母のタイムスリップ日記
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施設暮らしが4年目に入った。 確実にそしてゆっくりと病は進行中である。
在宅で過ごしていた時と違ってきている事は 排泄が理解できなくなっている事。そして 言葉を忘れ始めている事。 折紙や絵を描く事ができない。 側について説明しても 理解できなくなりつつある。 故郷を思い出す事 昔を思い出す事も殆どなくなった。
この中で 母自身が「おかしい」と感じている事がある。 それは 言葉を出せない…という事である。 他にも「思い出そうとしても思い出せない事が有る」と気が付いている。 それを称して「頭がぶちゃくれた」と言う表現をするのだと感じている。
でも 娘としてこれから先心に留めておきたいと思う事は 言葉が出なくても感じる力を持ち合わせているのだという事だ。 これだけは 肝に銘じて覚えておこうと思う。 出来る限り 母の気持ちに沿えるように…と思う。
母にとっては おそらく最も不自由な時代に突き進んでいくのだろう。 汲み取る心だけが支えとなって行くだろう。
今日は 母の日で施設の女性の入所者と家族でお祝いした。 男性陣が外れた訳だが 父の日にはきっと逆バージョンが有ると信じたい。
施設に着いた時 みんなお化粧をして頂いていた。 「○さん 機嫌よくなったわね」と職員が言っていたので それまで機嫌が悪かったのだろう。。。
居室に入って 頭をヘアトニックでマッサージし それから綺麗に髪の毛を梳かした。それが済んだ時「有難う」と母は言った。 綺麗な頭をみて満足げだった。 職員が着替えさせてくれていたが…今日は少し寒そうなので 薄手のウールのポロシャツに着替えて貰った。 これなら 多少気温が上がっても暑くはないだろうし 寒くもないだろう。
トイレに行くたびにポロンと排便。機嫌が悪いのは きっとこのせいだろうな。しかし トイレで頑張ってみても出なかった。
今日は17人中6人の家族が見えた。 職人さんが握ったお寿司が1人分ずつ並ぶ。紅白のはんぺんのお澄まし ツミレ煮 里芋とじゃが芋のマッシュ 箸は職員が折られた箸袋に入っていた。 おかわりもあった。
母の日に寄せて代表家族がご挨拶。 会を開いて下さった事の感謝の後「他の人にとって厳しい母でも 自分にとっては良い母です」と言われていた。その言葉に涙が浮かぶ。 他の家族も同様だった。 認知症になっても 子供にとってはいとおしい母であることに変わりはない。むしろ その不自由さを不憫とすら感じていて…。 これが みんなの心の奥底にじっと溜め込んで有るのだと…思った。
母のいるテーブルはとても賑やかだった。 おしゃべりが止まらない。。。母は言葉を交わす事は出来ないが その笑いに引き込まれてケラケラと笑いが止まらなかった。 ここから 発信される笑いは 他のテーブルにも広がったと思う。 古くからの知り合いが同席していて その方がポンポンとジョクーを飛ばす。受けて私ともう1人の家族が更に突っ込む…。 話しの機転がきくのだ。
母も少し前までは 冗談をポンポン飛ばしていたのだけれど…。 これは 仕方ない。。。
彼女が入所した時の事をふと思い出した。 「私はここで御世話になるのです」と言いながら「家に帰りたい」と激しく揺れていた。彼女はその当時 未だ自分が住んでいた場所をしっかり覚えていたのだ。日記にも登場する彼女は「息子が波にさらわれて死んでしまった」と泣いた一人暮らしの彼女である。
今 持ち前の明るさを取り戻して…みんなの笑いを誘っている。 記憶が飛ぶ事も自覚しているが「判らなくなってしまってね」と言う。
母もそうだった。今も母は感じているが あの時の「判らなくなってしまったから」とは 大分違ってきている。
食後 家族が持ってきてくれた新茶をご馳走になった。 その後家族は 急須まで持参なさっていた。 とても美味しく…ミキサー食の方でさえ「おいしい」と飲まれていた。 そのご家族は 「○さんが『おいしい』と言ってくれた」ととても喜んでいらした。 施設と言う大きな家の中での家族関係が出来上がっている。。。
未だ そういう雰囲気になれないご家族も居られる。 でも 何処かでは運命共同体みたいな意識が生まれ始めているのも確かである。小さな施設のありがたさでもある。 職員の方も ここに到るまで いくつもの山坂を越えて来た筈である。
以前は 家族のもって来たものに手を付けなかったけれど…今は「わわっ 新茶 私も飲みたぁ〜い」と言ってくる。 こういう関係のほうが 温かみが沸くような気がする。
家族だって無理はしない。 「みんなで飲みた。分かち合いたい」と思っているのだから…。
食事を終えて それぞれのフロアに戻った。 職員に連れられて お散歩に行く人 お部屋でお休みの人 様々である。
母と私はお散歩に出た。 外で出会った入所たちと会話を交わしたりしながら…くるりと川べりを散歩した。
沢山の笑いで 今日はほんとにすっきりとした気分で有る。 母もそうだといいなぁ〜。 きっと 心地よい疲れだと思うのだけれど…。
夫も娘もお仕事。。。ご苦労様な事です。
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