マキュキュのからくり日記
マキュキュ


 ミュウー 【第二章】 幸せを運ぶ猫 (1)




   【第二章】 幸せを運ぶ猫


         
(1)

 あれから毎日学校が終ると、僕とヨッチは、ミュウーの世話に夢中だった。

 毎日毎日、ボクの家に来ては、二人でなんやかんやと、ミュウーのめんどうを見た。

 ミュウーは、僕とヨッチを、お母さんだと思っているらしく、いつでも僕達の間に、割り込んできては、甘えてくる。

 それでも、ミュウーを飼いはじめてしばらくしたころ、ミュウーの元気が、少し無くなった時があった。

 ミルクもあまり飲まずに、吐(は)いたりしている。

僕達には、原因がわからないので、とても心配した。

僕達だけで、ミュウーの世話をすると、お父さんに約束をしたてまえ、ちょっとかっこわるかったけど、しかたなく、お母さんにも相談してみた。すると、

「牛乳だけでは、きっと栄養(えいよう)が足りないんだわ。ミュウーは親猫のオッパイを飲んでないからね」

と言われてしまい、ヨッチと二人で、なけなしのおこづかいを合わせ、お母さんにも、少し協力してもらって、獣医(じゅうい)にとんで行き、赤ちゃん猫専用(せんよう)のミルクや、かんづめも買った。

 そのほかに、お父さんが、土曜日のたび、魚市場から、しんせんな魚をもらってきてくれて、それを僕とヨッチで、いっしょうけんめい、すり鉢(ばち)ですりつぶし、ミルクにまぜてあたえたりもした。

僕等はミュウーにかんする事なら、本当に一生けんめいだった。

それほど、ミュウーは、かわいくて、僕とヨッチにとっては宝物だったのだ。

たまには、お風呂にも入れてやり、トイレだって、毎日ヨッチと交代で、そうじした。

 ミユウーはどんどん元気になり、赤ちゃん猫から、やがて、ヤンチャな子猫へと、成長して行った。

 このころのミュウーは、スーパーの袋(ふくろ)が、大のお気に入りで、袋を広げておいて置くと、遠くからオシリをふって、ねらいを定め、突進して袋の中に飛び込んでは、袋とジャレていた。

 ある日、袋の取っ手が、首にまきついて、あわや、首つり自殺(じさつ)をしかけた事もあった。

 ミュウーが来てからというもの、僕は、タイクツするひまもなくなった。

 僕の毎日は、ヨッチとミュウーに、出会えた事で、あの淋(さび)しさ地獄(じごく)から、一気に開放されてしまった。



月日が流れ、僕達は、6年生になり、もうすぐ、待ちに待った夏休み。

 ミュウーも、すっかり大きくなって、見た目には、もう、大人の猫とかわりなかった。

 それでもミュウーは、ジャレざかりで、僕もヨッチも、いつも引っかき傷だらけだった。

 ミユウーは、りこうな猫で、このころから、少しずつ、芸を覚(おぼ)え始めて行った。

 まず最初に、ミュウーは、すんなりとオスワリを覚え、次には、僕達がミュウーの玩具(オモチャ)にと作ってやった、アルミ箔(はく)の小さなボールを投げてやると、それを口にくわえて、やって来ては、小さな箱に入れるようになった。

 僕とヨッチは、次々に、ミュウーに芸を仕込んでは、楽しんでいた。

 そんなある日の事、ヨッチがうれしそうに、息をはずませてやってきたんだ―



「ねぇ、テッチ! 聞いてよ、聞いてよ。お母さんがもうすぐ、退院できるんだって」

「えっ? い、今何て言ったの?」

 僕は、ビックリして聞き返した。

「うん、ついさっき、おばあちゃんから電話が有ったんだ。『もうかんぺきに、よくなりました』って、先生が言ってたって」

「そうか・・・、そうか・・・、よかったな。おめでとうヨッチ!」

 僕はヨッチの頭をくしゃくしゃにした。

「それでね、来週から、十日間くらい、夏休みを利用して、お母さんに会いに、横浜に帰ることになったんだ」

 ヨッチは、とても嬉そうに僕に言った。

「へぇー、そりゃいいや。・・・でも、せっかくの夏休みに、ヨッチがいないのは、チョットさみしいなぁ。横浜か・・・・・・いいなぁー。横浜なんて僕、まだ一度も行ったこと無いや・・・・・・。ねぇヨッチ、横浜ってどんなところ?」

 僕の問いかけに、ヨッチはなつかしむように目を細めながら答えてくれた。

「海があって・・・、舟がたくさん行き来していて・・・きれいな大きい公園があって・・・、そうだ、とてもおいしい中華料理屋がならんだ、中華街っていう所もあるんだよ」

「へぇ・・・楽しそうな所だね」

「レインボウビィレッジっていう、大きな橋もあるし、遊園地もあるよ。海を走るシーバスっていう船のバスに乗って、色んな所に行けるんだ。とにかく、なんでもあって、とてもにぎやかな所さ」

「へぇー、いいなぁ・・・・・・、夢みたいな所だね。僕も一度で言いから、横浜ってところに行って見たいなぁー」 

僕は少しだけ、ヨッチがうらやましかった。

「今度、テッチもいっしょに行こうよ?」

「本当? 行ってもいいの?」

「モチロンさ! 僕がかならず招待するよ」

「ねぇねぇ、指切りしようよ」

 僕は、ヨッチと横浜の街を歩いているすがたを想像すると、もう、それだけで嬉しくなってしまい、ワクワクしながら、指切りをした。

「うんとお母さんに甘えて来いよ?」

 僕がウインクをしながら、そう言うと、ヨッチはてれくさそうにうなずいた。

               ― 次回に続く ―




2002年06月05日(水)

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