ジョージ北峰の日記
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2002年07月14日(日) |
旅日記ー赤十字の発祥ソルフェリーノ訪問記 |
マドリード空港を飛びたってどれくらいの時間が経過しただろうか。ふと遠く連綿と続く雲海の彼方に際立って白く輝くピレネーの連峰に気付いた。それから間もなく眼下にイタリアの複雑な海岸線が地中海に展開する姿が眼に入った。地中海は太平洋に較べれば波は静かで緑色をおび太陽の光をうけて鈍く淀んでいるように見えた。 歴史によれば、カルタゴの将軍ハンニバルがローマ帝国を攻撃する為、象の軍団を率いてアルプス越えをしたと言う。我々が飛行機で超えてきた山脈をなんと動物と人間が徒歩で越えたと言うのである。将軍やカルタゴ軍の気迫に驚嘆したが同時に、国と国との戦いは昔から理屈や常識を超えた所で起こるのだと思わずにはいられなかった。 ミラノの国際空港に正午頃到着したであろうか、スペインより日差しは一段と明るく街ゆく人々も陽気に見え、女性の表情にも優しさが感じられた。街には古い、歴史的な建物が立ち並び、教会や公園が調和よく配置され絵や写真でよく見かける古いヨーロッパの都と言った印象であった。しかし路端は駐車した大小色々の車で満ち溢れ、不自然に現代を主張しているように思えた。 あちこちで催されている露天商、それに群がる人々には、異国であるにもかかわらず何故か郷愁を覚えた。 昼食もとらず空港から“最後の晩餐”の見学へ急行した。人類史上、最高の天才と言われるレオナルド・ダ・ヴィンチの作品は壁一面に遠近法で描かれていた為、壁から浮き上がったように見えた。キリストの表情は神々しさの中にも人間性の発露で満ち溢れていた。これまで何度となく見てきたキリストの絵はすべて暗く苦しげな印象でしかなかった。が、このキリストの表情はふっくらとして全身にあふれる生気は優しさと色気すら感じさせた。 ゴシック建築の粋を凝らしたドゥオーモ(教会)には圧倒された。教会全体が芸術そのものであった。建物は石造りであるにもかかわらず、きめ細かい意匠、造りの一つ一つに神経が行き届いていた。この教会は、設計されてから完成されるまで五百年の年月を要したと言う。高い天井、美しいステンドグラス、神聖な祭壇、それにパイプオルガンから流れる荘厳な音楽。ふとキリスト教徒となり懺悔してみたくなった。 翌日はいよいよ赤十字発祥の地ソルフェリーノの訪問である。 つづく。
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