ゆれるゆれる
てんのー



 「二つ玉低気圧の森林(限界)」

 雨は当分やみさうもない。
 彼奴のことを考へたつて、こんな夜には無理ないことです、
 だつて彼奴と別れた朝を、好く晴れてゐたと覚えてゐるのだ

 彼奴を尊敬してゐたなんて、
 是れつぽつちも思やしませんが、

 唯、思ふのは、お前は誰? そのときお前は何だつたのだ?
 いつたい、お前は誰なのだ?

 「こんな二つ玉低気圧の通過する日には、山に登つてはいけない、
 稜線はきつと台風なみの悪天が支配する、冥王Hadesの領域になつてゐる。」
 閉塞前線は正確に我々を絶望させやうとするでせう。
 だが、彼奴のニュースを聞いたとき、東京の空は晴れてゐた、
 彼奴の稜線に低気圧はゐなかつた

 この雨の森は生命の匂ひ
 Hadesなんかはゐやしない
 まだ見たことのない一服剱で、そのときHadesの空は晴れてた。



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[以前書いたのが出てきた。いまでも、本気で彼のことを悼んでいたのか、疑問に苦しむときがある。]

2003年05月07日(水)
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