ジョージ北峰の日記
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2010年02月01日(月) オーロラの伝説ー人類滅亡のレクイエム

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久しぶりの強いアルコールで酔いが回って私は朦朧としていたようです。彼女が「外に出ましょうか?」と囁いた時までは記憶していました。しかしそれから以後のことは、何があったのか今でもよく分かりません。彼女に寄り添われて歩きながら、失われていく意識の中で体が雲に乗って、“ふわっ”と浮き上がったよう気がしました。恐らく私は眠っていのでしょう。
 そして不思議な夢を見たのです。
 私は、古代エジプト王朝時代をも想起させる壮大な宮殿に招待されていました。
巨大な石作りの壁や柱に、男女の営みや、勇ましい戦争の模様が彫刻され、壁や天井には色鮮やかな色彩画がほどこされた王宮に案内されていたのです。中央の玉座には、先程とはうって変わって女王の風格・威厳を示すキャシーがゆったりと座っていました。
私は彼女のすぐ傍に座っていたのです。 周囲には、薄い衣装を身に着けた女や、鎧を身に固めた若くて凛々しい男が至れり尽くせりのサービスをしていました。部屋の中央に、円形のやや高くなったステージがあり、ハープのような弦楽器から奏でる、静かで不思議なメロディーあるいは又蛇使いが奏でるようなエキゾチックな笛の音色に合わせて、少女のような可愛いい顔立ちの、しかし筋肉質な踊り子が、衣装らしい衣装をほとんど身に着け姿で、小麦色に輝く肌も露(あらわ)に、コブラのように肢体をくねらせ、挑発するような眼差しで踊っていました。
私は、何か倒錯した世界に来たかのような、千夜一夜物語の主人公になったかのような、経験したこともない不思議な気分に胸が騒ぐのでした。
こんな刺激的なショウを見たことがありませんでした。全身がゾクゾクし、興奮の度合いが増していくのが分かりました。
それだけではありませんでした。 いよいよクライマックスがやって来ました。
ホール全体が暗くなると、先ほど踊っていた一見華奢(きゃしゃ)な、しかし動作の度に筋肉が浮かび上がる少女のようなダンサーと先程からキャシーの傍に立っていた、オセロを想起させるたくましい男性が、青・赤の光が織り成す舞台に上りました。 
二人は周囲に気をかける風もなく、先とはうって変わって静かなスローモーション映画のように、静かな抱擁から始めました。切なく閉じられていく少女の目が魅惑的な夜の始まりを告げているようでした。
 少女の動きはしなやかで、蛇のように脚や腕を男性の脚や体に絡ませる。まるで蛇がカエルを飲み込むかの様に赤い舌で相手の唇を求め、密着するかと思えば、男の執拗な愛撫に力なく筋肉の緊張が緩む。
その光景は私の理性を徐々に奪い、性への欲望を掻き立てる、迫力に満ちたものでした。彼等の踊りに単調な動きは何ひとつなく、緩急、強弱が微妙に織り交ざって蠢(うごめ)くのです。
男は逞しく力強い、女は軟体動物のようにしなやか、そして二人の絡みあいは、最初はダンスを見ているような印象でしたが、やがて密着し蛇が絡み合うように二人の体が入れ替わり、時折発する女の甘い声が、如何にも切なげで刺激的な声に変わっていきます。
すると機が熟すのを計って男は愛撫を続けながら少女を優しく抱き上げ、そのままの姿勢で男女の“交わり”に移っていくのです。
少女は“う!”と、しびれた様に体から力が抜け体勢が崩れ始めます。男の動きが次第に速く、強さを増し、少女の声にも切迫感がみなぎり、大きく、訴えるような声に変化、やがて口元が弛み(ゆるみ)、目許(めもと)、眉が苦しそうにゆがみ彼女の表情から歓喜が頂点に達しようとしているのが伝わって来ます。
と突然、少女は動きを止め、我を忘れたように男にしがみつくのです。男は一度動作を弛め、少女を優しく抱きかかえ、そして最後は止めを刺すかのようのような動きに変わるのでした。
少女はたまらず感極まった声を発し、全身から力が抜けていくのでした。
 眼前でこのようなショウを見たのは初めでしたので、私は心がかき乱され興奮は臨界点に達しようとしていました。
それにしても、異常とも思えるこの興奮の最中(さなか)、男の無表情で落ち着いた顔、それでいて普通なら誰もが我慢の限界を超えるような刺激的な行為を冷静・沈着にやり遂げる能力、私はすっかり驚き、ある意味尊敬したほどでした。彼の行為には厭らしさが微塵も感じられませんでした。
それに---男性的な肉体の少女の姿にも強い印象が残るのでした。

