母のタイムスリップ日記
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利用者さんを訪問した。 家に入った時 焦げ臭い匂いがしたので 何となく気になった。 キッチンをさり気無く見たけれど特に変わりなかった。
「今日はね 何もしなくて良いの。。。教えて欲しい事が有るのよ。。。」 「洗濯は?」「昨日 全部洗ったから大丈夫です」
「デイでね こんな事やっていたのだけれど…出来ないのよ。みんな できるのに…最後くらい合わせ様と思うけれど…それもね…」 と片手の親指を折り曲げ それから順番に両手の指を折り曲げていくと言う動作をして見せた。 とても早い動作である。「何とかしなくちゃ」と焦って居られるのが手に取るように判った。 「ゆっくりしてみましょう」と向き合って同じ事をした。 けれど 先に先にと急ぐ利用者さんは 中指から薬指にかかりだすと両手を握ったり開いたり…で混乱してしまう。 気分を替え様と思ったけれど 利用者さんの姿は必死な姿に抗す事は出来なかった。
ふと 母の事を思った。 何かがおかしい…それを言い表せないけれど 何かが起きるかも知れない…と思い始めたころの事である。 ボケてない事の確かめ作業…とでも言うのだろうか?
「森 光子さんは 私よりひとつ下なの。あの方 でんぐり返しも出来るし…。普段訓練なさっているのだろうから 同じと言う訳には行かないけれど これくらいはねぇ〜」と利用者さんが言われた。
「ゆっくりね。心臓の音にあわせるつもりでね。ゆっくり取り組めばきっと出来ますよ」と繰り返し伝えた。
30分ほどして ようやく成功した。 いや 正確には 両を同時に順番に折っていく事に切り替え それが出来たという事である。 「ほおら ちゃんと出来ますね。今度は 自分で号令かけてください。私も追いかけて行きますから…」
こうして 成功する確率が高くなってきた。 けれど「大丈夫」と言う所までは 行っていない。
「何故急に 気になったのだろう?」と考えているうちに 思い当たった。 明日は デイがある。 また 人前でできない事を思い知る事が嫌なのだなと感じた。 だから「デイのお仲間は 一回りもお若くて 比較したら辛くなりますよ」と言葉を添えた。 すると…。 「そうねぇ。同じくらいの方は『これは 出来ない』と言われてやらないわねぇ〜」と言われた。 「少しずつ動かしていけば きっと出来るようになりますよ」と言うと「そうかしらね。そうよね」と納得なされた。
その後 「オーブンレンジの使い方をゆっくり教えて下さい。金曜日に教えてもらったけれど…曖昧だったから 焦がしてしまったの」と言われた。 焦げたにおいの原因が判りホッとした。 ゆっくりと教えて 利用者さんにおさらいして貰った。
その間にも 先日の銀行の失敗の話しも加えて話された。
「ひょっとして この所眠れないのじゃないですか?」と聞いてみた。 「よく判ったわね。そうなの あれこれ失敗続きで 考えると眠れなくなってしまって…」 「心配性も過ぎると 余計混乱して出来なくなる事が多いから…考えすぎない事も大事と思いますよ」とお話した。
その後 僅かに残った時間で お買い物に出た。 いつも行くスーパーだけれど 買い物が済んだ後 少し違う方向に歩き始めた。すこし急いで遠回りして 利用者さんの先に行き「こちらから行きませんか?」と言うと「そうね」と言いながら「こっちだったわね」と気がつかれた様子だった。
帰路 いろいろ考えた。 まだまだ 一人暮らしは可能である。けれど この時期に脳の診察を受けられた方が良いのじゃないか…。 ご家族も これからの事をゆっくり考えて 良い方法が探せるのではないか…と思った。 まだ 認知症と決まった訳ではないし 落ち着けばまたちゃんとして来るかもしれない。
さてどう伝えようかと迷った挙句に…。 事業所に報告した。 今すぐ困る事はないと思うけれど 徐々に移行したほうがベストかもしれない事。3.4年かけながら 介護の方法を考えられた方がご家族にとっても良いと思う。くれぐれも 本人に「出来なくなった」と告げずに 方策を考える程度に…。と。
うまく伝わってくれる事を祈るのみである。
午後 母のところに出向いた。 今日も掃除機を使って掃除してもらった。もう1人の利用者さんにも御願いをして手伝って貰った。 ニコニコしながらお掃除してくれた。 運んだおやつを食べお茶を飲んでから 散歩に出た。 風が冷たいので沢山着込んで貰ったら「ゴロゴロすよ」と言われた。 「ごめん 寒いから我慢してね」と言うと「うん」と納得してくれた。
母の足取りは安定していた。 凸凹も視野に入れて 予測して歩けた。 良い時有り 悪い時ありだとつくづく思う。
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