ジョージ北峰の日記
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2009年12月16日(水) |
オーロラの伝説ー続き |
終章
私が遺伝子工学の研究を通じて、地球の歴史を探ろうと決心した時、地球は、既に数万年の人類の歴史に終止符を打とうとしていました。 そして核戦争が勃発、それが原因となったのか地球各地で火山が爆発、太陽光線が遮られ地球は氷河時代を迎えようとしていたのです。 私は、偶然にも異次元の世界へ迎えられ、地球再生を目指すべく、まさに“ノアの箱舟”計画を実行する為故郷に帰っていたのですが、私の故郷は日本本土から離れた離島にありました。それが良かったのか、この島は異次元の世界に比較的スムースに “引越し”することが出来たのです。以前パトラが“私達はラムダ国に住んでいるのです”と謎めいた意味がようやく分かったのでした。 ただラムダ国と同じ体制の国造りを老博士が望んでいたわけではありませんでした。私が存在したラムダ国は、いわば生命体改造の実験工場でした。だから新しいラムダ国アースは、遺伝子工学のような技術を用いないで自然と調和の取れた地球社会の創世を国造りの中心に求めていたのです。
やがて老博士、ベン、アレクは島から去っていきました。しかし大部分のラムダ国人は私を助けるべく島に残ってくれたのです。彼等は、私の指令に従って国造りを積極的に協力してくれるのでした。 やがて村人達とラムダ国人の間に言葉が通じるようになり、互いが国造りに協力できるようになりました。
しかしこの島は社会体制が完全に遺伝子で制御された国ではありませんでした。私も又パトラの様な王としての風格にかけていました。“如何すればいいのか”私の悩みは大きくなる一方でした。 ある夜私は、一人で、海岸を散歩しながら、空を見上げていました。静かな夜でした。ラムダ国の海岸でパトラが助けに来てくれた日のことが懐かしく思い出されるのでした。 パトラはラムダ国エージェントの話ではZ国を助けようとして、核爆発に遭遇したのです。だからパトラが帰って来るはずもありませんでした。 その夜は星も霞むほどの満月でした、海岸の砂浜に白い波が時折“ザー”と音を立てて打ち寄せていました。私は少し高い丘に登って腰を下ろしました。時折生暖かい風が吹いてきました。 すると突然心地良い女性の香りが風に乗って流れてきたのです。何気なく振り返って驚きました。“なんと”其処にパトラが立っているではありませんか。 「パトラ!生きていたんだね」私は思わずパトラに飛びついていました。 そしてその夜、私は夢の様な時を過ごすことが出来たのです。 「パトラ、帰ってくれたのだね!私は助けて欲しかったのだよ!」しかし彼女はそれには何も答えてくれませんでした。 やがて夜が明ける頃「間もなくあなたと私の間に生まれた女の子が、帰ってくるでしょう。その時は女王として大事に育ててください」とだけ言い残すと、視界から消えて行くのでした。
付記 ラムダ国歴史学者であり考古学者でもあるSS博士が長年の研究成果としてアース・サイエンス レポートに、地球人として初めてラムダ国に迎えられ、地球の植民地の初代国王と考えられる筆者が書き留めた日記を翻訳された。 その内容が爆発的な人気を博し、今も愛読者が増え続けているという件に関し、ラムダ国科学研究部部長が興味ある発言をされた。その内容の要約は次の通りである。
「このN世紀前の国王が記したとされる日記は途中で途切れ最後まで記されてはいません。必ずしも当時の国造りを代表する第一級の資料とは成り得ないかも知れない。しかし初期のラムダ国と同時代に存在していた当時の地球人達がどんな問題を抱えていたのか、そして人間が何故滅亡したのかを理解する上で貴重な資料になるでしょう。 わが国が今後進めようとしている地球開発を考える上で、特に貴重な資料になると考えられます」
さらにラムダ国科学部会でも、この日記に関して、その重要性が確認され、詳細な科学的調査に乗り出す必要があるとの結論に達したと発表された。 最近地上のG砂漠で発見された人類が築いた大都市の遺跡は、当時の地球人達の文明がいかに高度であったかを証明している。 ただN世紀前に突然地球を襲った何らかの天変地異で地球上の生命体は人間を含めてほとんど絶滅した。 その後、地球の大陸は砂漠化されたまま現代に至っている。 当時の地球人たちの生活については、我々は最近までほとんど無知であったが、今回の探検隊が発見した砂漠に埋もれていた地球人達の築いた遺跡から、筆者の日記が全くのでたらめではなく、当時の地球の状況をかなり正確に反映していることが分かった。 当時、地球人たちの文明は確かに進んでいた。が、地球についての科学認識がどの程度まで進んでいたのかを知るには、さらに今後の私達の研究成果が待たれる。
現在、最近ラムダ国の先験隊が育ててきた多数の動植物が漸く地球上に根付き始めたと報告された。我々は出来るだけ早い機会にさらに大規模な地球開発を進めなければなりません。 オメガ国は我々よりも先に行動を開始し地球植民地建設計画を遂行している。わがラムダ国も遅れをとることがないよう早急に行動を起こすことが要請される。
[ラムダ国アース 広報部報道]
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