 と、それまで微動もせずショウを見ていた周囲の女達は、突然男達にめがけて突進してゆくのです。呆気にとられていますと、抵抗する暇(いとま)もありませんでした。私も瞬く間に衣服を剥ぎ取られベッドに縛りつけられていました-------。
 6
 ご想像の通り、私が夢を見ていた時、すでに某国へ連れて来られていました。しかし、私が招待された先は、こんな国がこの世に存在しているとは、想像にもおよばない所でした。彼らは、自分達の国をラムダと呼んでいました。もしかすると、それは宇宙人達が住む異星国だったかもしれません。
当時私は想像さえしませんでしたが、UFOで連れ去られた可能性も充分考えられたのでした。しかし、実際彼らがどんな手段を使って私を連れてきたのか、分かりませんでした。この件についてはいずれ話すつもりです。
 ラムダ国の政治、経済、文明は、私が知る限り、地球上にこれまで存在してきた如何なる国とも違っているように思いました。古代と超近代が渾然一体となった印象で、私がこれ迄、培って(つちかって)きた倫理観や知識からは、正直なところ良い国なのか、悪い国なのかさっぱり判断出来ませんでした。
 私がラムダ国で経験した詳細について、逐一語り、善悪の判断は読者に委ねる(ゆだねる)つもりですが、今のところは、ゲームに見られる、現実とはかけ離れた国を想像していただければ理解しやすいかもしれません。
学会で知り合った自称キャシーは、実はラムダ国の女王なのでした。ラムダ国の人々には、地球人のような簡単な名前はなく、すべてのメンバーがまるでITのアドレスのように長い記号で呼ばれていました(後で分かったことですが、それは彼等の遺伝系統を示唆するコードを表していたようです)。
私は記憶力が弱いのか、それとも彼らと脳の働きが違っているのか、或いは又単に習慣の違いによるのか、彼等の味も素っ気もない記号のような名前を覚えることが困難でしたので、私は彼らに勝手な名前をつけて呼ぶことにしていました。
 例えば、キャシーがクレオパトラと似ていると思いましたので、私は彼女をパトラと呼んでいました。彼女はパトラとよばれるのが気に入っているようでしたが---。
 パトラは女王としての風格に加えて、女性の優しさをも兼ね備えていました。一方褐色の肌、赤い瞳、そして時折見せるオリンピック選手のような優れた運動能力は---まさに獰猛な黒豹、又は鷹のような凄みを感じさせることもありました。
さて、そんな彼女が私の研究に何故興味を示したのかは、ラムダ国のあり方に深く根ざしてきた“考え方”と密接に関係しているのですが、この点につきましては、今後おいおい説明していくつもりです。
私が夢の中で見た“性の儀式”は、ラムダ国ではごく普通に行われている、当たり前の性習慣でした。私にはとても奇異に映りましたが---。
 性行為に際して、男はベッドに動けないように縛り付けられていました。つまり男に女を選択する権利は与えられていなかったのです。男女の“交わり”は、何時も広い舞踏会場のようなホールに集まって、ひとしきり宴会を楽しんだ後、始まるのが慣例でした。そして必ず性的興奮をたかめるためのショウが催されていました。
 ショウも終わり、人々の興奮が充分にたかまった段階に達しますと、パトラの合図で、男は一斉に目隠しされ、猿ぐつわを噛まされベッドに縛りつけられる。すると女達が競って思い思いの男選びを始める。その際、必ずと言ってよいほど、何人かは一人の男をめぐって、取り合いが起こりましたが、その争いを取り仕切るのはパトラでした。パトラはこの国にあって法の執行官でもあったのです。
 ただ、私が驚いたのは、何人もの女が一人の男性に集中することがありましたが、男達は皆驚異的な持続力で女の攻めに耐えうることでした。
 私が拉致された当初、夢の中で見た光景は、私の常識からは、ありえないと思える程凄まじいものでしたが、この国ではそれは異常なことでもなんでもなく、通常に行われる性習慣だったのです。
白色、褐色、黒色など色とりどりの肌色、一様に筋肉が見事に鍛え上げられ、逞しいグラディエーター(ローマ時代の剣闘士)のような男達がベッドにはりつけられ次々運ばれて来る。すると、やはり誰をとってもそれぞれ一様にしとやかで美しいと思える女達が(私には信じがたいことでしたが)、まるでお腹を空かした狼が獲物を狙うかのように、先を競って男達を襲うのです。その光景は、彼等の姿からは想像もつかないほど動物的で、私には狂気の沙汰のようにしか思えませんでした。
