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人物紹介


家出
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もう、K先輩とはお終い。
それから私は何も家で喋らず、バイトの帰りに友達と話して門限より遅く帰宅する日が多くなりました。
家で夕飯すら食べなくなり、もう親の小言など全く聞かずに無視するような態度でした。

それから、数週間後の3月に入った土曜日。
珍しく私がバイトに行くより早く帰宅した父に、バイトを辞めろと言われました。
親は、私がバイトをした事で、悪くなっていったのだと思いたかったのだと思います。

「なんで辞めなきゃいけないのよ」

そう言って、そのまま玄関で靴を履き始めると、いきなり父に殴られました。
父は、若い頃には姉には手を上げるのを見ていましたが、私は反抗的な事をしたことが無かったので、それが初めてのことでした。
殴った直後、殴られて私も驚きましたが、父の方が狼狽しているように見えました。
でも、謝ることは親の威厳として出来なかったのでしょう。

「出てけ」

と言われました。
私は、そのまま無言で玄関を思いっきり閉め、外に飛び出しました。

殴られた右側の頬骨のあたりが、ガンガンしました。
涙と共に鼻を手で抑えてすすると、手に血がついてました。
鼻血でした。
それを見て、ますます私の頭はガンガンしていきました。
そこまで父の強い感情のままに殴られたことに、尚更ショックを受けました。

取り合えず、私は一番近くの公衆電話に向かいました。
そして、バイト先に電話を入れ、今日は休むと伝えました。
この状況で、バイトなど出来ないと思ったのです。
それから、一番近くに住むM子のところへ電話を入れ、「泊めてもらえる?」と聞きました。
M子の家は、とても理解のある御両親で、特に事情を聞かれるでもなく、すぐに「いいよ」と返事が帰ってきました。

M子の家までのバスに乗っている間、私は自分を落ち着かせようと必死でした。
父に殴られた途端に、カーっと頭に血が上りました。
「何すんだよっ!コノヤロー」ぐらいの勢いでした。
徐々にその怒りが冷め始めると、途端に私は父の気弱な顔が浮かんできました。
姉を怒った後に、悲しそうにしていた父を小さい頃からいつも見ていました。
きっと、今も、そういう父が家に居て。
帰ってこない私を、夜中中心配するかもしれないと。
そう思いました。
でも、私の中にはまだ、K先輩と終らされたという気持ちが消えてはいませんでした。
だから、今は帰ることは出来ないと思いました。

友達の家へのお泊りすら、一度も許してもらえないまま高二になった私の、
これが、産まれて始めての家出であり、外泊でした。

M子は、私の顔をみて、少し驚きました。
でも、必要以上には何も聞きませんでした。
それが、とても有り難かったのです。

M子は、K先輩との事を沢山話している子でした。
M子と話しているうちに、無償にK先輩が恋しくなっていきました。
私は、父に殴られて悲しくて仕方が無くて、K先輩に頼りたいと思っていました。
でも、そんな事を言えば、K先輩は自分のせいでもあると心配するでしょう。
だから、電話をしない方がいいとも思いました。
だけど、やっぱり心細くてK先輩の声だけでも聞きたいと思い、
その夜、M子の部屋からK先輩に電話をさせてもらいました。

私が電話をすると、すぐK先輩は

「お前、電話して大丈夫なのか?外か?」

と聞いてきました。

「友達の家なんです。」

と答えると、

「こんな時間に?」

とやはり不審に思われてしまったようでした。
だから、

「今日は、両親が居ないので」

と私は嘘を言いました。
そして、話を逸らそうと、あれから電話できずに言えなかった

「卒業おめでとうございます」

という言葉を伝えました。

「おう、ありがとなっ」

とても、嬉しそうな声でした。
そして、その日、初めてK先輩の進路を聞くことが出来ました。

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その頃の私には、とても遠い場所に思えました。
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「恋愛履歴」 亞乃 [MAIL]

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