母のタイムスリップ日記
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夫は 30年以上前 片道切符で欧州に旅立った。 欧州で 1年以上の時を過ごして 戻ってきた。 私と出会う前のお話である。
以来 ひたすら走り続けて来た夫。 あの頃の 夢と希望と希望 何処に置き忘れてきたのだろう…。
今 夫を見つめる時 くたびれた姿が痛々しい。 考える気力すら失いつつあるように見える。 じゃ 自分はどうだ…と言われれば 似たようなものかもしれないのだが。 ここは 先ず夫の事。
畑を借りたのも夫鋭気を養えれば…と思っての事だった。 しかし 畑に立ち向かっていく気力は見えず 計画は失敗。
どんな事に興味を示すかと あれこれ考えてきた。 娘とも時折 話しこんでいた。
娘が「パリに出かけたいな」と言った事がきっかけに「夫をヨーロッパに送り出してみようか?」と言う案が浮上した。 経済状態は 誠に厳しいが それより夫の気力が大事だ。
家の事会社の事から離れるには やっぱり海外だろう。 僅かな旅費を準備して送り出す提案をしてみる事に決めた。
今日 娘と二人で「お父さん ちょっと話があるんだけれど…」と切り出した。 夫は 何か文句を言われるのでは…と身構え始めた。
「あのね 家の事会社の事はひとまず置いて ヨーロッパに出かけてみない?勿論 一人旅よ。 若い頃と今では 大分受け止め方が違ってきていると思うのよ。何がどう変わって来たのか 見てきたら良いのではと思うのよ。旅費は準備するから…」と話し始めた。 夫の顔がみるみる内に緩んで行くのが見て取れた。
「1年と言うのは きっともう無理と思うけれど 半月からひと月で…。 どうかしらね?」
夫の気持ちが動き始めた。 「但し 準備は自分でするのよ。計画もね。企画立案 実行はお父さんよ」
「ん〜 パリは変わらないだろう。。。フランス あ デンマークにも行きたいな。あの叔父さん まだ生きているかな?」と思い出を辿り始めた。 「凱旋門を見たいとは思わないよ」 「そりゃ 娘と一緒だわ」 「あのね。お父さんが出かけて戻ったら その後 娘が一人旅するの」 「その後 ヨーロッパ感の報告会ってどうかな?」 夫はニヤニヤしていた。
「いいかもしれない。旅費は自分で準備するよ」 「会社を開けるのは 影響の少ない12月ごろかな?」 「いや 12月は結構日本からの海外旅行客が多い。かといってヨーロッパの夏はみんなバカンスだ。行くとしたら11月かな?」
娘がノートパソコンを持ち出し「11月なら もう旅券の手配した方がいいよ」と提案。
この計画が実行できるかは夫次第だ。 どうなるでしょうね? でも この提案に夫の気持ちが動いたのは間違いない。 久々に緊張の取れた表情だ。
「がんばれ! 今のうち。 60までは まだ少し余裕がある。この時を逃がしたら 感覚がまた違って来るんだからね。今だよ今」と娘と口を揃えて後押しした。
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