で、頂点を迎えようと女の動きが一層激しくなると、男は悶え苦しむような筋肉の動きを見せ始めます。一方彼女達の我を忘れた嬌声(きょうせい)は、最初は秋の夜を賑わす虫の静かなコーラスで、時折ウマオイの鳴き声が不協和音のように挟まる程度でしたが、やがて高く、低く、大きく、小さくホール全体に木霊するように響き、最後には、まるで第九交響曲の“合唱”のような大きさとなって広がっていくのでした。
 男達からは猿ぐつわを噛まされていましたので、声らしい声は聞こえてきませんでしたが、彼等の快感に疼く呻き声が低いコントラバスの音色のように地の底から響くのです。
快感に耐えようとする彼等の声は女達にとっていっそう性的興奮に繋がるようで、彼女達の興奮度はさらにさらに昴(たかまる)まるのでした。
 それにしても、集中的に攻められる男も大変でしたが、一方女達の寄り付かない男が、興奮でいきりたち身もだえする姿は、苦しく痛々しく、地獄の拷問のようにも見えました。
7
 私事については、あまり話したくないのですが、しかし風変わりなラムダ国の文化を紹介するためには、文化人類学的な観点からも、正直にお話するのがやはり筋と言うものでしょう。
性の儀式もたけなわに近づく頃、漸く(ようやく)私も目隠しされ、猿ぐつわを噛まされました。普通なら、このような屈辱的な扱いは許せないと抵抗する人もあるでしょう。しかし、それ迄の周囲の状況から私の肉体は興奮の極致に達していましたので、目隠しされ、猿ぐつわされた段階で、むしろ次に来るべき出来事を想像し、期待に胸を膨らます体(てい)たらくでした。だが一方、はたしてこの国の女性が私に興味を持ってくれるだろうか?という不安もありました。それは先程見た通り、相手にされないことも、やはり地獄の苦しみだったからです。
 しばらく、誰も寄り付かない状態が続き、随分長い時間が経過したように思いました。その間も、周囲からは男女の交わる激しい動きや、我を忘れたような間の抜けた、脳の旧皮質を刺激する嬌声が間断なく聞こえてくるのです。私は、もはや理性をなくし、当たり所のない苛立ちに全身が震え、痙攣発作を起こすのではと思うほど、もがき始めていました。しかし手足が縛りつけられていてベッドを揺らす以外何も出来ません。
 と、かすかな人の気配を感じました。誰か近づいてくるな、と思う間もなく、私のいきり立っている部分が、柔らかくて生暖かい人手にいきなり握り締められたのです。
 「ああ!」その瞬間、私は全身に伝わる電撃的な快感に失神しそうになりました。
 その時まで私は、性に対して無知で、読者の皆様には信じられないかも知れませんが、男女の交わりは、嫌らしいもの、否むしろ不浄なものとして罪の意識のうちに避けてきました。だから、性の真の「喜び」については何も知らないというのが本当でした。
 しかし今回ばかりは、そんな気分は何処かに吹き飛んでいました。ただ単に、興奮でいきり立った部分が、握り締められたというだけで、こんなにも感じるものだとは夢にも思っていませんでした---本当にそれは初めての体験だったからです。
 ただしかし、敏感な部分を、意識してかどうかは分かりませんが、少し外して握ってくるので、なかなか頂点の快感を得るまでには至りませんでした。私にはそれがもどかしく、何とかして欲しいと思うのですが、猿ぐつわを噛まされていますので、残念ながら呻くばかりで、言葉になりません。
 その間も、相手は握った手に力をこめたり、抜いたり、摩擦したりと、間断なく刺激を与えてくるのです。時にヌメッと舌(?)で敏感な部分が触れられたりすると、ビクッと感じるのですが、頂点に達するかと思うと、まるで嘲る(あざける)かのように動作を止めるのです。まさに私は、心身ともに相手に翻弄され、もがき苦しんでいました。
 やがて生暖かいヌルリとしたオイルの様な感触の液体が私の体に丁寧に塗りこまれ、優しくマッサージされ始めたのです。それが微妙な快感を全身に呼び起こしました。
 それが終わると、私の興奮した部分にコンドームの様な袋がかぶせられました(これは私の精子を採取する目的だったようです)。しかしそれは私が知っていたような人工的な感覚ではなく、柔らかい粘膜のような肌触りで、微妙な圧が加わってくるのです。それが又なんとも言えない快感を誘うのでした。
 それから暫らくして、私の太腿(ふともも)に、柔らかく弾むような感触の肌が触れたかと思うと、ゆっくりと体重をかけてきました。
と、同時に私の敏感な部分が生暖かい、柔らかい粘膜に触れ、やがてまるで象が沼地にのめり込み沈んでいくように、ぬるぬると、ゆっくり女の芯に向かって沈んでいくのでした。
“ああ”私は声にならない声を発していました。 その時の快感はいかばかりか想像していただけるでしょうか?
