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■ 【追悼エッセイ】或る女性の死
その女性(H)の死を知ったのは、このエンピツで人気急上昇中の、ある女性(T)の日記を読んだのがきっかけだった。 無論、私はそれまで、(H)も(T)も、全く知らない存在だった。 人気のある文章は、勉強の為にも一読してみたい・・・、そんな興味から、散歩がてら彼女のページにふと、立ち寄ったのだ。
彼女の文章は、暖かく、美しく、繊細で、私は一気に彼女の感性の虜(フアン)になった。
(何て、綺麗で、癒される文章なんだろう・・・・・・)
ほんの少し読んだだけで、彼女の人気の秘密が即座に理解出来た。 そして、夢中で読み進むにつれ、導かれるように一つの文章に目が止まり、私は強く心を奪われたのだ。 それは(T)がネット上の友人である(H)に宛てた追悼文であった。
(H)は、つい先日である、今月の12日、病の為、自宅で亡くなったそうだ。 (T)の記述によると、(H)も癌だったらしい。 亡くなる当日まで、彼女は日記を書き続け、その前日、交通事故で亡くなった仔猫を、布にくるみ、優しく添い寝をしてあげていたと言う・・・・・・。 そして、その翌日、連れ合いの方も気付かぬほど穏やかに、彼女は眠るように、永遠の眠りについたそうだ。
(独り旅立つのが淋しかった仔猫が、彼女を呼んでしまったのだろうか・・・・・・)
享年37歳・・・・・・。 余りにも早過ぎる死である。
その追悼文を読んで、私は、是非とも彼女(H)の事が知りたくなった。 彼女がどんな最期を生き抜いたのか・・・・・・。どんな意識で死を迎えたのか・・・・・・。
私は早速(T)にメールを出し、(H)自身のHPと共に、(H)の連れ合いの方が、彼女の追悼の為に儲けたHPを教えてもらい、私はむさぼるように、彼女の『命』を読んだ。
彼女の日記、BBS。それらを読んで、私は泣いた。泣けて、泣けて、仕方が無かった・・・・・・。
彼女と私は、余りにも共通点が多すぎる。 彼女の父親は、肝硬変で亡くなっている。(私の父もである) 彼女の母親は、彼女が幼い頃、彼女を虐待していたようだ。(私の場合、虐待は無かったが、やはり、幼少期、淋しく虚しい思いも随分として来た) 彼女も私も、幼児期は、あまり幸せだったとは言えない。 彼女も私も、形態はずいぶん違うが、水商売の経営者だった。 彼女も私も、動物(特に猫)が好きである。 彼女も私も、お酒が好きである。(これは、様々な不安や恐怖を紛らわす為の手段でも有るのだが・・・) 彼女も私も、淋しがり屋である。
下手な延命治療を望まない事も、命への執着心が薄い事も、私と酷似している。 命への執着より、確固たる愛に対する執着の方が強かったのではないかと思う。 そして、彼女も又、死ぬ事の苦しみ以上に、生きる事の苦しさを知っていた人でもある・・・・・・。
(H)の日記を通して知った、彼女の癌、それ以外の心の病、彼女の生い立ち、苦悩、考え方、愛、淋しさ、喜び、無念、怒り、彼女の生き様の全て・・・・・・。 彼女はそれらを、一切の衣を纏わない、彼女の純粋な『魂』で書き綴っている。 自分の事はさて置き、多くの問題を抱えた人たちの為、彼女は心や身体を削ってきた人のようだ。 その全てが、余りにも愛しくて、そして、余りにも哀しかった・・・・・・。
ああ・・・ もう少し早く彼女に出会えてたら・・・・・・ せめて、一月前に彼女に出会えてたら・・・・・・
同じ恐怖や、同じ不安を共有出来るものとして、彼女を私なりの言葉で、思い切り抱きしめて、愛しんであげたかった。
一緒に泣いてあげたかった。
一緒に痛んであげたかった。
彼女の死後、彼女の連れ合いの方や、友人達が、彼女のHPを大切に保存している。 彼女が書き連ねてきた文章(遺言)を、本にしてやりたい・・・、と言ってくれている人までもが居た。 追悼のBBSにも、彼女を愛した多くの人たちの書き込みが後を絶たない。
もしも・・・・・・ 私に癌が再発して、突然、彼女と同じ処に旅立ったなら、私のHPを残してくれると言う人は現れるのだろうか・・・・・・。 そんな事を言ってくれる人は居るのだろうか・・・・・・。
それには、彼女のように、一生懸命生きなければ。 それには、彼女のように、真剣に生き終えなければ。 私は元気な内に、もっともっと、やらなければならない事が沢山ある。 彼女を見習って、少しでも人の心を潤しながら生き抜きたい。
現世では、彼女と触れ合う事は出来なかったけれど、きっと、黄泉の国で出会えたなら、(H)と私は、良い友達になれるような気がする。
ねぇ?(H)さん・・・・・・ あなたに教えてほしい事があるの
そっちは どんな所なの?
もう 淋しくはないの?
もう 辛くはないの?
もう 心も身体も・・・痛くはなくなった?
全ての苦しみから 解き放たれた?
仔猫ちゃんと 楽しくジャレ合ってる?
お父様には会えたの?
私の処に降りてきて そっと教えて・・・・・・
追伸 私は(T)に出会えた事と、(H)を知りえた事を、今心から感謝しています。
2003年02月23日(日)
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