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■ (日記) 幻の駆け込み寺
夫婦間でも、親子間でも、友人間でも、知人間でも、客と店の関係でも何でもそうだけど、適度な距離感・・・ってものがかなり大切なような気がする。
始終相手に取り入るのではなく、相手に対して出過ぎず・・・、かと言って冷たく放置しっ放しと言う訳でもなく、相手の邪魔にならぬよう、相手に負担を掛けぬよう、それで居ながら相手が求めたり自分が求めたりした時、互いのタイミングがピッタリ合えば、とてつもなく濃い楽しい時間を過ごす事が出来る・・・・・。そんな心地良い愛情や友情や絆で結ばれ合っている関係って、アタシは理想だ。
それには互いの信頼感と、相手を思いやる気持ちと、ちょっとした我慢や遠慮も必要な訳で、それを保つバランスは難しいとは思うんだけど、いったんそうなった関係と言うものはかなり長続きする。 ともかく、放っとく優しさ・・・と、求められたら引き寄せる温かみ・・・の両方を持ち合わせているような人にアタシは男女を問わず強く惹かれる。
アタシはお金に余裕が有る時は、独りでフラリと見知らぬ店などに飲みに行く事もある。 そんな時は、独りで色々な事に思いを馳せながらゆっくりと飲みたいので、あまり店の人に取り入られるのは好きじゃない。 でも、ずっと放置されっ放しでは、それもまた寂しいもので・・・。 その兼ね合いを中々解ってくれる店がなく、松本ではまだ居心地の良い隠れ家を探せていない。 遠くではなく、そんな店があったら是非教えて欲しい。
そんな気持ちをこっ面憎いほど敏感に嗅ぎ取り、アタシが願った通りに対応してくれる店が遠い昔に一軒だけ有った。 それはまだアタシが東京の中野に住んで居た頃の事で、22歳のうら若きアタシは、その日、夫との喧嘩で家を飛び出し、商店街を外れた路地の奥にポツリと佇むその店に初めて吸い込まれるように入ったのだ。
店内は狭く、暗く、チョッとアングラ的な内装を施した店で、40歳代くらいのマスターが一人で経営して居た。 アタシが初めて入ったその時に、店内にはローリングストーンの「悲しみのアンジー」が掛かっていたのを今でもハッキリと覚えている。 ボックス席に一組のアベックが居、他に客は誰も居なかった。 アタシは安いウイスキーのロックを頼み、結構ハイペースで飲んでいたのだが、マスターはたまに目が合うとニッコリと微笑みはするが、何も話しかけては来ない。 4杯目のお代わりを頼んだ時、初めて「お若いのに強いんですね・・・」と、一言ポツリ・・・。それに付け加え「今夜は自棄酒ですね?」と言いながら、又ニコリと笑ったのだ。
嫌な顔や迷惑そうな顔をするでもなく、「自棄酒ですね」と言い当てた割には、その後の温かな笑顔に急に安心感と温かさを感じ、アタシは思わず涙をこぼしてしまった。 アタシはついつい初めて会った見知らぬマスターに愚痴をこぼし始めていた。 マスターは時々自分の意見を織り交ぜながらも、決してアタシを否定せず、優しく耳を傾けてくれていた。 そして5杯目を飲み終え、帰ろうとしたら「コレはボクからの傷心お見舞いです」と再びニッコリ笑って、もう一杯少し高級なウイスキーを出してくれた。
アタシはそれ以降、何度かその店に訪れ、でも、マスターは何事も無かったように知らん顔をして放置してくれ、アタシが会話を求めれば、優しく親身に応対してくれていた・・・・・・。 アタシが松本に来て暫くし、東京に里帰りした時に懐かしくなって行ってみたのだが、もうその店は残念な事に無くなっていた・・・・・・。
アノ店が本当に実在していたのかどうかもオボロ気で、今では記憶の中の幻の駆け込み寺になってしまったが、あの店はゆりかごのような居心地の良い店だった。
アタシもそんな店にしたいなぁ・・・・・・。 でもアタシは自分がノンベェだし、愚痴を聞いてもらいたい方なので、絶対無理なんだよなぁ・・・・・。
2008年09月25日(木)
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