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■ 【手紙】 修君、お誕生日おめでとう。
アタシさ、アンタの誕生日までにはさ、アンタとアタシのドキュメンタリー掌中小説でも書き上げて、アンタに贈ろうと思ってたんだけどさ、いまだワードに右往左往してて間に合わなかったから、凝縮させてここに書くわ。
アンタが初めてアタシの前に現れたのは、30年程前のこと・・・。 当時アタシが勤めていた、だだっ広いパブだったよね。 Kやんと二人でやって来たアンタたちは、歌が得意で、そこいらじゅうのカラオケコンクールで優勝しまくりだと自慢げに話し、これ見よがしに二曲ほど歌った。
本当にあんたたちのハーモニーは抜群で、アタシは心から(普段あまり褒めないけど)歌の上手い人たちだなぁ・・・と思ったよ。 アタシも負けず嫌いなので「アタシも一曲歌っていい?」と、当時はやっていた「ラブイズオーバー」か何かを歌ったら、あんたたち絶賛してくれてさ・・・それからアタシたちは歌友達兼飲み友達になったんだよね・・・。
店が引けると始終そこいらのカラオケパブや、アタシの母がやっていたエポックに行っては、明け方まで飲んだくれて歌い合ってたよね。 Kやんに初めての赤ちゃんが生まれた日も、のんきに明け方まで歌ってて、行方を捜してる家族から電話が有って、慌てて産科に駆けつけさせた・・・なんて事もあったよね。
アンタはやさしくてマメだし、歌もだけど、話も上手で面白くて、物まねが上手だったりもするので、昔から良くモテテたね。 しょっちゅうとっかえひっかえ女を替えては、アタシの店に連れてきて、アタシはとんだ美人局。 小さかったウチの息子にも「こないだのおねえちゃんとまた違ってるし・・・」なんて言われてたしね。
常にアンタに言いたいことを言えて、仲がいいような悪いようなアタシだけど、しょっちゅう大喧嘩もしたし、絶交もしたよね。 でも気が付くと又どこからとも無く現れては一緒に、飲んだ暮れてるんだよね・・・。 アンタを愛してやまぬ女たちから見れば、アタシは羨ましいような不思議な存在なんだろうね・・・ね・・・。
腐れ縁・・・・・・。アンタは鎖縁と言ったけど、そんな清いもんじゃないよ。 本当にアタシ達は男と女とか友人を超越した不思議な関係だよね。 同士と言うか従姉弟みたいというか、戦友と言うかなんと言うか・・・・・・。 やはり鎖ではなく腐れ縁だよ。(笑)
お互いにずっと昔から貧乏でさ・・・。でも互いに歌や物書きに対する夢は有ってさ・・・。やりたい事もたくさんあってさ・・・。 「貧乏人は貧乏の辛さがわかるから、困ってる人にお金上げちゃったり奢っちゃったり直ぐするから、中々貧乏から抜け出せないんだよ」なんてアンタもアタシもよく言っては、自己弁護してたよね。
一度アンタと、互いの明日の支払いに困ってさ、石和の場外馬券場に有り金全て持って勝負に行った事があったよね。 行き道は高速使ってさ、意気揚々と「大穴当てたらどうする?」なんて話しながらウキウキだったのに、互いに全ての有り金擦ってしまって、帰りは下道通って、ションボリしながら妙に無口になっちゃってさ(笑)あん時ぁ「ラーメンだけでも食べといて良かったよ・・・・・・」なんてセリフしか出てこなかったね。 あれも好い思い出だわ。
その他にもアンタとの笑えて泣ける想い出エピソードは数え切れないほどあったけど、アタシが癌になって不本意ながらその後完治しちゃって、元気になっちゃって・・・・・・。 そして今度はアンタが癌になって元気無くしちゃって・・・・・・。 でも病院抜け出しちゃ、ガストで話したり、酒飲んだり、時にはパチンコいったり、不良患者もいいところのアンタ。 病気になろうがどん底になろうが、楽しい事好きである意味人生そのものがギャンブルみたいなアタシタチ・・・・・・。 ちゃんとした人から見たら、アタシ達はどうしようもない人間だよね。 でも、アンタもアタシも、正直に、なるべく人に優しく、滑稽だけど一生懸命真剣に生きてきた気はするんだ・・・。(自己弁護ならぬ、双互弁護だねww)
アンタは生きる事を諦めちゃって治療も拒否してるけど、本当はアンタに生きててもらいたい人間はまだまだたくさん居るとおもう。 アタシも同じなので説教したり人を諭せる身分じゃないけど、少なくともアタシはあんたに長生きして欲しいよ・・・。 アンタが先にあの世に行ったら、アタシは松本一の駄目人間になっちまう・・・。 こんな似たもの同士にはめったにお目にかかれそうにないし・・・・・・。
でも先立つものが無ければ病院もいけないんだもんね・・・。 アタシはごめんなさいだけど、自分の頭のハエも追えていないので何もしてあげられない・・・。 哀しいかな今の世の中は、お金がなくてプライドがあると生きていけない世の中なのよね。
先日は温泉楽しかったね。 アタシが書く小説の設定の案を考える為に会ったのに、飲んだくれの大宴会に・・・・・・(笑) その後も懲りずに、からくり箱でなお飲み、カラオケ大会に・・・・・・。 アンタの歌聴いて、久々に泣いてしまったよ・・・・・・。
でもあんな質素だけど生きていれば楽しい日もくるんだから、もっともっと頑張って長生きしてよね。 もっとドタバタ喜劇のような思い出たくさんつくろうよ。 そして最後には「あんな日もあったよね」って本当の笑い話にしてから、互いにこの世を去ろうじゃないか・・・。
何はともあれ53歳の誕生日おめでとう。
なんかまとまりの無い日記になったけど、いつかは真剣にアンタのこと書くよ。
2012年11月28日(水)
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