司ね」と言うと「そうだ お寿司だ」とオウム返し。
野菜とお魚をゲット。 鮮魚コーナーに 新秋刀魚が並んでいた。今年は豊漁なのだろう秋刀魚もお手頃価格。 奮発してお刺身に出来そうな物を買った。 「これは いきがいいねぇ〜 美味しそうだ♪」と言う。 施設内で過ごしている時は 言葉の語彙も限られてくる。 こうやって 外に出てみるとやっぱり意味のある言葉が出てくる。 この所 歩行リハビリ中心で 賑やかな場所へ連れ出す事が少なくなっていた事に気が付いた。
再びバスに乗り込み 家に向かう。 「あんたの荷物 いっぱい」と母。「大丈夫 力持ちだから…」「うん」
家に入っても特に驚くでもなく 当たり前のように母の定位置に座った。 タオルで手を拭き 汗を拭いて…。 とりあえず紫蘇ジュースで水分補給。 「美味しいよ」と繰り返す母。
昼食の支度をする。 母には 大根を下ろして貰った。 ちゃんとできた。でも 後半「あなたも疲れるでしょ」の母の声。 これは 逆説的で 母自身が嫌になっている時の信号だ。 残りの小さくなった大根のかけらを受け取りこれ以上擦れない所で 母の口に大根をほおり込んだ。母は笑って食べていた。
昨夜の残りの天麩羅をレンジでチン。モズクの酢の物となすの漬物 そしてうな丼。お吸い物はお茶で…。 夫と3人で食卓を囲んだ。 しかし 母は てんぷらを箸で擦る。おろし大根やお醤油をかけてあげても 一向に口に運ばない。 夫は心配して「食べないよ。ほら これが天麩羅」と言葉を掛けるが通じない。 「食べ始めは いつもこんなものなのよ」と言いながら一口二口と介助した。ようやく 母の手で食べ始めた。 その時には 夫の食事は後半である。 食事時の遊びが増えてきている。でも 食べない訳じゃない。ちょっとの介助で動作を思い出せる。 食べ方を忘れる…少しの介助でも思い出せなくなる時が来るのだろうか? 個々に症状は違ってくるが…母の場合はどうなっていくんだろう…。 時間はかかったが 完食。 夫の友人から桃が届いているので ご飯は少なめにしておいた。 施設でのご飯の量も大分少ないので それも考慮した。 しかし 炊き立てのご飯は おいしい様子だった。
食後 桃を出す。 大きな桃。 ♪桃から生まれた桃太郎 ♪と唄うと母はその続きを唄った。 「ほんとに大きな桃だね」と。 硬い種類の桃なので ナイフでくし型に切ってから 母に手渡して「皮を剥いて頂戴」と御願いした。 母は迷う事なく 皮をむけた。調子が良いと判断できたので母の食べる分は母に剥いて貰った。 「おいしい」と食べ始めた。「お腹 大丈夫?」と聞くと「ちゃんと入る」と言う。言葉は通じている。。。
その後 筆ペンで書道を試みた。 始めは名前。母の名前をお手本に書いて新しい紙を渡すとおかしな書き方をした。おかしいという事は母も気が付いているらしい。こちらは何も指摘せずに「上手だ」と言うと「そんな事はない。どこか変だ」と反応した。 間違えた紙を新規のに取り替えると今度は間違えずに書けた。 「残暑」「初秋」等とおてほんを示したが これは一度では無理だった。 気分転換を図ってトイレ誘導をしたら 「出来ないんだ」「もう終わっていい」と言う。 明らかにストレス。でもトイレを出て机に向かったら 今度は上手に書けた。ちょっとのストレスでも刺激になっているんだなぁ〜。 あまり 調子にのらずに切り上げた。
此処でおやつタイム。 メロンをカット。戴き物の北海道のメロン。 「美味しい」とこれは自力で食べていた。
明治 大正時代の美人画をプリントアウトしておいたので母に見せた。 すると 余白に自分の名前を書き出した。 母の頭はまだ書道中なんだ。。。 少し話をしながらペンを片付けたら じっと絵を見つめていた。 2重橋の写真をみて「宮城か?」と言っていた。 夕方近くになり 少し不穏になった。 トイレ誘導を忘れたせいもあるかもしれない。 パンツを替えたら 落ち着いて来た。 しかし「おかちゃんが待っているんだ」と言い出す。 そのくせ 私の事も「おかちゃん」と呼んでいるのだが…。 同じおかちゃんでも違うという事だけは 判る。イントネーションと言った違いではない。自分の母親を指す時は 前後に必ず言葉が付くような気がする。。不思議な感覚である。
夕食の支度を途中までして 母を入浴させる。 凄いリラックスしているのが見て取れた。
風呂上りに水を飲んでもらっている間に 一気に秋刀魚を焼き上げた。 夕方の大根下ろしは やる気が足らなかった。だから3分の1のみ母の仕事。 シジミの味噌汁 冷奴 なすの味噌炒め 秋刀魚の塩焼き 煮豆 トマトサラダ。 秋刀魚の食べ方が出来なかった。考えれば骨付きの魚なんて あまり施設では出ないなぁ〜。 ちょっと前までは出来ていたんだけれど…。 秋刀魚を少しづつ 口に運んであげたら 後半は自力で食べた。 夕食も完食。
食後のお茶を飲んだ後 洗面所で歯磨き。 入れ歯を外して 歯茎にブラシを当てると痛がった。 やはり 歯磨きや口すすぎはなぁ〜。痛い所は麺棒や脱脂綿でそうっと拭くしかないかな?
夫に車を出してもらって施設に送って行く。 久しぶりに母と家で過ごした。 やっぱり 足のの不確かさが出てきている。 車の運転 考えるべき所に来ているような気がする。
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