充分にじらされ、焦りさえ感じていた私だったのですから---。
その快感は、もどかしさが長く続いたが故に一層強く感じられたのでした。
性行為は単なる肉体と肉体との衝突と摩擦によるのではなく、心と心の衝突と摩擦の深さに左右される精神的要素が強いと、初めて知ったのでした。
 理屈は兎に角、私はこの時点では、これはもう人間の営みを超えた、まさにオスとメスの生殖器官のぶつかり合いだと思った程でした。
 相手は、初めは緩く(ゆるく)そして、浅く深く、徐々に速度を増し、さらに前後左右に動く。その度ごとに先程被せられた粘膜を通して、女性の柔らかな、生暖かい襞(ひだ)が、私の敏感な部分を強く刺激する。か、と思うとすぐ外れる。
しかしやがて、男の敏感な部分が、まるで真綿で動けぬよう包み込まれたかと思うと、強く締め上げてくるのです。その間も、女性の秘部の襞が間断なく、それ自身がまるで生き物のように男性の敏感な部分を刺激してくる。
 私はすでに充分充電され、耐え切れそうもない刺激に、快感は頂点に達しようとしていましたが、しかし一方では、体の自由は完全に奪われ、それに先程被せられた粘膜が障壁となって、なかなか思うに任せなかったのです。
 勿論、私は夢中になって、体を動かそうと試みました。そんなもどかしい時間がどれほど経過したでしょう。
 が、突然相手は重量感あふれる体を私にぶっつけ、覆いかぶさってきました。そして耳元で「もういいのよ!」とかすれた声で囁きました。
 それは紛れもなく聞き覚えのあるパトラの声でした!
 この瞬間、私の緊張の糸はプッツリ切れ---快感の絶頂に達していました。
 それまで閉塞状態だった私の心は、籠の中の鳥が解き放たれたように、自由な、それこそほっとするような開放感に浸ったのでした。
周囲では、相変わらず「性の儀式」の狂乱状態が続いていました。
 これまでの私なら、この時点ですべては終了していたでしょう。ところが、その日は、終わりませんでした。

さて、私は確かに知らぬ間にラムダ国へ招待(拉致という言葉のほうがふさわしいのか知れませんが--)されていました。本来なら屈辱とも言える仕打ちに対し、私が殆ど反発らしい反発をしていないことに、皆さんは不思議に思われることでしょう。
 私自身も“催眠術にかかっていた”と言った方が正しいかも知れません。 
 当時、私は拉致されたという被害者意識より、むしろ積極的にラムダ国へ招待されたと考えていたのです。私は好奇心旺盛な人間でもありましたので、未知な冒険体験については、科学者としての好奇心が強かったのです。
“この国が地球上の何処に位置し、又どのような文明・文化が特徴で、どのような時代背景から生まれてきたのか?”について知りたいと思ったのです。
 ラムダ国は私が目指していた北極ではなく、赤道近くと思われる群島の一角に建設された地下国家のようで、周囲には美しい珊瑚礁があり、コバルトブルーに輝く海に囲まれていました。上空からは、人が住んでいない熱帯植物に覆われた孤島にしか見えなかったでしょう。しかし地下には、近代的な設備を備えた壮大な都市国家が建設されていました。その造りは、古代エジプトやギリシャの都市国家に似ているような印象を受けました。
建築物は、想像以上に大きく立派で、大理石のような美しい石が使われていました。もちろん、壁や天井には鮮やかな色彩で戦争やこの国の日常生活の模様或いは宗教的(自然崇拝的?)色彩の濃い絵が描かれ、又都市を支える太い柱には現代的で抽象的とも言える彫刻が施されていました。
だが回廊や部屋の壁の一部は何がエネルギー源なのかよく分かりませんが、明るく輝いていました。それがまた自然光のようで、違和感がなく地下といえども、まるで白日の下で生活しているような錯覚を覚えたほどでした。


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