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■ (日記) ヨイトマケの唄
若くない人たちなら、この「ヨイトマケの唄」を知っている人も多いと思う。 若い人も一度くらいは聴いたことがあるかもしれない。
「ヨイトマケの唄は日本の偉大なシャンソンだ!!!」 「涙なくしてはとても聴けない!!」と、絶賛する人も多いのだが、正直、アタシはこの歌があまり好きではない。 いや、大嫌いといってもいいかもしれない。
お涙ちょうだい的で、貧乏臭くて、泥臭過ぎて、生臭過ぎて・・・、何か、泣かせよう泣かせよう的な魂胆を感じられる歌やドラマや読み物がアタシ は元々苦手で、だからこの歌もその魂胆が感じられ、今まで避けて通ってきた傾向がある。 もちろん過去に歌ったこともなく、歌おうとも思わず、人が歌っているこの歌を聴くのも、何か、気恥ずかしいような気さえしていたのだ。
昨夜、ここ一年くらい前から常連になってくれたお客さんの(K)ちゃんが来た。 彼はひと月ほど、親友とイタリアに遊びに行ってたらしいが、月末に帰国したらしく、顔を出してくれたのだ。 彼は某大手自動車メーカーのフランス支社に長年勤めていた人なのだが、今は退職し年金暮らしのセミプロの絵描きさんである。 今現在は奈良に住んでいるらしく、信州によく絵を描きに来るということで、たまたま松本を散歩していて、「語り処」と書かれた店の看板に興味を惹かれたらしく、フラリと立ち寄ってくれてから、あの変てこりんな店を気に入ってくれたみたいだ。 その時、シャンソン好きな彼にアタシ が一曲歌ったのが功を奏したらしい。
昨日も(K)ちゃんは、発音は抜群だが音程妖しきフランス語のシャンソンを数曲歌い、その後に珍しく「ヨイトマケの唄」を自分で勝手に入れ、歌い始めていた。 (ヨイトマケかよ・・・・・・珍しいじゃん・・・) アタシ はそんな気持ちでいたのだが、歌い始めてワンコーラスも終わらぬうちに、(K)ちゃん、泣き出しちゃって歌えなくなり(笑)「ママ、続き頼む」と、アタシにマイクを渡すじゃないですか・・・・・・。
(え〜っ!????何でアタシ までヨイトマケの唄を歌わなきゃならないのよ・・・。嫌だなぁ・・・) と、一瞬ためらったものの、お客さんの要望だし、仕方がないので本家本元みたいに大げさにではなく、語るように静かに歌い始めたのだが、なぜか不本意ながらアタシまで歌いながら涙が滲んでくるではないか・・・・・・。
(アラ嫌だ!! こんなはずじゃないのに・・・!!何でアタシまでこの歌唄いながら泣いてるんだよ!?) そうしたら(K)ちゃんの鳴き声がやがて号泣に変わり、鼻水垂らしながらヒィ〜ヒィ〜〜声を上げて嗚咽しはじめるし・・・・・・。 大嫌いだったヨイトマケの唄を、仕方なしに歌ったら、人がこんなにも泣いてくれた・・・・・・。
なぜか、くすぐったいような嬉しいような不思議な感覚を覚えた。
「ママ、ママのこの歌すごくイイよ!! 今まで聞いた誰のよりもイイよ。これからもこの歌を歌いなよ」
『い、い、嫌だ!!! 絶対に歌わない!!!今日が最初で最後だわよ!!!』 アタシは猛反発した。
何であんなに泣いたのか後に聞いてみると、彼も母子家庭で育ったらしく、子供の頃に辛い経験があったそうだ。
そういえばアタシも母子家庭だったもんな・・・。 だから泣いてしまったのだろうか・・・・・・。
何か、日本人の魂の奥には、もしかしたら誰もがヨイトマケの唄を受け入れたがるDNEみたいなものが流れてるのかもしれないなぁ・・・・・・。
昨日はそんな苦笑いが漏れた夜だった。
2012年10月02日(火)
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