諦め
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親がK先輩に文句を言った日から3日後。 私は改めてK先輩に電話をし、謝りました。 K先輩は、自分が父に言い返してしまったことで、私の立場が悪くなって怒られていないかと、とても心配してくれていました。
「もう、お前んち、電話できなくなっちゃったな」
ポツリと先輩が言った一言が、深く胸に突き刺さりました。 もう、二度と。 K先輩から電話してもらえないんだ。 当然の事だと分かってはいても、物凄く悲しい事でした。 それは、もう終わりと同じことだと思いました。 だから、諦めるしか無いんだ。 そう、自分に言い聞かせました。
両親は、何もその後言ってきませんでした。 今まで以上に、無気力な状態で、ボーっとしてる私を薄気味悪そうに母は見ていました。 夕飯もまともに食べない私を見かねてか、一週間ほどすると父がそっと部屋のドアを開けて、声を掛けてきました。
「いい加減、飯ぐらい食え。だけど、俺はあいつだけは許さないぞ」
父がK先輩を許そうが許さなかろうが、もう、どうでも良いと思いました。
「安心してよ。二度とK先輩から電話なんかかかってこなから。」
と私は静かに答えました。 父はそれ以上何も言わず、またそっとドアを閉めていきました。 父が去ると、おもむろに私はK先輩との想い出の品を、箱に詰め込み始めました。 悔しいとか、親を恨むとか。そんな感情は無くなっていました。 怒るのには、エネルギーが沢山必要で。そのエネルギーがありませんでした。 もう、何も考えたくありませんでした。考える気力もありませんでした。 どうせ、いずれ終ってしまうしかなかったのだから。 この家に居る限り、誰かと付き合うなんて無理なんだから。 諦めるしか無いんだから。
だけど、多分。 諦めるしか出来ない自分が、物凄く悲しかったのだろうと思います。
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