こころの大地に種をまこう 春名尚子の言霊日記

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2002年05月23日(木) いのちは巡る 螺旋を描いて  そしてカルマもまた・・・・

 19時、大阪梅田三番街のバスターミナルから、香川行きのバスに乗った。

 東京出張から帰ったばかりで、荷をほどく暇もなく

 またいろんなモノを詰め込んだカバンと、不安で揺れ動くこころを抱えたまんま。


 家には6才の息子を残してきた。

 はじめての遠足を楽しみにしている私の王子さまを、混沌の中には連れていけない。

 親友にお願いして、泊まりに来てもらった。

 仕事の締め切りを抱えていたのに、彼女は来てくれた。

 私が前に向かって歩くことを応援するために。


 マキアトのダブルを飲みながら、外の景色を眺めていた。コーヒーの苦さが胃にしみる。

 高速道路の接続面を踏み込んで定期的に揺れるバス。そのリズムに身体を預けて、こころを覗き込んでみる。


  まだ、わからないよ。どうしたいかなんて・・・。

  あんたは、どうおもってんの?。



  そう言いながら、困っている私がそこにはいた。



 過去の清算をしようと決心する前まで、母のことはなんとも思っていなかった。

 ちょっとおかしな人だとは思っていたけど、恨みも怒りもしていなかった。

 扉を開けたとき、本当の感情を隠して閉じこめていただけだったことに、気がついてしまった。

 そんな複雑な感情で母の顔を見ることが出来なくなって、私は彼女の前から姿を消した。


 感情をぶつけることが恐い?。人を責めたくない?。

 暴力的な感情が沸き上がってくるのが恐い?。

 そう思っていた。でも、違うかも知れない。

 そんな感情をぶつけて、母に嫌われるのが恐かったのかも知れない。


 そう、ふと思った。子供というのは、大変な生き物だね。

 どんなにひどいことをされても、親という存在は絶対的なモノらしい。



 葬儀会館に到着して、久々に母と対面した。

 親戚のおじさんと母と私の3名で、亡くなったおばあさんと一夜を過ごすことになった。


 祖母は、眠るようにきれいにそこにいた。

 もう、魂は抜けきっているのかな?。このあたりにいるのかな?。私を見ているのかな?。


 ありがとうね。母を生んでくれて。私をこの世に誕生させてくれて。

 ありがとうね。



 軽く会話をして、「仕事してくるね。」と声をかけて部屋を出た。



 何日の人がここで夜を過ごしたのだろう。最後の夜を。

 朝になれば、葬儀をして、その肉体は火の中へ。

 数時間もすれば、小さな水分の蒸発しきった白い骨のかけらになってしまう。



 悲しかったのかな?。つらかったのかな?。さみしかったのかな?。

 それとも、新しい世界へと旅立つ希望で、胸をいっぱいにしていたのかな?。


 いくつかの電話とメールと、22日の壊れきった日記を、

 葬儀会館のロビーで書いたあと、MACはぱたっと動かなくなった。


 仕事をしているフリをして、時間をやり過ごそうと思ったのに・・・。



 部屋に戻ったら、ふたりはふとんに横になっていた。

 私も顔を洗って、眠る準備をした。他愛もない話しをして、母は眠りについた。



 ほとんど眠れず、朝はやく目がさめた私は、会館のまわりを散歩した。


 田んぼのフチにクローバーが群生している。

 クローバーを見るだけで、なんか幸せな気持ちになるよね。私だけかな?。

 彼らに呼ばれるように手をさしのべたところで

 四ッ葉のクローバーが笑って「おはよう」と言ってくれた。




 葬儀は創価学会員だった祖母の遺志をくんで、学会による友人葬という形式だった。

 坊さんが来るわけでもなく、幹部と呼ばれる人が来て、経本をみんなでよんだ。

 祖母がそれを望むのならば、それが一番の供養だろう。


 そう思って、私もお経を唱えた。


 いつも、泣きながらよんでいたこのお経。何年ぶりだろう。


 虐待の日々の中で、誰にも何にも救いを求めることが出来ず、

 母と兄の信仰する日蓮様を半ば強制的に信仰させられて、

 毎日お経を唱えさせられた。

  私を助けてくれない日蓮様をにらみながら経を唱えたことも、数え切れないほどあった。


 ああ、それでも、さすがにお経を唱えているときは殴られることはなかったなあ。


 いまでも、南無妙法蓮華経と唱えるだけで、涙があふれてしまう。


 この前、日蓮宗のお寺に行って良かった。  ◆ 涙の理由 ◆ 


 あれがなかったら、もっと複雑な気持ちでこの日を迎えていただろう。

 すべてがこの時期に、私の準備が整ったこの時期に降り懸かってくるということは、

 やはり私もまた導かれているのだろうかと思う。



 おばあさんに「ありがとう」と何度も何度もそう告げた。

 私に機会を与えてくれて、ほんとうにありがとう。







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