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■ 【短編小説仕立て】 薮原祭り(最終回)
宴の準備も全て整い、注文の刺身類なども届き、時刻は夕刻の7時を回った。やがて日も暮れ出し、皆で客間に集まり、先ずは家族だけで乾杯をする。 沢山並べられた料理をつまみ、楽しい話をし、私もビールをたらふく飲んだ。 徐々にフゥーリィーの親類達や、友人達もやって来て、フゥーリィーは久々の再会にご機嫌な様子。私は会話の邪魔にならぬよう、席を外した。 しかし、フゥーリィーは良く飲むなぁ・・・・・・。もう、既にビールを1ダース以上は飲んでりゃしないだろうか・・・・・・。(痛風が出ても知〜らない♪)
やがて(E)ちゃんのご主人もやって来て、久々の再会に話を弾ませた。 私は、接客の手伝いをしたり、所々会話に混ざったり、外の屋台の様子を見に行ったりと、家と表を行ったり来たりしながら、【寄け合い】の時刻が来るのを待っていた。
やがて9時を回り「そろそろ始まるから行って見るか・・・」と、フゥーリィーに促され、私は待ってましたとばかりに外に出た。
裏道を通り、広場に行くと、もう、沢山の人だかりが出来上がっている。 私たちは群集を掻き分け掻き分け、前へと進む。 そしてずうずうしくも、一番前列の真正面を陣取ってしまったのだ。
左手には上獅子の屋台があり、下獅子の屋台が到着するのを待っている。 その間、数人の巻き手達が順番に、巻き手自身の顔見せの為、獅子の衣を外した状態で獅子を巻き合う【裸獅子】と言うパフォーマンスが演じてられている。 普段は獅子衣が着けられているので、誰が巻いているのか解らないのだが、この時は巻き手の顔が見える。 上手い巻き手には群集から賛美の声援が揚がり、下手な人には容赦ないヤジが飛ぶ。そのヤジ合戦がまたまた面白い。
普通に獅子を巻く時は、獅子を大きく見せるため、獅子衣を長い棒で持ち上げている人が二人。獅子を巻く人間が一人。その巻き手が屋台から落ちぬよう、身体を支える人が一人と、4人が一組になり演ずるのだ。
裸獅子では、顔が見えるので皆、大張り切りで獅子を巻くので、中には屋台から飛び出さんばかりの勢いの良い人も居る。
 【屋台から飛び出さんばかりの巻き手】
そんな時は、群集から思わず、黄色い声援が聞こえる。 その辺りで空に稲光が走り、少し雨の粒が落ちて来たが、それは直ぐに止み、稲妻だけが夜空に光っている。その稲妻の効果が、さらに祭りの光景を、ドラマチックに演出している。 【私は本当に晴れ女だわ・・・】
やがて、じらして、じらして、じらしぬくように進んできた下獅子が到着し、2匹の屋台が向き合うと、群集から拍手と大声援が巻き起こる。 いよいよ【寄け合い】の始まり始まり〜である。
先ずは互いの代表が挨拶をし、ちょっとした儀式があり、下獅子の代表者が3人、獅子を巻く。 メス獅子の演技では2番目に演じた人がひときわ大きな拍手を浴びていた。 メス獅子らしく、恥じらいに頭を震わせ、恋に身を焼き、悶々と身をうねらせるという表情が、短い演技の中で良く伝わっていた。
そして上獅子の代表者の演技に移る。 やはり、さすがに代表者だけあって、其々が上手いには上手いのだが、今ひとつオス獅子の演技は不評だった。 獅子に表情が足りない・・・・・・。迫力と勇壮さに欠けるのだ・・・・・・。 「何練習してきたんだ!! 獅子が死んでるぞ〜!!」 容赦の無いヤジが飛ぶ。
私はそんな演技を見ながら、【一度で良いから、元気な頃のお父さんが巻いていた獅子の姿を見たかったなぁ・・・・・・】と、しみじみと思っていた。
やがて喝采とともに祭りも終わり、2台の屋台は猛スピードで互いの蔵へと帰って行く。
「今年の祭りも無事に終わったね・・・」 「そうだな・・・・・・」 「来年も来たいなぁ・・・」 「おう! 来年は、これぞ獅子舞だ! って言う演技を俺が見せてやるから、楽しみにしてろよ」 「来年こそ、喧嘩しないで来させてよね」 「オマエも忘れ物はするなよな」 「アンタも急かさないでよね」 二人はクスクスと笑い、手を繋いで家に帰った。 フゥーリィーも私も足をブヨに食われ、大きく腫れ上がっていた。 家に帰り、又、少し飲みなおし、私たちは久々に布団を並べて眠りに着いたのだ。
翌朝、客間で(E)ちゃん夫婦と4人で朝食を摂り、(E)ちゃん夫婦にホームページの宣伝をし、一足先に帰って行く二人を見送った。 その後、少し、お父さんと、お母さんと雑談をした後、私たちも帰り私宅を始めた。 「又来ておくれ」 二人がにこやかに微笑んでいる。 「はい。また、お盆に来ますね。今回はお騒がせして本当に済みませんでした。お父さんもお母さんも、あまり無理をしないで、いつも元気で居てね」 お父さんと握手を交わし、私たちは、薮原の実家を後にした。
帰り道は喧嘩もなく、二人とも二日酔いでクラクラする頭を持て余しながらも、薮原祭りの思いで場面などの会話に華を咲かせながらの楽しいドライブになった・・・。
【来年こそ、喧嘩をせずに来たいものだわ・・・。守護神さま。どうかそろそろ私を受け入れてください】 私は、遠ざかる木曾の景色を見ながら、独り言を呟いた。 薮原祭りの模様
(完)
☆ 【薮原祭り】最後まで読んでくださってありがとう。 如何でしたでしょうか・・・、小説仕立ての【里帰り日記】は・・・。
何れは短編小説くらいには挑戦して見たいと思い、練習がてら書き始めたら、長い長い日記になってしまいました。(苦笑)
毎日思い出しては書き、編集する間もなく載せていたので、所々おかしなところも有ると思います。 まぁ、そこは大目に見てやってください。(笑) エッセイ集の編集などもする中、なにせ、時間に追われながら書いたので・・・。 ↑と、良いわけばかりの私です。(^^;
もしも良かったらBBSにご意見やご感想をください。 今後の勉強の励みになると思うので・・・。 それでは、書き込み、心よりお待ちしています。
2004年07月18日(日)
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