母のタイムスリップ日記
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| 2004年03月18日(木) |
サイタ サイタ サクラガ サイタ |
施設に着いた時 母がソファーから立ち上がった。 「きっとトイレだ」と思い 様子を見ていると 自分の部屋の前に行って中を覘いてからくるりと背を向けた。 その時母と視線が合ったので手を振って傍に行った。 「ここは、どなたの部屋でしょう?初めて見る部屋です」 「そうですか?ちょっと入ってみましょうかね。あれ、ここは○○チャンのお部屋ではないでしょうか?」 「そうかしらね。でも初めて来る所ですよ」 そんな会話から今日の面会が始まった。
「ちょっとトイレに行って見ましょう」と誘う。 母は、トイレに向かって歩き出した。 でも、ちょっと確かめたくなって「何処に行くのですか?」と聞いてみた。 「ご不浄です」とかえってきたのでほっとした。
やはり、「小」が間に合わなかったようである。 お腹を押しながら「大」を誘導。 今日もいきむ事を忘れていた。繰り返しお腹を押して「いきもうね」と声をかけてようやく目的達成。 「大」の失敗はなかったけれど、下着を下げた時プンと匂ったので「大」のタイミング時だろうと察知したのだった。
痴呆者に 何処まで求めていくか…。 強い拒否はしない母なので、出来る限りトイレでの排泄をさせたいと思っている。基本的生活習慣は、残存させてあげたい。 少なくとも「でそう」と言う感覚は残っているのだから、現状維持に努めて行きたいなぁ〜。 無理のない範囲で 手助けしていきたい。
雨の中、傘を差して散歩に出た。 母の部屋の窓から桜並木が一部白くなっている所が見えたからである。 一部咲いていたのは ソメイヨシノだった。 曇った空で下から見上げると花弁が見えにくかった。 公園の奥まった所にパーッと白い物が…。 山桜ぽい桜が満開だったのだ。 「ほらほら」とその木の下に行って二人で見上げた。 「きれいだなぁ〜」と母が感嘆の声を上げた。 いろんな事が判らなくなっているのに未だ桜が綺麗だって言えるんだ。 感じ取れる心、弾む心があるなら それで充分だ。 そこで「サイタ サイタ サクラガ サイタ」と言ってみた。 母は 「何言ってんだかぁ〜」と言いたげに笑っていた。
母の足は浮腫んでいて、歩いていると息切れしてきている。 先日の元気さは 何だったのだろう。 それでも「歩きたい」と言う意思はある。 突然「負けない」と母は言った。 「そうだよ。負けないでね。私も負けないよ」と一人呟いた。
帰る前にちょっといたずら心が湧いた。 紙に母の両親の姓名、母と父の姓名、息子家族の姓名を書き 母に渡した。 そして 順番に聞いていった。 母は、名前を声にしながら頷いていた。 全部読んだ後で 「私は?」と聞いてみた。 すると「あれ、ここにないね」と言った。 感覚的に「ここに在るべきなのにないな」と思っていると感じて嬉しくなった。折り紙の裏に夫婦単位に名前を書きそれをセロハンテープで繋いでテーブルの上に置いてきた。
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