母のタイムスリップ日記
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母の病と適度の距離を保っていた筈なのに…。 どうやら 感情の波に飲み込まれてしまってようだ。
昨日 綿飴を母の口にほおり込んだ。 それまで テーブルの上の綿飴の袋を幾度も手にして「わ・た・あ・め」と読んでいた。だから てっきり判っているのだろうと思った。 しかし 母にとって読み込みは 意味がない。。。 「綿飴」と読めても 食べられるものと言う繋がりが出来ないようだった。 ほおり込んだ綿飴は 口の中で溶ける前に押し出されてしまった。 それでも 甘さは残っていて感覚を思い起こすだろう…と期待したが駄目だった。一度「嫌」と思ってしまうとそれを取り消すのは容易でない。 お正月に耳で測る体温計で「痛い」と思い込んでしまったので耳で計る事が出来なくなった…あの現象である。 嫌いではない綿飴は 今回 母に味わってもらう事は出来なかった。
昼過ぎ 散歩に出る前にちょっと寂しそうな顔をして「また 一杯勉強しなくちゃならないの?」と言った。 我が家に来て施設に帰る感覚を思い起したようだ。 「今日はここに泊まるのよ♪」と言うとホッとした表情になった。
昨夜は パジャマを濡らす事無く過ごせた。 10過ぎに最終トイレ 午前1時にトイレ誘導。その時もぐっすり寝入っていて 目覚めて動いた形跡は全く無かった。オムツは濡れていたけれど 更にトイレで排尿できた。 午前4時 その時もぐっすり眠っていた。 オムツはかなりぐっしょりしていたが…漏れる事は無かった。 (但し これには多少の工夫がある。以前 書いただろうか? トレーニングパンツの中に尿漏れパット2枚を使用する。肌に付く方のパットに穴を開けて置くのが コツなのだ) パジャマが濡れないので 母もぐっすり眠れたのだろう。 それと就寝時間は 施設よりずっと後の筈である。 それから更に6時半までまた寝入っていた。
7時過ぎに夫と3人で朝食。 ミルクティーとバターと柚子ジャムをたっぷり塗ったトーストとコーンと卵のバター炒めとトマトをアッと言う間に食べた。 食欲は十分有る。 後片付けも手伝ってもらう。
それから 母の教会にあてて手紙を書いて貰う。 文面を写すだけれど…。今までの母は ゆっくり丁寧に書いていたが…今日は せっかちだった。文字も幾度か間違えた。その度に消しゴムで消した。 そう 手紙は もう エンピツにして貰っている。
洗濯の間は 母にテーブルを拭いて貰った。 これは もう 大得意でエンドレスだ。だから 様子を見 声掛けしながら洗濯機と物干し場を行ったり来たりができた。
針仕事をしている間 母は新聞を読んでいた。 が時折テーブルの一点を見つめ寂しそうな顔をしていた。 「どうしたの?調子悪い?」と聞くと「何処も痛くない」と言うのみ。 それまでも 何か話し始めて 言葉を探し出せずに会話が途切れていた。 でもそんな事は 今までもあった事でそう珍しい事ではない。
お昼近くなって「何が食べたい?焼きそば?うどん?ご飯?」と聞いた。 母は考え込んだ。答えが出ないので再度「焼きそば?うどん?ご飯?」と。 すると母は思い出すように同じ言葉を反芻した。 ちゃんと反芻できて「3個くらいなら覚えていられるんだな」なんて妙に納得したのだが…。 実は 単語は反芻できても 具体的な物を思い浮かべられなかったようだった。「ご飯?」と聞くとコックリ頷いた。
お昼はご飯に決定。 生の梅干の紫蘇の葉を刻み炒りシラスとをご飯に混ぜた。 ミートボールを作った。きゅうりを大刻みにして味噌を置いた。 キャベツとオクラをさっと茹でて鰹節で和えた。トマトの櫛切りと味噌汁。 炒ったシラスを異物と間違えて口から出した。 「それはね シラスを炒った物よ」と言うと ちゃんと食べ始めた。
昼食もスムースに食べていた。が あと少しと言う所で急にペースが落ちた。 お腹を刺激したようだった。 幾度か俯き 声掛けを繰り返しているうちに治まったようでまた食べ始め終了した。
食後 母の教会のホームページを見せた。 画像を中心に見せた。教会堂や礼拝堂の写真にじっと見入っていた。 「判る?」と聞くとコクリと頷くが言葉が出ない。 話そうとするのだが…言葉が出なくて俯いて諦めてしまう。
「判らなくなるから 心配なの?」と聞くと「大丈夫 悪くなっても大丈夫って言ってくれたから…」覚えているんだなぁとつくづく感心した。 「お祈りするからね」といって母のために祈った。 「…いつも見守ってくださって有難うございます。今 思いだそうとしても思い出せなくてとても哀しい思いをしています。どうぞ 主の力でお支え下さい。喜びを持って過ごせるように導いてください…。 アーメン」祈り終えた時母は泣いていた。目に一杯涙を溜めていた。。
そうなのだ 母は言葉を発せ無い事に気が付いているのだ。母の言葉が更に狭まっている事に気が付いていて どうなっていくかがとても不安なのだ。 痴呆症も進行して 大分わからなくなっているからそういった事まで判らないだろうと思っていた事を悔いた。 さりとて それをどう食い止めれると言うのだ。 言葉を繋ぎとめるには 頻繁に会話するしか方策が見当たらない。 でも 質問すら理解できなくなっている母に。。。
そう考えるとどうにも堪らなくなってしまった。 距離を保っていた筈なのに…。 埋め切れそうにない現状を前に これから先が真っ暗闇のように思えてきてしまう。
いや 大丈夫 きっとまた 良い波も来るだろう。。 それを信じるしかないし それも受け容れながら できる事の喜びを見出していくしかない。 先の心配は 無用の不安を掻き立てるだけと判っているのに…時折迷い込んでしまう。。。
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