2003年02月08日(土) |
宮古島日記 5日目。 |
下地中学校に行って来た。
ここも、花や緑がいっぱいでとても気持ちがいい。 野球部の息子さんの試合を撮影するために出かけてきたオーナーiさんと グラウンドの隅っこで打ち合わせ。
誰かが連れてきた足のやたらと短い犬が、遊んでくれー、遊んでくれーと わめき散らしている。 超ビビリの我が息子・天流川(あるく)は、おそるおそる近寄ってゆく。 ちぎれるんじゃないかと心配になるほどにシッポを振って ポチ(勝手に命名)は、天流川に体当たりしてくる。 しばらくして、なれてくるとちびちびふたりは仲良く遊んでいた。 ん?。遊んでもらっていた かな?。
私と天流川は歩いて宮古島を探索することにした。
下地中学校を出て、390号線を目指しててくてく歩いてゆく。
サトウキビの穂が風に揺れる。
ザワザワ ざわざわ ザワザワ 不思議な音を奏でながら。
海が見えてきた。 あのつきあたりが、390号線だ。
2時間に一本程度しか来ないバス停が、そこにはある。 この島に来て、まだ路線バスを見たことはない。
堤防に座り海を見ながら、さんぴん茶でノドを潤す。
あれはアオサギだろうか?。2羽の白い鳥が、海岸で遊んでいる
天流川の荷物は、地図とさんぴん茶の入った水筒、ポケットの中のハンカチ。 ただそれだけ。
ほんの少しだけ休憩をすると、少年は立ち上がった。
「いくよ、まだまだ道は長いんだから。」
すぐ先に精糖工場があり、次から次へとトラックが入ってゆく。 荷台には山のようになったサトウキビを積んで。
工場の吐き出す黒い煙。 視覚的にはブルーなイメージのそれも、ここでは甘い匂いを漂わせている。 サトウキビを圧搾し、煮詰めて、黒糖を創り出す。その時に出る黒煙だ。 とうもろこしを茹でるときの少し香ばしいような水臭さを、もっともっと甘ったるくしたような空気。 ねっとりとした、肺に染み込むような甘さ。 それがこの島の香りなのかも知れない。
しばらく歩いてゆくと、右手に大きな木々が見えてきた。 低く広大な空とどこまでも続いていきそうなサトウキビ畑。 その風景の中にぽつんと存在する、残された自然の樹たち。 遠目から見ても、心地よい空気が漂っているのがわかる。
その樹に呼ばれるようにして、道をそれてみる。 草の生い茂る大地の中に、細く踏み固められた道がつくられている。
大きな木の影に入ると、一瞬にして汗がひいてゆく。冷たく優しい風が吹いてゆく。
「気持ちの良さそうな場所だ」と近寄ってみると、そこは御獄(ウタキ)だった。
ほかの場所でも、たいていがそうだった。
御獄は島の人々が「神様の在る場所」と大切にする聖域だ。
この島にはたくさんの御獄が残されている。
宮古では、まだまだ神様が、神様として、大切に奉られている。
その地を長い間見守り続けてきた大樹に表敬訪問して 道に戻ろうとするとルリタテハが近寄ってきた。
導くように、挨拶をするように、なにかを告げるように。
ひらりひらりと 近づいたり 離れたり 美しいその羽で風の中を泳ぐ
御獄に行くと、たいてい蝶が遊ぶように飛んでいる。
沖縄本島最大の聖地と呼ばれる斎場御獄に行くと たくさんの蝶が出迎え、そして見送ってくれる。
「御獄で蝶に会うことはよいことなんだよ。」いつか、誰かがそう教えてくれた。
斎場御獄に行くと、必ずその方たちはいらっしゃる。
部外者から御獄を守る門番か、メッセージを伝える天使か
彼らの役割は、私にはまだわからない。
「人を愛するってのは、どういうことなんだろうねぇ。」
小説のことが頭から離れない私は、自分に聞くように、
海にささやくように、愛する少年に聞いてみた。
少年は答える。
道ばたに落ちていたサトウキビを剣がわりに振り回しながら。
「わからないよ、そんなこと。
まだまだ旅ははじまったばかりだから。これから わかるよ・・・。」
宮古島上地海岸にて。 天流川
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