与太郎文庫
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1971年10月23日(土)  トリルがハモる 〜 時を盗む人々 〜

 
http://d.hatena.ne.jp/adlib/19711023
 
 京響でロストロポーヴィッチがドヴォルザークを弾いたとき、トリル
部分でクラリネットがハモらないことに失望した。後日この不満を語る
と、でーやん(出谷啓)は「へぇ、そこまで云うか?」と驚いていた。
 
 このときの奏者が村瀬二郎氏(われわれのOBで、佐伯くんの師匠)
だったかどうか、よく思いだせない。彼に会えたら、たしかめたいこと
がたくさんある(回想の演奏会・尚永氏への書簡に重複)。
 
 すこし前のインタビューで、巌本真理さんいわく「弦楽四重奏では、
ヴィブラートもそろえるのよ」ということだったので、たぶんトリルも
ハモるはずだ。問題は、テンポ・ルバート(tempo rubato)にある。
 
 イタリア語で「時間を盗む」という意味だそうだが、「時間かせぎ」
ともちがう。ここぞという部分で、思いいれたっぷりに遅らせて歌う。
 閉まりかけたカーテンを持ちあげて歌いつづけたテノール伝説もある。
 
 演歌の世界では“遅れうたい”といって、オーケストラに嫌われる。
 売れっ子ほど長くて、本人が気どるほど陰口をたたかれる。
 売れなくなると、さっさと伴奏が終わってしまう(?)そうだ。
 
 むかし久米宏が《夜のベストテン》だかで、沢田研二をからかって、
「思いなしかイントロも短めで」と云ったのがおかしかった。二曲目が
ベストテンに入ったので、さきの順位が下がったためである。
 
 練習時に比べて、本番では70%の出来ばえを予想しておく。
 メロディに思い入れると、ついつい遅れがちになりやすい。
 しかし伴奏者には、思い入れがないことを覚悟すべきである。
 
 馬場君への書簡草稿(19950725)にも書きとめた、すこし後の記憶だ
が、江藤俊哉氏のTVレッスンで、天才ならではの面白い発想を知った。
 速いパッセージの練習を、速度・音程に分離独立させるのだそうだ。
 
 早い部分は、音程を犠牲にして、速さだけを練習する。
 同じ部分を、こんどは速度を犠牲にして、音程だけ(ロングトーンで)
練習する。しかるのち両方を合流するという理屈である。
 
 これを交互にくりかえせば、なるほど飽きずに取組めるはずだ。
── 「あがる」というのは、人間のすばらしい習性だ。恐怖をのりこ
えて人前に出ることができる。── Anthony Quinn 20011225 NHK
 
 このようなエピソードを、あれこれ思いだすのは、縞状健忘症か? 
 
Let'20061006 for Mr. Tamura, Tadahiko
 
 ◆
 
http://d.hatena.ne.jp/adlib/20021212
 19711023(土)京響第138定期演奏会/渡辺 暁雄・指揮
── 《音楽京阪神 19710926 十字屋楽器店》
 
http://d.hatena.ne.jp/adlib/20070426
 マエストロ“スラヴァ”〜 ロストロの訃報 〜
 
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(20061006-20070613)
 


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