短気
....................................................................................................................................................................
|
翌日。 M君が何故話中だったのかが分かりました。 相手は、Y美でした。 私がM君に電話を何度かかけているその時間、M君とY美で私のことを話していたそうです。
「Mに「俺と付き合う気あるのか?」って聞いてくれって言われたんだけどさ」
Y美に言われました。 私は、その展開の早さに正直驚きました。 この間、たった数時間会っただけで何を決められるっていうんだろう? この間、会えないって言っただけで、なんでそうなるんだろう? 結局、付き合えないのならもうお終いにしたいって事なんだ。 そう思いました。 それまで「M君を好きにはなれないかもしれない」という気持ちだったものが、はっきりと「絶対に無理だ」という思いに変わりました。
「やっぱり、うち、親がうるさいから電話してもらっても困るし・・・無理だと思う。ごめんね。」
そう、私はY美に言いました。
「そっか・・・じゃぁ、最初から付き合うのは無理だったってこと?」
Y美にM君と同じような事を聞かれました。 もしかしたらM君に言われたから聞いてるだけなのかもしれないけれど、なんだか、やっぱり会った事事態が私の間違いであったと責められている気分でした。
「う〜ん・・ごめん。正直、友達から少しずつ始めたかったし・・・急に付き合うとかっていうのは、決められないんだ。」
これも、私の素直な気持ちでした。 ただ、会った後の電話で嫌になってしまったとは、やっぱり言えませんでした。 Y美は、それに対し、
「そりゃそうだよねぇ。Mも短気だからさ〜。」
と笑って言ってくれました。 少し、ホッとしながら私は
「う〜ん・・ちょっと実は怖かったんけど、私も悪いし。でもね。昨日、ちゃんと言おうと思って電話したんだ。」
と言いました。 Y美は「あ、そうなんだ?」
「ってことは、もう、付き合わないって決めてたんだ?」
と言いました。 その口調は特にキツい訳でもなく軽い調子でしたが、私にはズキンとくるものでした。
「っていうか・・・ごめん。M君がどーのっていうより、今の状態じゃ誰とも付き合うのはやっぱり無理だと思う。ほんと、ごめん。会わなきゃ良かったよね。ごめんね」
正直言えば、徐々に面倒にな気分になっていました。 でも、きっと私がいい加減な事をしたのだと思い、謝るしかありませんでした。
「いや、そんな、私に謝らなくてもいいよー。しょうがないじゃん?」
Y美はそう言ってくれました。 そして、「M君にちゃんと電話して言う」と言った私に対し、
「いいっていいって。私から言った方が、軽く済むからさ。」
と言ってくれました。 ということは。相当、M君は私を怒っていたのかもしれない。 そんな電話を受けたY美に対し、物凄く申し訳無いと思いつつも、M君に電話をするのは物凄く憂鬱だったので、Y美から伝えてもらえると聞いて、ホッとしました。
これでやっと解放された。 そんな気分でした。
M君とは、数年後。 Y美の結婚式で再会しました。 もう、殆ど顔も忘れてしまっていた私は、来ているのは知っていても自分から見つける事は出来ませんでした。 おまけに、その日。 私は、38度を越す高熱状態で、無理をして披露宴に出席していました。 披露宴の最中に、新婦であるY美が私の側に来て、
「ほら、あそこにM来てるよ」
と少し離れたテーブルの方を指差しました。 差された方を見ても、正直、朦朧としていた頭と記憶が薄れているのとで、だれがM君か分かりませんでした。 でも、一応、椅子から立ち上がって会釈をすると、一人の男性が立ち上がり、それでその人がM君だと分かりました。
..................................................................................................................................................................
|