ジョージ北峰の日記
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2015年09月20日(日) |
悪性新生物ーこの化け物の正体を暴く |
いよいよ癌の第1法則と第2法則を基礎にした治療法を考えてみよう。
この治療法を考えるにあたって、癌の外科療法を否定するつもりは全くない。癌の診断技術の向上によって早期癌の発見率が著しく向上しているうえ、早期癌の外科療法に90%以上の治療効果があることを考慮すれば、癌の外科療法はやはり癌治療の主役であることには違いない。 又ここで述べる方法は、薬物療法や放射線療法と競合することもない。
癌治療が不可能とされる、第四期の癌の治療法の有力な一つとしての可能性を秘めていることを提示してみたいだけなのだ。
これまで述べてきた癌の第1法則と第2法則に関しては、これまで私が論文で発表してきた内容を、日本語で解説したものなので、最後に文献を紹介する。 ここから先に述べる内容は、私は研究室で既に実験は終えていたが、ある理由から論文に出来なかったものなので、文献として挙げることはできない。 しかし、本当はここから先が、最も重要な研究部分と考えている。
癌の治療を考える際に、最も大切なことは宿主側の防御能力である。
例えば、細菌やウイルスの治療でも、薬物療法を行うが、細菌もウイルスも薬で100%治る訳ではない。薬で弱った微生物に生体側の免疫能力が有効に働くことが前提なのだ。
例えば、後天性免疫不全症候群のように、免疫力がゼロに近い生体では、薬物治療は有効ではなく、往々にして病原性の低い常在微生物の感染によって死を招く。又ワクチンは生体の防御力を高めることによって、薬物を使わなくても病原性の強い微生物を撃退する。
癌の場合も、生体側の防御力としての正常な免疫機構の維持は最も重要なものである。
しかし現実には癌は生体の免疫力を無視するかのようにどんどん増殖して生体を喰い潰しているかのように見える。免疫力はたいして役に立っていないように見える。
これは一体なぜだろう ?
先にあげた、9種類の細胞実験で、正常な免疫力を持つ成体で腫瘍を形成、殺傷能力を有す変異細胞は3種類(IR+と呼ぶ、mag1, FC, MC )、他の5種類(IR-と呼ぶ)のうち4種類(正常細胞MEを除く)は、免疫力が弱い成体でのみ腫瘍の形成するのが認められた。
これらのIR-胞は免疫力の強い成体では、一時的に大きな腫瘍を形成するが、免疫力に打ち勝つことが出来ず、2週間から3週間で腫瘍は消失・死滅してしまう。ただしこれらの細胞からも、培養条件を変えることによって、IR+細胞を作り出すことは可能である)。
これらの4種類の細胞は、いずれも試験管内ではIR+の3種類(mag1,FC,MC)の細胞とは増殖力、染色体数、その他の性質でも、ほとんど差がないないにも関わらず、である。
この差の因って来る原因は、明らかではなかったが、結局、免疫力に対する細胞側の感受性の違いに起因すると分かった。
つまり癌を含めて変異細胞の生体での増殖性は生体側の免疫力に影響を受けることがわかったのだ。 しかし動物実験の結果から推定できることは、人間の癌も、細胞レベルで考えれば正常もどきの細胞から、極めて悪性度の高い細胞に至るまで、性質の異なる多種類の細胞が産み出されているはずなのである(癌の第2法則)。 つまり癌を構成する細胞には、免疫感受性の低いIR+細胞から免疫感受性の高いIR-細胞が出現しているはずである。
ただ人間の癌の場合、生体ではIR+細胞だけが、選択的に増殖しているだけなのだ。
そこで癌治療に際して、宿主側の免疫力が大変重要な働きを担っていることは大前提である。
癌の第2法則では、正常もどきの細胞(NL)が産み出されていることが、癌の薬物治療や放射線療法に際して問題であると指摘したが、その際、問題はこの細胞が再びIR+の細胞を産み出すことだった。しかし、何らかの新しい方法(薬物や放射線でない)でIR+の細胞を持続的に撃退することが出来れば、この細胞に気を使うことはない。
我々の実験ではIR+細胞は(MC、F、mag-1)だった。 これらの細胞の、周囲圧力に打ち勝つ力は(仕事能力が)IR-細胞(T-C3H、m、MR、 L)に比べて何十倍、何百倍あることを示した。この能力は、細胞の場合エネルギー源としてATP(高リン酸結合性の塩基)を産生する能力に依存している。
ATPは細胞が生存するため、物質を合成したり分解したりする際に必要欠くべからざる分子で、この物質が多ければ多いほど、その細胞の活動性が高まる。 これは細胞分裂に際しても、必要欠くべからざる物質なのである。 IR+細胞のMC細胞、F細胞、mag1細胞は1%の寒天内で増殖する際にATPを多量に産生するに違いない。 一方IR-細胞の(T-C3H、m、MR、L)細胞は1%寒天内でATPが有効に産生出来なかったのである。
この差がIR+細胞とRI-細胞の違いだったのだ。そして前者は免疫抵抗性であり、後者は免疫感受性なのだ。だとすればIR+細胞の、ATP産生能力を削ぐことで、生体の免疫力に対する感受性を上げることも可能だろう。つまりこれらの癌を有効に治すことも可能だろう。
このエネルギー産生能力が削げるかどうかが治療の大前提となる。
癌の絶食療法や食事療法が有効だった理由は実は此処にあるのだ。
つまり成体の免疫力を損なわずに、癌が利用できるエネルギー量を減らすことに成功すれば癌を治療することも可能なのだ。
この治療法は極めて有望と考えられるが、どの癌にも有効に働く方法とするには、科学的根拠に基づく計画的治療法の理論が必要だろう。
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