睦月の戯言御伽草子〜雪の一片〜 Copyright (C) 2002-2015 Milk Mutuki. All rights reserved
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茶室でのんびりしているとなんだか景色がいつもと違うような気がした。
「なぁんかちがうんだよなぁ。」
「あ! 雨降ってるよ」
ここに来て春でもないのに雨が降るなんて・・なんでだ? 異常気象ってやつかな?
「すいません、今日は部屋に戻っていただいていいですか?」 いきなり主人が戻ってきた。 「あ、来客?珍しいね茶室までくる客って」 「いいえ、ここには来られませんが庭に回っていらっしゃるので」
庭にねぇ・・
なんだ・・・あれ・・・・ 全身黒づくめだ。黒いドレス、黒い帽子、黒い傘、黒い手袋 でも、顔は異様に白いし・・・・ 女の人なんだよな・・・?
「さあ。こんやは露天もやめておいてくださいね」 せかされて自分の部屋に戻る。 夕食をもってきた花に訊いてみたら案の定花はすっかり教えてくれた。 「あの方は大体毎年今頃いらっしゃるんですよぉ。お泊まりになっているのかどうかわからないんですけどねぇ。必ず茶室のほうに回られて表から来たことないんですよぉ。旦那が全部お相手するんですけどね。あのいでたちでしょう?きみわるいったら・・・ア、お客様にこんなこと言ったらだめですねぇ。また番頭さんに怒られちゃう。」 「そうだなぁ」 「あ、内緒ですよぉ。お客様の悪口言ってたなんて。」 「うん、それはいわないよ。」
夕食を食べながらとても茶室が気になった。 雨は夜通し降っていた。
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