ジョージ北峰の日記
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2008年04月11日(金) |
オーロラの伝説ー続き |
想像してみてください!決闘場あたりにはUFOも含めて多くの戦士達がいる。にも関わらず恐ろしいほど静かで、ただ海岸に打ち寄せる波の音、強い風にゆれる林の葉の音がまるで動物の唸り声のように不気味に聞こえる。 つい先程まで全く気付かなかった(それまで息を潜めていたのかも知れなかった)虫の音が、日本の秋の夜を思い出起こさせるほど静に平和に聞こえる。 そして私の心臓がまるで早鐘のように脈打ち、気もおかしくなる息苦しい状況。 一方で2人の女王は、寸分の油断も許されない緊迫した戦いのまっただ中に対峙していました。 恐らく、互いに相手の動きを読むために必死の思いをめぐらしているのでしょう。もし二人の力が均衡していたなら、ほんの少しの相手の心の読み違えも、互いにとって命取りになるでしょう。 私たちが戦う場合、相手の次の動きをいくつかのパターンに分け、それぞれのパターンに対して対応を考えます。その読みが想像していたパターンから少しでもズレていたら、それこそ命とりなります。 しかしその時は自らの本能で臨機応変に対応する。この本能に属する袋の中身こそが格闘家には大切で、その中身が豊富であればあるほど、自らの戦いが有利になるでしょう。 有能な格闘家はまさにこの部分を磨くためにたゆまぬ練習を積み重ねるのです。 パトラの戦いに於ける本能的判断は、これまで私が見てきた限り非の打ち所がありませんでした。しかしこの時、私はふと巌流島の戦い、武蔵が小次郎のツバメ返しを破った瞬間を思い浮かべていました。小次郎の心の焦りを見透かした武蔵は“ツバメ返し”が無理に繰り出される瞬間を見抜ていました。 恐らく小次郎が“ツバメ返し”が決まったと思った瞬間、武蔵は並外れた運動神経で宙を舞っていたのでしょう。しかし佐々木小次郎は自分の勝利を確信していたと言います。彼の死顔には笑みが浮かんでいたとさえ伝えられています。 私は今パトラの気持ちを知りたかった。彼女が決して勝利を焦らないこと祈ました。 パトラは砂浜側から相手を岩の上に見上げる形で構えていました。この形は相手の先制攻撃をあえて誘う作戦なのです。もし相手が上方から攻撃を加えてきたらパトラにとって“ツバメ返し”と考えているに違いありませんでした。 場面は暗闇と言うこともあるのでしょうが、残念ながら私には、今彼らの甲冑の赤と青の光しか見えなませんでした。その為2人の考えや動きを想像することが困難でした。 私は赤く光るパトラの動きに意識を集中することにしました。“パトラは今動いてはいけない!”相手の動きを見てからでないと。 しかし赤い光が少し動いたような気がしました。“あっ”と思った、その瞬間、 電光石火の様な速さで青い光が赤い光に重なり合っていました。 刀と刀が弾きあう音と同時に稲妻が2回走りました。 “どちらだ?”緊張のあまり、私は身をのりだしていました。 2人が飛び離れた時、青い光は砂浜に倒れていました。緊張で汗が全身に噴出していました。ツバメ返しが決まったのか?---青い光が倒れている! しかし青い光はゆっくりと立ち上がりました。 青の光は倒れていなかったのです。 駄目だったのか---私は一瞬、全身から気が抜けるのを感じました。 まだ勝負はついていなかったのです。 私はこの国の戦士達の並外れた運動神経を何度も経験してきました。今の一撃で、相手はパトラの剣筋を読んだのではないか?---私の不安は少し増大しました。 だとすると次の攻撃はどちらが先か?パトラか? 私は自分なら次に如何攻撃するか考えたが、難しかった! ただパトラが不用意に攻撃してはいけない、とだけは考えられました。 “あせってほしくない” 佐々木小次郎の二の舞だけは避けなくてはいけない。 パトラはどう出る?私はジリジリしながら考えていました。 パトラは今の一撃で相手の力を読み取ったのか、少しずつ間合いをつめ始めました。 私は心の中で“待て、今動いては駄目だ!” 本能的に危険を感じたのです。 相手は少し下がり始めました。やはり、相手は今の戦いでパトラの太刀捌きを知ったのでしょう。すぐには攻撃を仕掛けてこない。 が、今度は、パトラの方から攻撃を仕掛けたのです。 “あっ!待て”と叫びたかった。 青い光と赤い光が渾然一体となって、まるでサッカーボールが弾かれたような速さで海岸を縦横に駆け回る。 私の目では、どちらが優勢なのか動きが速く、姿が見えないのでさっぱり判断できない。 予断を許せない戦いが連続的に続く。 時折響く剣戟が、私の恐怖を容赦なく煽る。 “あっ!”と私は思わず声を出していました。 赤い光が倒れて、青い光が飛び離れたのです。
“やられた!?” 私は“パトラ!”と声にならない声で叫んでいました。
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