親
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K先輩にしたことを、親心だと私は思うことが出来ませんでした。 私の行動が気に入らないから、原因と思われるK先輩に難癖付けたというようにしか考える事はできませんでした。
私が反抗期になったのは、中3の時でした。 毎晩のように母親と言い争う日が増え、ある日、母は言ってはならない言葉を私に言いました。
「お前なんか、捨てられたクセに」
私の産みの親は、私がまだ1歳の頃に離婚しました。 だから、産みの母の記憶が全くありません。 間もなく、今の母が来て。 だから、私にとっての母親はこの母親以外に居ないと思っていました。 母は、同じ年頃の友達の母親に比べると若く、そのせいか意地悪な所もありました。 父は、そんな母親を選んだ自分が悪いと、泣き言を子供達に言う事が多くありました。 父を悲しませてはいけない。 だけど、父に悪く言われる母も可愛そうで。 きっと母には苛立ちがあるに違いない。寂しいのかもしれない。 私は、物心ついた時には既に、私だけでも母の味方で居ようと思うようになっていました。
別段、私は無理にそうしてた訳ではなかったのですが、どこかで苦しかったのかもしれません。 だから、母のその言葉を聞いた瞬間に、私の中の何かが崩れました。
その時、私は二階の部屋から、階下に居る母親と言い合っていました。 気付くと私は、頭がボーっとした状態で階段を降り始めていました。 十数段ある階段の半ばで、私は我に帰り、座り込みました。
その日。 私が自分自身に誓ったことは、自分の感情を無くすということでした。 親を憎んではいけない。親を恨んではいけない。 そう、自分に言い聞かせながら、スケッチブックに「無私」と書きました。 自分を無くしてしまえば、負の感情が湧くこともない。 私は、自分がどす黒い感情を親に向けて持ったことが、怖くて怖くて仕方なかったのです。
当時、キレるという言葉はありませんでした。 でも、きっと。そういう状態だったのだろうと思います。
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