マキュキュのからくり日記
マキュキュ


 【エッセイ】 亡き祖母との再会


今朝の松本は冷え込みが強く、今、左手の窓の外には、今年始めての初雪(霙に近いが)が、静かに静かに降っている。
でも、この雪はすぐに止んでしまうだろう・・・・・・。空が明るくなって来た。

サテサテ・・・。本題に移ろう。
半年ほど前、古い邦画ばかりを取り上げているネットの掲示板を見付け、たった一度だけお邪魔した事が有る。
私の祖母が芸名を【水町庸子】と名乗り、結構有名な女優だったらしいので、祖母の映画の事を聞きたかったからだ。
そうしたら、何とその事を覚えていてくれたその掲示板のメンバーの【Y】さんが、つい先日、スカパー時代劇で祖母の映画が放映されると言う情報をわざわざ私の掲示板に出向いてくださり、教えてくださったのだ。

半年前、その掲示板に私が書き込みをしたほんの少し前に、偶然にも、その【Y】さんは、私の祖母の葬儀に付いての記事を読んだばかりだというから、正に不思議なご縁だ・・・・・・。
その時の彼女の掲示板へのレスコメントを載せさせていただきたいと思う。

私は今、「古川ロッパ昭和日記」を読んでいるのですが、このあいだロッパ氏が水町さんのお葬式に行った日のところを読んだばかりだったので、この偶然に驚いています。
昭和十六年一月十五日の日記に
「東宝撮影所ステージ内で仏式の葬儀、読経・弔辞、沢村貞子が泣き乍ら読んだ弔辞が悲しくて皆泣かされた。遺児四人の姿いとど哀れ。」
と記されてありました。


これを見ると、本当に見知らぬ人様との繋がりへの仕組みが、改めて、摩訶不思議な偶然(必然?)に思えてならない。

その【Y】さんからの思いも寄らぬ掲示板への嬉しいお知らせに、私はそこいら中の友人に電話をしまくり、やっと一人、スカパー時代劇に加入している人を見付け、見させてもらう事にしたのだ。
映画の題名は【松下村塾】(しょうかそんじゅく)と言い、歴史に弱い私は、言葉や内容が今ひとつ把握出来ていない所もあるが、日本を良くする為にと、真の教えを貫き通すと言う志の高い塾長が、徐々に生徒数を増やし、塾を大きくし、しかし、最後には政府の弾圧に会い、打ち首にされてしまうと言った内容のものだと思う。(2度3度見ないと良くは解らないのだが・・・)
祖母はその塾長の母の役で出演していた。

(後に解った事だが、吉田松陰の映画だったようだww)

私は母からの話を勘違いしていたのだが、キネマ旬報などの記述によると祖母は僅か20代の後半で病に倒れ、腹膜炎を併発し、他界していると書かれている。
【私は40くらいで亡くなった物だとばかり思っていたのだが・・・】
そうなると、多分その映画は、まだ30にも満たない祖母が演じていたのだろう・・・。しかも、塾長の母役である・・・・・・。
祖母は老け役がとても似合う女優だ・・・・・・。(笑)

この世で初めて見る祖母の動く姿。
この世で初めて聞く祖母の声。
この世で初めて逢う、生きた祖母。

「お婆ちゃん・・・遭いたかったよ・・・・・・。アタシャ、あんたの実孫だよ・・・。アタシャ、今のこの世で、あんたの血筋をしっかり受け継いで、波乱づくめの道を歩み、苦労して息も絶え絶えで居るんだよ・・・・・・」
思わずそんな事を画面に向かって呟いていた。(苦笑)
映画の内容は他所に、私は、画面を通しての祖母との再会に、涙が溢れて仕方が無かった。

亡き母は祖母に良く似ている。
3姉妹の真ん中である母が、一番祖母に似ているように思う。
顔は勿論、身体の線の細さ、声、立ち姿等、母は祖母にそっくりだ。
私は忘れていたのだが、上の記述によると、4人の遺児となっている。
そう言えば、母には【まもる】と言う名の弟か兄が居たという事を、確か母の口から聞いたことがあったような気がする・・・・・・。
それにしても、4人もの子を産み、僅か30前で亡くなったという祖母の人生も、さぞや壮絶な人生だったのだろう・・・・・・。

この映画はきっとトーキー映画時代から、少し後に撮影されたものだろう・・・。
昔はあんなぶつ切りの手法で撮影されてたんだなぁ・・・・・・。
もっと、もっと、祖母の映画を観てみたいなぁ・・・・・・。

昔の映画には、浪漫がある。
今の時代には無い、温かさや優しさがある。
私達が無くし掛けている、未来への熱い希望がある。

何か異次元空間に紛れ込んだような不思議な気持ちになり、この時代の祖母との再会に、深い縁を感じた。

映画の内容も、何故か恋愛物では無かった。【祖母は恋愛物にも多く出演しているはずなのだが・・・】
地味な内容の映画ではあったが、その映画は偶然にも【たとえ苦難に出遭っても夢は貫き通せ・・・・・・】と言う教訓を私に与えてくれている内容のようにも思う。
それは、先日見た【海を渡るバイオリン】にしてもそうだ。
映画を通し、祖母が【夢は決してあきらめてはダメよ!】と、教えてくれているようにも思えた。

もしかしたら、私が祖母に会いたいと思って居たのではなく、祖母が私に会いたいと思ってくれたのかも知れない・・・・・・。
アノ世から、今にも崩れ落ちそうな私に、祖母の最大の愛情とエールを送るため、私をあの掲示板に行かせ、あの掲示板のメンバーの優しい心を借り、私に会いに来てくれたのかもしれない・・・・・・。

そんな温かで不思議な気持ちになった昨日だった。

☆ 掲示板で教えてくださった【Y】さん。
アナタのお陰で、夢にまで見た祖母に逢う事が出来ました。
本当に、本当に、ありがとうございました。


2004年11月30日(火)

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