母のタイムスリップ日記
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2005年04月13日(水) 記憶

 母は フロアでみんなとテーブルを囲んでいた。
後ろからそっと頭を撫でると「すんな」(するな)と言う。
再度 頭を撫でると また「すんな」と言う。
3度繰り返すと怒り出した。
おそらく お腹が落ち着かない状態なのだ。
普通なら 3回繰り返せば後ろを振り向いて「なぁ〜んだ」と言うのに…。

「機嫌悪いみたいだわ♪」と言うと職員が「あらぁ〜午前中は良かったですよ♪」と言われた。
ソファーを見ると母が作ったと思われる張り絵のこいのぼりがあった。
「これ作ったのね」と言うと「そうなのですよ。昨日は それを作ってからチラシを切り抜いて貰ってね。お家やら 小さい物まで集中して切られていました」という事だった。
母は 鋏を使うのも好きである。
最近はあまり綺麗に切れなくなったけれど…。
入所した頃は カレンダーの鳥を切ったり絵を切り抜いてパズルにしたり…いろんな事が出来たなぁ〜。

母を居室に誘導。笑い顔を見せるけれど直ぐに曇る。
「お腹痛いの?」「痛くないよ」
「お腹がおかしいの?」「おかしくないよ」
そんな会話が続いたが 母の顔は曇る。
哀しそうな曇り顔ではなくて 苦しそうな曇り顔なのだ。

「トイレに行きましょう」と言うと居室のドアに向かって歩き出したので「トイレはここ」とトイレのドアを開けた。
「出る?」と聞くと「出ないよ」と言う。
でもお腹をマッサージするとちょこっといきんだ。
ガスが数回出て ちょこっと排便。
これで解決とは行かないが 散歩で気を紛らせて貰う事にした。

「お散歩行くよ」と言うと「行くよ」と言う。
外は寒いので着込んで 手袋をはめた。
歩き方はしっかりしていた。
外に出ると表情も明るくなった。お散歩のコースはいつもと逆周りにしてみた。いろんな物に興味を示し看板もよく読んだ。
「この花何?」と聞いてきたので「クリマスローズだね」と言うと[クリスマスは過ぎたのに…]と言う。判っているとも思えないが タイミングが合っていてちょっとびっくりした。
水仙を見ても名前が思い出せない。桜を見ても思い出せない。
こちらから数回行ってみると 定着したようでそれから暫くはちゃんといえた。

おそらく2キロ弱は歩けたと思う。
最後の方は「疲れた」と言っていた。

居室に戻って窓辺に立った時「あそこ歩いてきたよね」と言うと「そうだね」と言ってジィ〜ッと見つめていた。
母の記憶が繋がっているのだろう。それを更に思い出そうとしているように見えた。

椅子に座って持参したトマトとクッキーを食べてもらった。お茶も飲んでもらった。
その後みんなとおやつを食べた。

散歩の時 葉を広げたばかりの銀杏の葉を数個取った。
5ミリ程の葉をみて「可愛いね」と言った。
だから 入所者にも見てもらおうと持ち帰った。
「食べないでね」と言ってみんなの手のひらに乗せると「わぁ〜」とみんな歓声を上げた。

おやつの後 テレビに見入った母だったので そうっと施設を後にした。
明日はリハビリだ。


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